カドミウム(Cd)
地殻中の平均全含有量は0.098~0.2mg/kg 程度と比較的少ない元素であるが、鉱物中や土壌中などに天然に存在する重金属で、亜鉛、銀、銅などの金属とともに存在する。海成堆積物でカドミウム濃度が高い傾向があり、特に海成堆積物中のリン酸塩には15mg/kg 程度のカドミウムが含まれることがある。亜鉛、水銀と同族元素で、亜鉛とよく似た化学的挙動を示す。硫化物、炭酸塩、酸化物のカドミウム塩類は、水に溶解しにくく、硫酸塩、硝酸塩とハロゲン化物としてのカドミウム化合物は水溶性の高い塩類である。歴史的に鉱山開発、精錬などによって環境中へ排出されてきた元素である。日本産の米(玄米)のカドミウム平均濃度は0.06mg/kg 程度(CODEX 基準値*は精
米で0.4 mg/kg)であるが、金属鉱山周辺では水田などの土壌に蓄積し、平均値より高い濃度を示すことがある。
人体への影響としては、長期の濃度の高い摂取で腎機能障害、骨の軟化が発生する。富山県神通川流域で発生したイタイイタイ病は、神岡鉱山からの排水に含まれていたカドミウムが農業用水路に混入し、水田土壌を汚染し、米・野菜に蓄積した食物や汚染水を摂取したことによって発症したものである。
カドミウムは水生生物に対する毒性が比較的高いとされている。工業的活用は電気メッキに従来使用されてきたが、近年では充電式電池や電子的用途で活用されている。
カドミウム、セレン、鉛およびひ素については様々な地質に含まれていることが知られているため、スクリーニング試験および岩石・土壌の全含有量バックグラウンド値試験においては全ての場合に分析を行う。
分析方法については湿式分析法、蛍光X線分析法が適用可能であるが、蛍光X線分析法を用いる場合は、機器の検出限界に留意する必要がある。
分析方法については湿式分析法、蛍光X線分析法が適用可能であるが、蛍光X線分析法を用いる場合は、機器の検出限界に留意する必要がある。
有害重金属等の基準値設定根拠
カドミウムが最も影響を及ぼす器官は腎臓とされており、まず低分子量タンパク質の尿中排泄量の増大を招き、さらにカドミウムの蓄積が増えると骨からのミネラルの再吸収を引き起こし、腎臓結石や骨軟化症が発症する。JECFA ではPTWI として7μg/kg/week を設定しており、2003 年の見直しにおいても現行のPTWI 値を維持すること
にした。このPTWI 値(耐容1 日摂取量(TDI)値として1μg/kg/day)に基づき、水の寄与率 10%、体重 50kg、飲料水量 2L/day として、わが国のカドミウムの水質環境基準値は 0.01mg/L と定められており、魚類におけるカドミウムの蓄積についても飲料水の基準程度であれば問題がないと考えられる。
汚染土壌からのカドミウム化合物の摂取量が現行の飲用水からの理論最大摂取量と同程度となるよう算定すると、土壌含有量基準値の設定値は150mg/kg となる。
カドミウムが吸入経路による発がん性をもつ証拠がいくつかあり、IRAC はカドミウムとカドミウム化合物をGroup 1(ヒトの発がん性)に分類した。しかし、経口投与による発がん性に関しては、限られた知見しかない。
カドミウムが吸入経路による発がん性をもつ証拠がいくつかあり、IRAC はカドミウムとカドミウム化合物をGroup 1(ヒトの発がん性)に分類した。しかし、経口投与による発がん性に関しては、限られた知見しかない。