表3 ブレスト州の汚染地域(3地区)と対照地域 (5地区)の罹病率,子供,1990年27
疾病名
| 罹病率(10万人当り)
| P
| |
汚染3地区
| 対照5地区
| ||
合計 |
68,725ア 188.5 |
59,974ア 203.3 | 0.99
|
感染症と寄生虫症 |
7,096.5ア 104.4 |
4,010.1ア 80.6 | 0.99
|
内分泌系,栄養・代謝疾患 |
1,752.1ア 53.3 |
1,389.5ア 48.1 | 0.99
|
精神障害 |
2,219.8ア 59.9 |
1,109.6ア 43,0 | 0.99
|
神経系と感覚器の疾患 |
4,783.5ア 86.8 |
3,173.7ア 72.0 | 0.99
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慢性関節リウマチ |
125.6ア 14,4 |
87.7ア 12,2 | 0.95
|
慢性の喉頭炎,鼻咽頭炎,副鼻腔炎 |
117.4ア 13.9 |
82.6ア 11.8 | 0.95
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消化器系の疾患
うち:慢性の萎縮性胃炎
(胆石を伴わない)胆のう炎
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3,350.4ア 73.2 128.9ア 14.6 208.3ア 18.5 |
2,355.8ア 62.3 40.5ア 8.3 60.7ア 10.1 | 0.99
0.99
0.99
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アトピー性皮膚炎 |
1,011.6ア 40.7 |
672.8ア 33.6 | 0.99
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筋骨格系・結合組織の疾患 |
737.2ア 34.8 |
492.4ア 28.7 | 0.99
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先天性障害
うち:心臓と循環器の先天性障害
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679.3ア 33.4 305.8ア 22.4 |
482.3ア 28.4 242.8ア 20.2 | 0.99
0.95
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医薬品と非医薬用の生物学的製剤による中毒 |
4.383.7ア 83.7 |
52.3ア 9.4 | 0.99
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ブレスト州の汚染地域と非汚染地域の間では,大人の場合も子供の場合も,多くの病気の発生率が有意に異なっていることが,表2,3から分かる.大人の場合,感染症や寄生虫症,内分泌系,消化不良,代謝系や免疫系の異常,心理的不調,循環器系,脳血管系,呼吸器系,消化器系の病気などに,このような差異が見られる(表2).子供の場合には,感染症や寄生虫症,内分泌系,心理的不調,神経系,感覚器官,消化器系の病気などで,有意な差が見られている(表3).
P・シドロフスキー博士は,彼の研究において,汚染地域,非汚染地域とも多人数の調査をしており,彼の結果には信頼性がある.汚染地域で調査対象とした住民は,ブレスト州のルニネツ,ストーリン,ピンスク各地区の全住民であった.
これらの地域に居住している住民の数は,1990年において約18万2900人である.セシウム137による平均汚染密度は,37~185kBq/m2(1~5Ci/km2)である.P・シドロフスキー博士は,対照集団として,ブレスト州カメネッツ,ブレスト,マロリタ,ザブリンカ,プルザニ各地区の総数17万9800人におよぶ住民を用いた27,28.
ベラルーシの科学者P・シドロフスキー博士による,こうした新しい発見は,その後,CIS(独立国家共同体)の多くの専門家によって確かめられた.1993年2月,ベラルーシ保健省の公的な雑誌「ベラルーシ保健衛生」に,ウクライナの疫学者による調査結果が掲載された29.
1986年に30kmゾーンから避難させられた6万1066人の住民について,病気の発生率が調査された.その結果,ウクライナの疫学者たちは,P・シドロフスキー博士のデータと同様な結果をそれらの人々の中に見いだした.
また,ベラルーシとロシアのリクビダートル(事故処理作業従事者)にも,ほぼ同じ結果が見いだされた30,31.リクビダートルの発病率は,時の経過とともに一般公衆より大きくなることが信頼できるデータとして示された.そして,同様の傾向は他のすべてのカテゴリー(分類)の被災者についても見いだされている.
表4は,本報告の筆者が国家登録のデータ32に基づいて作成したものであるが,上記の事実をはっきりと示している.表4の解析は,被曝量あるいは表面汚染密度と,被災者の罹病率との間に明確な相関があることを示している.ベラルーシ国民全体と比べ,罹病率がもっとも大きいのは,リクビダートルと1986年に30kmゾーンから強制避難させられた住民であり,もっとも小さいのは,セシウム137の汚染密度が555kBq/km2(15Ci/km2)以下の被災地住民である.