チェルノブイリ原発事故:
国際原子力共同体の危機
ミハイル・V・マリコ
ベラルーシ科学アカデミー・物理化学放射線問題研究所(ベラルーシ)
表1 ベラルーシにおける甲状腺ガン発生数
(大人と子供)10
事故前
| 事故後
| ||||
年
| 大人
| 子供
| 年
| 大人
| 子供
|
1977
| 121
| 2
| 1986
| 162
| 2
|
1978
| 97
| 2
| 1987
| 202
| 4
|
1979
| 101
| 0
| 1988
| 207
| 5
|
1980
| 127
| 0
| 1989
| 226
| 7
|
1981
| 132
| 1
| 1990
| 289
| 29
|
1982
| 131
| 1
| 1991
| 340
| 59
|
1983
| 136
| 0
| 1992
| 416
| 66
|
1984
| 139
| 0
| 1993
| 512
| 79
|
1985
| 148
| 1
| 1994
| 553
| 82
|
合計
| 1131
| 7
| 合計
| 2907
| 333
|
チェルノブイリ事故後最初の10年,つまり1986年から1995年の間にベラルーシで確認された甲状腺ガンの総数は,424件であった11.この値は,事故後35年の間に全部で39件の小児甲状腺ガンしか生じないというイリインらの予測9に比べ,すでに10倍を超えている.予測と実際を比べてみれば,チェルノブイリ事故による小児甲状腺ガンの発生について,ソ連の専門家の予測は大変大きな過小評価をしていたことが分かる.同じことは,旧ソ連の汚染地域における先天性障害に関してもいえるであろう.ソ連の専門家の評価1,9は,それが見つかる可能性すら実際上否定していた.その結論の誤りが,ラジューク教授ら6,7によって示されたのであった.