斎宮跡:出土土師器の破片にいろは歌 平仮名としては最古
三重県立斎宮歴史博物館は17日、同県明和町の国史跡「斎宮跡」から出土した平安時代後期(11世紀末から12世紀前半)の土師器(はじき)の破片に、平仮名としては最古のいろは歌が書かれていたと発表した。博物館は「平仮名をいろは歌で習う王朝文化が、いち早く伝わっていたことを示す貴重な資料だ」と説明している。
博物館によると、10年6月から11月までの調査で、皿型の土師器の破片を4個発掘。つなぎ合わせると縦6.7センチ、横4.3センチになり、内側に「ぬるをわか」、外側に「つねなら」と墨で書かれていた。従来は、岩手県平泉町で出土した12世紀後半の木簡に書かれたいろは歌が、平仮名としては最古だった。
斎宮は、飛鳥時代から南北朝時代にかけて、天皇に代わり伊勢神宮に仕えた皇女「斎王」の住居を中心とし、斎王に使える女官や役人などが住んでいた。当時は、不要になった土器を使って文字を習う風習があったらしい。
筆跡が繊細で、一般的な土器の両面にまで書かれていることから、博物館は地元の女官が平仮名を覚えるために書いたと推測。「比較的身分の低い女官にまで幅広く文化が広まっていたことを示す発見だ」と話している。21日から3月11日まで、破片を公開する。【駒木智一】
★いろは歌 文字を覚えるための手習い歌の一つで、七五調になっている。10世紀末から11世紀中ごろに成立したと考えられる。平仮名のいろは歌が書かれた出土例は、平泉町を合わせ計7例あるが、土器に書かれていたのは今回が初めて。
毎日新聞 2012年1月18日 5時00分