安全監査に第三者評価 JR西、尼崎脱線事故踏まえ
- 2015/4/16
JR西日本の真鍋精志社長は15日の記者会見で、尼崎脱線事故から25日で10年となるのを前に、安全管理体制を充実させるため外部の第三者機関から評価を受ける仕組みを導入すると発表した。JR各社で初の取り組みで、全国の鉄道事業者でも珍しいという。
ノルウェーを拠点に世界規模で展開するリスクマネジメント会社「DNVGL」の日本法人と5月中にも契約する。法人側の担当者が、安全に関するJR西の内部監査に同行し、方法や内容が適切かどうか評価。JR西は結果を公表する方針。
脱線事故を受け国土交通省は2006年、全国の公共交通機関の安全対策を確認する「運輸安全マネジメント評価」を導入し、内部監査の内容や方法も評価対象とした。しかし、脱線事故の遺族らには、自社の監査では身内に甘くなるのではないかとの懸念があった。
JR西が、遺族と有識者を交えて自社の組織的な問題について議論した「安全フォローアップ会議」は昨年4月にまとめた最終報告書で、第三者によるチェックの必要性を提言していた。
真鍋社長は事故についてあらためて謝罪した上で「二度と起こさない体制になっているのか、自問自答してきた。安全管理の仕組みが有効に機能しているのか見てもらいたい」と話した。〔共同〕
2015年04月10日 00:58
「見える化」が進む会社法上の内部統制システムの基本方針
5月1日の改正会社法の施行(適用開始)を見据えて、そろそろ「内部統制システム基本方針の一部見直し」に関する適時開示が増えてきましたね。このたびの会社法改正(施行規則の改正)では、「行為規範」として内部統制システムの基本方針に関する決議義務(構築義務ではありません)がかなり増えましたので、どこも対応に追われている時期かと思います。上場子会社ともなると、「早く親会社のほうで見直しを決めてもらわないと、うちでも決められないよ」と気をもんでおられる会社もあるのではないかと(まぁ、5月1日以降でも可及的速やかに対処すれば問題ないはずですが・・・)。
各社の見直し後の基本方針を一覧しておりますと、「ひな型」どおり、というものではなく、どこも自社で相当の議論をしたうえで決定している様子がうかがわれます。企業集団としての内部統制、監査役監査の実効性確保のための体制、監査役への報告体制など、かなりバラエティに富んでいますので、各社の管理能力を把握するためには内部統制システムの基本方針をご一読されることをお勧めいたします。
会社法の改正点以外にも、情報管理や保存に関する体制、損失の危険の管理に関する体制などにおいても、マイナンバー制度の施行や不正競争防止法における企業秘密保護の厳格化、BCPの徹底など社会の要請に対応して工夫を凝らしておられる会社も多いようです。コーポレートガバナンス・コードとの関連性を見据えてということかもしれませんが、職務の効率性を確保するための体制として、執行と監督の分離や取締役会の権限委譲に関する条項を付加している会社も増えていますね。
その中で、個人的に一番関心があるのは監査環境の整備です。各社が監査役制度をどれほど重視しているのか(軽視しているのか)、この「見直し」を読むとよくわかりますね。しかし、ここまで監査役さんの監査環境が整備されてきますと(たとえば内部監査部門への指揮命令権、監査に必要な費用はほぼ全面的に監査役の言うとおりに出します等)、今後、粉飾等の不祥事が発生した場合に、監査役の善管注意義務のレベルも上がる(任務懈怠が認められやすくなる)のではないでしょうか?またこの点は別のエントリーで取り上げたいと思います。
少し意外だったのが、システムの運用状況の把握をどのようにするのか、という点に関する記述があまり見受けられない点です。もちろん会社法施行規則では「内部統制システムの運用状況」は事業報告に記載することになっていますので、運用チェックの方法自体が内部統制の整備に関する決議義務の対象とされているわけではありません。しかし、どこの会社もこれだけ立派な体制整備をされているわけですから、その運用状況をどのように把握して、説明されるのか、たいへん関心があります。たとえば東鉄工業さんの内部統制システム基本方針では、第10項において運用状況をチェックする方法(取締役会において定期的に「検証」が行われるそうです。スゴイですね!)が決議されており、このような記載が参考になるのではないでしょうか。
コーポレートガバナンスが「仕組み」だけでなく「運用」にも光があたる時代となり、内部統制も同様に運用状況に関心が向くようになりました。整備された内部統制システムの運用は、どのようにチェックされ、誰が責任をもって評価するのか、そのあたりは事業報告では記載されないことになっていますので、運用状況の概要に関する記述の信用性を高めるためにも、基本方針の中で記述することも一考かと思います。
会社法改正、いよいよ来月施行へ!
法務コラム記事投稿日:2015-04-07 16:44:04
会社法改正、来月施行
本年度2月6日に公布された「会社法の一部を改正する法律」(以下単に「改正会社法」とする)がいよいよ来月5月1日に施行される。既に12月期決算の上場企業においては株主総会が実施されているが、特にROE(自己資本比率)が低い上場企業ではトップ人事に反対する株主の声が急増した模様だ。急増した背景にはISS(Institutional Shareholder Services)の指導指針(*)の影響も多分にあると思われる。3月期決算6月株主総会の企業においては改正会社法が適用されることになるので人事の問題のみならず、株主総会参考書類、事業報告の記載事項に加えて、内部統制システムに関する事項も改正対象になっており、留意すべき点は多い。
本稿では実務対応という観点から株主総会における留意点についてとりわけ、重要な点について述べるに留める。
*ISSとは米議決権行使大手のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービスシーズのことをさし、今年2月、「ROEの過去5年間の平均と直近決算期がいずれも5%を下回る企業に対して、経営トップ選任の反対を推奨する」という指導指針を導入した。
株主総会における留意点
①社外取締役を置くことが相当でない理由の説明
事業年度の末日時点で、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)で、有価証券報告書提出会社が、社外取締役を置いてない場合社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない(改正会社法327条の2)。
また、かかる事項は事業報告、参考書類への記載事項となっており(施行規則124条2項3項、74条の2)、社外監査役が二人以上あることのみをもって理由とすることができない。
実務の対応としては、対象会社に該当する場合には「相当でない理由」の検討・決定をすることになるが、社外取締役を置くことがその会社にマイナスの影響を及ぼすような事情を説明することになろう。株主総会のどこで説明するのかも踏まえ、企業としては具体的理由を記載する手間を考えると、社外取締役を置く方向で検討すべきであろう。
事業年度の末日時点で、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)で、有価証券報告書提出会社が、社外取締役を置いてない場合社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない(改正会社法327条の2)。
また、かかる事項は事業報告、参考書類への記載事項となっており(施行規則124条2項3項、74条の2)、社外監査役が二人以上あることのみをもって理由とすることができない。
実務の対応としては、対象会社に該当する場合には「相当でない理由」の検討・決定をすることになるが、社外取締役を置くことがその会社にマイナスの影響を及ぼすような事情を説明することになろう。株主総会のどこで説明するのかも踏まえ、企業としては具体的理由を記載する手間を考えると、社外取締役を置く方向で検討すべきであろう。
②社外役員の要件厳格化
社外取締役及び社外監査役の要件の厳格化が行われる。具体的には、社外取締役及び社外監査役ともに、株式会社の(1)親会社の業務執行者等、(2)兄弟会社の業務執行者等、(3)業務執行者等の近親者でないものであることが要件に追加されることになる。また、過去要件が緩和され、就任前10年間、業務執行取締役等であったことがないという形で規定されることになる。例えば、親会社の総務部長などを子会社の社外監査役として兼務させるようなケースもあるが、今後は親会社の人材を子会社の社外取締役や社外監査役とすることができなくなる。
上記規定の変更に伴い、事業報告、参考書類への記載事項も変更される。ただし、経過措置規定があり、施行日時点で既に社外役員が設置されている場合、施行日を含む事業年度に係る定時株主総会(3月決算会社であれば、平成28年6月総会)までは、従前の例により、施行日以後新たに選任する社外役員の要件は改正後の規定によることになるので注意されたい。
実務対応としては本年度総会に役員選任議案を出す場合、社外性要件について注意することは勿論、まだ、親会社出身者等の社外役員の任期がある場合には、来年度総会までの改選に向けて、検討を進める必要があろう。
③内部統制システムの整備
改正法は、親子会社のガバナンス強化を目的として、当該会社のみならず、その子会社も対象としたグループ内部統制システム(企業集団内部統制システム)の整備義務を、会社法施行規則(会社法施行規則98条1項5号、100条1項5号、112条2項5号)における規律から会社法(改正会社法348条3項4号、362条4項6号、399条の13第1項1号ハ、416条1項1号ホ)における規律に「格上げ」した。これに伴い、改正会社法施行規則においては、取締役(会)設置会社におけるグループ(企業集団)内部統制システムの内容として、
改正法は、親子会社のガバナンス強化を目的として、当該会社のみならず、その子会社も対象としたグループ内部統制システム(企業集団内部統制システム)の整備義務を、会社法施行規則(会社法施行規則98条1項5号、100条1項5号、112条2項5号)における規律から会社法(改正会社法348条3項4号、362条4項6号、399条の13第1項1号ハ、416条1項1号ホ)における規律に「格上げ」した。これに伴い、改正会社法施行規則においては、取締役(会)設置会社におけるグループ(企業集団)内部統制システムの内容として、
(1)当該株式会社の「子会社の」取締役等の職務の執行に係る事項の当該株式会社への報告に関する体制、
(2)当該株式会社の「子会社の」損失の危険の管理に関する規程その他の体制、
(3)当該株式会社の「子会社の」取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、及び
(4)当該株式会社の「子会社の」取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(改正会社法施行規則98条1項5号イ乃至ニ、100条1項5号イ乃至ニ、112条2項5号イ乃至ニ)が含まれることが明示された。
近時、株式会社とその子会社から成る企業集団によるグループ経営が進展し、株式会社およびその株主にとって、当該株式会社とその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保することの重要性が増しているため、このような改正に至ったわけであるが、改正会社法施行規則98条1項5号に基づく決議の対象は子会社における体制そのものではなく、親会社において決議し事業報告に記載すべき事項は親会社としてどのような関与体制を構築しているかとなるので留意されたい。
コメント
その他の会社法の改正点としては監査役等委員会設置会社の新設をはじめ、株主総会の事業報告との関係では責任限定契約等に係る改正、会計監査人の選人・解任・不再任に関する議案の内容決定権者の変更等が挙げられる。その中でも、新設された監査役等委員会設置会社については機関設計の視点から各企業も検討していることと思われる。
従来の指名委員会等設置会社制度の採用会社が少なかったのは役員人事・報酬を社外取締役によって決定されることへの抵抗が大きかったことに理由があると言われており、新制度では役員人事権等を社内取締役に留保したまま、定款で定めることにより重要な業務執行の決定を取締役へ移譲可能であり、社外役員も最低2名ですむということにメリットがある。
3月決算6月株主総会という上場企業が数多くある中、改正会社法が適用される初めての総会になるので、各企業改正会社法の内容には十分気をつけて準備して欲しい。
従来の指名委員会等設置会社制度の採用会社が少なかったのは役員人事・報酬を社外取締役によって決定されることへの抵抗が大きかったことに理由があると言われており、新制度では役員人事権等を社内取締役に留保したまま、定款で定めることにより重要な業務執行の決定を取締役へ移譲可能であり、社外役員も最低2名ですむということにメリットがある。
3月決算6月株主総会という上場企業が数多くある中、改正会社法が適用される初めての総会になるので、各企業改正会社法の内容には十分気をつけて準備して欲しい。