ニッケル化合物に係る健康リスク評価について
1.物質に関する基本的事項
(1)ニッケルの物理化学的性質
表1 ニッケルの物理化学的性質
原子量 : 58.710
融 点 : 1,555 ゚C (Merck Index 11th Ed.), 1,455゚C (Patty)
沸 点 : 2,837 ゚C
比 重 : 8.90 (20゚C)
蒸気圧 : 1.000 mmHg (1,810゚C)
a 金属ニッケル・ニッケル合金
ニッケル (Ni):水には溶けないが薄い硝酸には良く溶け、硫酸・塩酸にも溶ける。
フェロニッケル (Fe、Ni):鉄とニッケルの両者の性質を持つ。アンモニア、アルカリ水酸化物に難溶。
ニッケル含有鋼 (ステンレス鋼、例 21-6-9合金:Fe 60-69、Cr18-21、Mn 8-10、Ni 5-7、他):同上。
b ニッケル酸化物および水酸化物
一酸化ニッケル (NiO):NiOには反応性の高いblack nickel oxideと不活性の green nickel oxideがある。
水に難溶、酸や水酸化アンモニウムに可溶。
水酸化ニッケル (Ni(OH)2):水にはほとんど不溶。酸や水酸化アンモニウムに可溶。
c ニッケル硫化物
二硫化ニッケル (NiS2):水に不溶。
一硫化ニッケル (NiS):無晶形、α形、β形がある。水にほとんど不溶、硝酸に可溶。
二硫化三ニッケル (Ni3S2):水にほとんど不溶、硝酸に可溶。高温では黄銅色のβ-Ni3S2。低温では
安定なgreenβ-formに転換。
d ニッケル塩
酢酸ニッケル (Ni(OCOCH3)2):ニッケルメッキ、触媒中間物等。水に可溶。エタノールに難溶。
炭酸ニッケル (NiCO3):ニッケルメッキ、陶磁器の着色に用いる。水に難溶。酸に可溶。
塩化ニッケル (NiCl2):ニッケルメッキ、アンモニア吸着剤。水、エタノール、水酸化アンモニウム
に可溶。硝酸に難溶。
硫酸ニッケル (NiSO4):無水体は水に可溶。エタノール、エーテルに難溶。水和物 (6水体、7水
体) は水、エタノールに可溶。
硝酸ニッケル (Ni(NO3)2):ニッケルメッキ、ニッケルカドミウム電池に使用。水、エタノール、水酸化アンモニウムに可溶。
e その他
ニッケルカルボニル (Ni(CO)4):常温で揮発性の液体で、産業現場ではその毒性が問題になるが、
空気中では半減期100秒で分解される (StedmanとHikade 1980)。
(2)ニッケルの用途・使用実態
ニッケルは大部分、ステンレス鋼と種々の耐熱・耐蝕合金の製造、溶接、メッキ、触媒、蓄電池等
に使われる (化学形態別の主な使用実態は以下に示す)。平成12年の生産量は36,230t、輸出量963t、
輸入量は57,894t(輸出入ともニッケルの塊)であった。
ニッケルは大部分、ステンレス鋼と種々の耐熱・耐蝕合金の製造、溶接、メッキ、触媒、蓄電池等
に使われる (化学形態別の主な使用実態は以下に示す)。平成12年の生産量は36,230t、輸出量963t、
輸入量は57,894t(輸出入ともニッケルの塊)であった。
a 金属ニッケル・ニッケル合金
純金属として、貨幣、家具、実験器具などの製造やメッキに用いられる。合金元素として、ニッケ
ル鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼、磁石鋼、耐酸合金などの製造、ニッケル-カドミウム電池、水素添加
物用触媒などにも使用される。
純金属として、貨幣、家具、実験器具などの製造やメッキに用いられる。合金元素として、ニッケ
ル鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼、磁石鋼、耐酸合金などの製造、ニッケル-カドミウム電池、水素添加
物用触媒などにも使用される。
b ニッケル酸化物および水酸化物
ガラス・陶磁器の着色剤、アルカリ電池などに使用される。
ガラス・陶磁器の着色剤、アルカリ電池などに使用される。
c ニッケル硫化物
石炭タールや重油の高圧水素添加分解による軽油製造、炭化水素の2重結合の温和な水素添加触媒、
芳香族化合物の脱水素触媒、有機化合物の脱硫触媒、ニトリルやニトロ化合物の還元によるアミン製
造・触媒として使用される。
石炭タールや重油の高圧水素添加分解による軽油製造、炭化水素の2重結合の温和な水素添加触媒、
芳香族化合物の脱水素触媒、有機化合物の脱硫触媒、ニトリルやニトロ化合物の還元によるアミン製
造・触媒として使用される。
d ニッケル塩
電解メッキ、試薬、金属表面処理剤、各種触媒原料、窯業用顔料、うわ薬などに使用される。
電解メッキ、試薬、金属表面処理剤、各種触媒原料、窯業用顔料、うわ薬などに使用される。
2.有害性評価
<影響評価の考え方>
ニッケルには多くの化学形態があるが、その健康影響評価にあたり、遊離の金属以外のニッケル化
合物はこれまで一括して取り扱われることが多かった (National Academy of Sciences 1975)。それは、
これまでに知られたニッケル化合物の健康影響が、どの化学形態のものによるのかが不明であったた
めであり、また実際のヒトの曝露の場では化学形態別に分けた測定が行われていなかったことによる。
International Agency for Research on Cancer (IARC, 1989) は、ニッケル化合物の健康影響評価の各章
を化学的分類に従い、ニッケル酸化物、ニッケル硫化物、ニッケル塩、ニッケルカルボニルとグルー
プ化して記載している。しかしながら、最終的な安全性の観点において、発がんの原因となったニッ
ケル化合物の化学形態や組成が必ずしも確定されていないことや、燃焼や生体内の代謝過程において
ニッケル化合物の化学形態相互の移行の可能性があることから、全てのニッケル化合物をひとつのグ
ループとして扱い、もっとも重篤な影響が出た化学形態の場合の結果に従って評価するとしている。
<影響評価の考え方>
ニッケルには多くの化学形態があるが、その健康影響評価にあたり、遊離の金属以外のニッケル化
合物はこれまで一括して取り扱われることが多かった (National Academy of Sciences 1975)。それは、
これまでに知られたニッケル化合物の健康影響が、どの化学形態のものによるのかが不明であったた
めであり、また実際のヒトの曝露の場では化学形態別に分けた測定が行われていなかったことによる。
International Agency for Research on Cancer (IARC, 1989) は、ニッケル化合物の健康影響評価の各章
を化学的分類に従い、ニッケル酸化物、ニッケル硫化物、ニッケル塩、ニッケルカルボニルとグルー
プ化して記載している。しかしながら、最終的な安全性の観点において、発がんの原因となったニッ
ケル化合物の化学形態や組成が必ずしも確定されていないことや、燃焼や生体内の代謝過程において
ニッケル化合物の化学形態相互の移行の可能性があることから、全てのニッケル化合物をひとつのグ
ループとして扱い、もっとも重篤な影響が出た化学形態の場合の結果に従って評価するとしている。
一方、American Conference of Governmental Industrial Hygienists (ACGIH) では、溶解性に基づき、水
溶性ニッケル化合物、難溶性ニッケル化合物、二硫化三ニッケル、ニッケルカルボニルに分けて基準
(TLV) を定めている。このグループ分けにより、それぞれの毒性の特徴が理解できるからである。ニ
ッケル酸化物およびニッケル硫化物は難溶性群に入るが、その他のニッケル塩は大部分水溶性の群に
入り、これらは組織障害性が強いことから、より厳しい基準が設定されている。他方、米国の
Environmental Protection Agency (EPA-IRIS 1992) は、ニッケルカルボニル、二硫化三ニッケルとニッケ
ル精錬粉塵をそれぞれ取り出し、この3者以外のニッケル化合物群と分けている。
溶性ニッケル化合物、難溶性ニッケル化合物、二硫化三ニッケル、ニッケルカルボニルに分けて基準
(TLV) を定めている。このグループ分けにより、それぞれの毒性の特徴が理解できるからである。ニ
ッケル酸化物およびニッケル硫化物は難溶性群に入るが、その他のニッケル塩は大部分水溶性の群に
入り、これらは組織障害性が強いことから、より厳しい基準が設定されている。他方、米国の
Environmental Protection Agency (EPA-IRIS 1992) は、ニッケルカルボニル、二硫化三ニッケルとニッケ
ル精錬粉塵をそれぞれ取り出し、この3者以外のニッケル化合物群と分けている。
なお、金属の精製工場について「製錬所」(smelter)と「精錬所」(refinery)のふたつの表現があり、厳
密には前者は高温で硫化鉱の硫黄を酸化または酸化金属を還元する熔錬工程による金属精製の場合を
指し、後者は電解精錬など、金属を熔融させない精製に用いられるが、後者が両方を含む場合も多い。
ここでは、原則として後者の文字を両方の意味で用いる。
密には前者は高温で硫化鉱の硫黄を酸化または酸化金属を還元する熔錬工程による金属精製の場合を
指し、後者は電解精錬など、金属を熔融させない精製に用いられるが、後者が両方を含む場合も多い。
ここでは、原則として後者の文字を両方の意味で用いる。
2-1 発がん性および遺伝子障害性(変異原性)
(1)定性評価
a 発がん性
・主要論文の概要
<ヒトにおける発がん>
これまでニッケルに起因して発がんが確認されたのは、ニッケル精錬所においてのみである。特に、
硫化ニッケル鉱の高温焼結工程に従事する作業者の肺と鼻腔のがんのリスクは非常に高い。Clydach
(ウェ-ルズ, 英国)、Copper Cliff、Port Colborne (オンタリオ、カナダ)、Kristiansand (ノルウェイ)、
Huntington (ウェストバージニア、米国) のニッケル精錬所従業員を対象とした疫学研究で、特に鼻腔
のがんの相対危険度が高いことや、曝露期間と発生率との間の量-反応関係などが共通にみられた。
(1)定性評価
a 発がん性
・主要論文の概要
<ヒトにおける発がん>
これまでニッケルに起因して発がんが確認されたのは、ニッケル精錬所においてのみである。特に、
硫化ニッケル鉱の高温焼結工程に従事する作業者の肺と鼻腔のがんのリスクは非常に高い。Clydach
(ウェ-ルズ, 英国)、Copper Cliff、Port Colborne (オンタリオ、カナダ)、Kristiansand (ノルウェイ)、
Huntington (ウェストバージニア、米国) のニッケル精錬所従業員を対象とした疫学研究で、特に鼻腔
のがんの相対危険度が高いことや、曝露期間と発生率との間の量-反応関係などが共通にみられた。
これは、金属炉のヒュ-ムや硫化ニッケルマットを高温でニッケル酸化物にする時に発生するヒュ-
ムの高濃度曝露が関係すると考えられている。このヒュームには二硫化三ニッケル、ニッケル酸化物
をはじめ、硫酸ニッケル、他の金属 (セレン、テルル、ヒ素、カドミウム、鉛)、石炭の燃焼生成物、
二酸化硫黄等が含まれる。ニッケル精錬の開始初期の炉作業者は、平均濃度が10 mg Ni/m3を越える高
濃度の粉塵やヒュ-ムに、一日8時間以上曝露されていた。ニッケルに関する発がん性データを事業
所・工程別に整理すると表2のようになる。
ムの高濃度曝露が関係すると考えられている。このヒュームには二硫化三ニッケル、ニッケル酸化物
をはじめ、硫酸ニッケル、他の金属 (セレン、テルル、ヒ素、カドミウム、鉛)、石炭の燃焼生成物、
二酸化硫黄等が含まれる。ニッケル精錬の開始初期の炉作業者は、平均濃度が10 mg Ni/m3を越える高
濃度の粉塵やヒュ-ムに、一日8時間以上曝露されていた。ニッケルに関する発がん性データを事業
所・工程別に整理すると表2のようになる。
表2.事業所・工程別にみたニッケルの発がん性
Robertsら (1984) によるとPort Colborneでは、精錬所内の粉塵の多い作業である焙焼、溶出、焼結
のいずれかに従事していた者に、肺 (SMR=298) と鼻腔 (SMR=9,412) のがんがみられた。同様に
Clydachの焙焼工場については、Petoら (1984) が肺 (SMR=510) と鼻腔 (SMR=26,667) のがんを報告
し、Copper Cliffの焼結炉については、肺 (SMR=311) と鼻腔 (SMR=3,704) のがんの増加をRoberts
ら(1989a,b) が報告している。
Huntington精錬所で、EnterlineとMarsh (1982) が精錬作業者と非精錬作業者について調査を行った
が、鼻腔がんは精錬作業者だけにみられ (SMR=2,443)、肺がんについてははっきりした増加はみら
れなかった (精錬作業者のSMR=118、非精錬作業者のSMR=107.6)。しかし、曝露後20年の時間差を
おくとニッケルの累積曝露量と肺がんに量-反応関係がみられ、同様にClydach、Copper Cliffのデー
タでも線形の量-反応関係が成立した。
が、鼻腔がんは精錬作業者だけにみられ (SMR=2,443)、肺がんについてははっきりした増加はみら
れなかった (精錬作業者のSMR=118、非精錬作業者のSMR=107.6)。しかし、曝露後20年の時間差を
おくとニッケルの累積曝露量と肺がんに量-反応関係がみられ、同様にClydach、Copper Cliffのデー
タでも線形の量-反応関係が成立した。
高温の熔錬工程だけでなく、電解工程でも呼吸器がんの増加が報告されている。Magnusら (1982)
はKristiansand精錬所の熔錬工程で、肺 (SMR=360) と鼻腔 (SMR=4,000) のがんが見られただけでな
く、電解工程で肺 (SMR=550) と鼻腔 (SMR=2,700) のがんが見られたと報告している。後者の電解
工程では作業者は主に水溶性ニッケルに曝露しており、しかも肺・鼻腔がんのSMRは非常に高い。
はKristiansand精錬所の熔錬工程で、肺 (SMR=360) と鼻腔 (SMR=4,000) のがんが見られただけでな
く、電解工程で肺 (SMR=550) と鼻腔 (SMR=2,700) のがんが見られたと報告している。後者の電解
工程では作業者は主に水溶性ニッケルに曝露しており、しかも肺・鼻腔がんのSMRは非常に高い。
Outokumpu銅/ニッケル精錬所では、全がんおよび肺がんについて発生率の増加はなかったが、鼻腔
がんが期待数0.02に対し一人見られ、それは電解工程であった (Karjalainenら 1992)。これらより、
ニッケルの発がんにおける水溶性ニッケルの重要性が認識されるようになり、二硫化三ニッケルや
ニッケル酸化物など難溶性のニッケルを含む、全てのニッケル化合物が発がんの可能性のあるもの
として取り扱うべきである、とする考え方が生まれた。しかし、Port Colborneの電解工程ではこのよ
うな発がんの増加は認められていない (Robertsら 1984)。また、Magnusら (1982) の報告の作業者は
かなり工程間の移動があり、電解工程の作業者も過去に熔錬工程に従事していた可能性が高い。事
実、この報告では、管理・サービスなど間接作業に分類されている作業者も、肺 (SMR=170) およ
び鼻腔 (SMR=1,500) とも高い発がんのリスクを示していた。これまでのところ、原料に硫化物では
なく珪酸系ニッケル鉱であるラテライト鉱石を用いているNew Caledonia精錬所での呼吸器がんの増
加は確認されていない(Goldbergら1987, 1994)。
がんが期待数0.02に対し一人見られ、それは電解工程であった (Karjalainenら 1992)。これらより、
ニッケルの発がんにおける水溶性ニッケルの重要性が認識されるようになり、二硫化三ニッケルや
ニッケル酸化物など難溶性のニッケルを含む、全てのニッケル化合物が発がんの可能性のあるもの
として取り扱うべきである、とする考え方が生まれた。しかし、Port Colborneの電解工程ではこのよ
うな発がんの増加は認められていない (Robertsら 1984)。また、Magnusら (1982) の報告の作業者は
かなり工程間の移動があり、電解工程の作業者も過去に熔錬工程に従事していた可能性が高い。事
実、この報告では、管理・サービスなど間接作業に分類されている作業者も、肺 (SMR=170) およ
び鼻腔 (SMR=1,500) とも高い発がんのリスクを示していた。これまでのところ、原料に硫化物では
なく珪酸系ニッケル鉱であるラテライト鉱石を用いているNew Caledonia精錬所での呼吸器がんの増
加は確認されていない(Goldbergら1987, 1994)。
その他のニッケル取扱い作業では、鼻腔がんがニッケルに起因しているとする個別の症例報告は
あるが (Bourassetら 1966; Sunderman 1977)、メッキ作業者等水溶性のニッケルに曝露する作業者は
一般にクロム、酸・アルカリミストの複合曝露があり、ニッケル化合物単独の影響を知るのは困難
である。また、ニッケルメッキ作業では電解精錬やニッケル塩処理工程より水溶性ニッケルの曝露
濃度がはるかに低いため、肺がんの増加がみられないのであろう。
ニッケル合金工場でがん発生率とニッケル曝露の関係を調べた研究では、有意な関係は認められ
なかった (Coxら 1981; Redmond 1984; Cornell 1984)。Bernackiら (1978) は航空機会社で研磨、溶接、
メッキ作業に伴うニッケル粉塵曝露歴のある作業者について患者対照研究を行なったが、ニッケル
曝露群において呼吸器がんが増加しているとする証拠は認められなかった。
なかった (Coxら 1981; Redmond 1984; Cornell 1984)。Bernackiら (1978) は航空機会社で研磨、溶接、
メッキ作業に伴うニッケル粉塵曝露歴のある作業者について患者対照研究を行なったが、ニッケル
曝露群において呼吸器がんが増加しているとする証拠は認められなかった。
金属ニッケルについては、GodboldtとTompkins (1979) がOak Ridgeガス拡散工場において、金属ニ
ッケルに曝露した作業者の長期の死因調査を行なった。金属ニッケル粉末に曝露した作業者814人の
コホ-トを、1,600人の対照群と比較した。3,044サンプルの空気中金属濃度の中央値は0.13mg/m3で
あり、観察期間は少なくとも19年間にわたった。その結果、ニッケル曝露コホ-トにおける肺がん
の増加はなく、副鼻腔がんの症例もみられなかった。しかし、この研究ではコホートサイズが小さ
かったので、僅かなリスクの増加を検出できなかった可能性は否定できない。この他、金属ニッケ
ルのみに曝露する作業者の発がんのリスクの増加は観察されていない。
Pangら(1996)は、クロムメッキを扱ったことないニッケルメッキ作業者(塩化ニッケルおよび硫
酸ニッケルミストに曝露)の死因別死亡率(SMR)を検討した。英国Birminghamのメッキ工場のメ
ッキ部門で1945~1975年の間働いていた男性284名を1993年末まで85歳まで追跡すると、Englandと
Walesの一般集団と比較して胃がんのSMRは有意に高かった(SMR=322、95%C.I. 139~634)が、
肺がんのSMRは108(95%C.I. 54~194)であった。また、曝露年数(1年未満、1年以上)および
雇用年数別に肺がんの相対リスクを算出したが、ニッケル曝露との関連は認められなかった(喫煙
情報なし)。胃がんの死亡増加はコホートの地域・社会階層の差で説明可能と考えられた。
Andersenら(1996)は、Falconbridgeニッケル精錬所で働く男子作業者のニッケル化合物曝露によ
る肺がんおよび鼻腔がんの発症を、喫煙影響を考慮して検討した。コホートは1916~1940年の間に
働き始め、少なくとも3年以上勤務していた379人、および1946~1983年の間に働き始め、1年以
上勤務していた4,385人であった。1953~1993年の追跡の間に203人の新たな肺がんが観察され (期
待発症数は68であり、standardized incidence ratio (SIR)は3.0で、95%信頼区間(C.I.)は2.6~3.4)、また
32人の鼻腔がんが観察された (期待発症数は1.8でSIRは18.0で、95%C.I.は12~25)。水溶性ニッケル
の曝露量の増加に伴って有意に肺がんリスクが高くなった。また、ニッケル酸化物の曝露でも増加
傾向が認められた (P=0.05)。また、喫煙歴のないニッケル化合物曝露者の肺がんリスクは1.1(95
%C.I.は0.2~5.1)であり、喫煙歴のある曝露者のリスクは5.1(95%C.I.は1.3~20.5)であった。
る肺がんおよび鼻腔がんの発症を、喫煙影響を考慮して検討した。コホートは1916~1940年の間に
働き始め、少なくとも3年以上勤務していた379人、および1946~1983年の間に働き始め、1年以
上勤務していた4,385人であった。1953~1993年の追跡の間に203人の新たな肺がんが観察され (期
待発症数は68であり、standardized incidence ratio (SIR)は3.0で、95%信頼区間(C.I.)は2.6~3.4)、また
32人の鼻腔がんが観察された (期待発症数は1.8でSIRは18.0で、95%C.I.は12~25)。水溶性ニッケル
の曝露量の増加に伴って有意に肺がんリスクが高くなった。また、ニッケル酸化物の曝露でも増加
傾向が認められた (P=0.05)。また、喫煙歴のないニッケル化合物曝露者の肺がんリスクは1.1(95
%C.I.は0.2~5.1)であり、喫煙歴のある曝露者のリスクは5.1(95%C.I.は1.3~20.5)であった。
Arenaら(1998)は、全米にある13のニッケル合金工場で1年以上働いたことのある男女労働者
(31,165名)を対象(コホート)とし、1948年~1988年までの追跡期間におけるコホートの死因別
死亡を(人年法で算出した)相対リスク(RR)で検討した。男子の全死因別死亡(白人および非白
人)は、全米一般集団および工場近くの地域住民を対照群として比較すると有意に低かった(RR=
0.80と0.96)。白人男性の呼吸器がん死亡は全米集団を対照とすると有意に高かった(RR=1.11、
95%C.I. 1.03~1.18)が、地域住民を対照群とすると有意でなくなった(RR=1.00)。同様に、Arena
ら(1999)は、同じコホートの女子2,877名を対象(コホート)とした再調査を行い、全米一般女子
と比べて相対リスクが総死亡0.98(95%C.I. 0.92~1.06)、肺がん1.34(0.98~1.79)を報告している。
しかしながら、喫煙に関する記述が曖昧であり、呼吸器がんの増加は喫煙で説明されうる可能性が
ある。
(31,165名)を対象(コホート)とし、1948年~1988年までの追跡期間におけるコホートの死因別
死亡を(人年法で算出した)相対リスク(RR)で検討した。男子の全死因別死亡(白人および非白
人)は、全米一般集団および工場近くの地域住民を対照群として比較すると有意に低かった(RR=
0.80と0.96)。白人男性の呼吸器がん死亡は全米集団を対照とすると有意に高かった(RR=1.11、
95%C.I. 1.03~1.18)が、地域住民を対照群とすると有意でなくなった(RR=1.00)。同様に、Arena
ら(1999)は、同じコホートの女子2,877名を対象(コホート)とした再調査を行い、全米一般女子
と比べて相対リスクが総死亡0.98(95%C.I. 0.92~1.06)、肺がん1.34(0.98~1.79)を報告している。
しかしながら、喫煙に関する記述が曖昧であり、呼吸器がんの増加は喫煙で説明されうる可能性が
ある。
Egedahlら(2001)は、Sherritt精錬所(Canada, Albertaにある)で1954年から1978年の間に1年以
上働いた男子作業者1649名を1995年末まで追跡した。このうち、高純度ニッケル鉱とニッケル金属
のみに曝露したと考えられる湿式精錬工程作業者718名(延べ18,237人・年)の死亡はカナダ人一般
集団と比べていずれの死因別死亡率(SMR)でも高くなかった。
上働いた男子作業者1649名を1995年末まで追跡した。このうち、高純度ニッケル鉱とニッケル金属
のみに曝露したと考えられる湿式精錬工程作業者718名(延べ18,237人・年)の死亡はカナダ人一般
集団と比べていずれの死因別死亡率(SMR)でも高くなかった。
Richard Dollを座長とする疫学者による委員会 (International Committee on Nickel Carcinogenesis in
Man, 1990;以下“Doll委員会”と略す) は、ニッケルに職業的に曝露されていた作業者で、発がん性
を詳細に検討した。この検討の対象は、上に挙げた調査研究の対象事業所が多いが、それだけでなく、
またそれぞれ新たに事業所内の資料を再収集し、作業工程別の曝露ニッケル粉塵の化学形態と濃度を
独自に推定した。このデータを作業者別の工程別従事年数に当てはめ、肺がんおよび鼻腔がんの死亡
率から、ニッケルの化学形態別の発がん性を推定するという手法を用いた。しかし、曝露ニッケルの
化学形態別の濃度評価は、古い時代の製造工程の記録や現在の知識からの類推、粉塵が多かったか否
かの主観的判断、あるいは直接実際の粉塵を分析したのではなく、その工程で使われていた材料の150
meshの分析結果を用いた間接的な測定に基づくものであった。従って、ガス状ニッケル化合物の影響、
粒径が細かく吸入されやすいか否か、等々の考慮はなされていない。以上を留保した上で、この報告
に従ってニッケルの化学形態別の発がん性を整理すると表3のようになる (International Committee on
Nickel Carcinogenesis in Man, 1990)。
Man, 1990;以下“Doll委員会”と略す) は、ニッケルに職業的に曝露されていた作業者で、発がん性
を詳細に検討した。この検討の対象は、上に挙げた調査研究の対象事業所が多いが、それだけでなく、
またそれぞれ新たに事業所内の資料を再収集し、作業工程別の曝露ニッケル粉塵の化学形態と濃度を
独自に推定した。このデータを作業者別の工程別従事年数に当てはめ、肺がんおよび鼻腔がんの死亡
率から、ニッケルの化学形態別の発がん性を推定するという手法を用いた。しかし、曝露ニッケルの
化学形態別の濃度評価は、古い時代の製造工程の記録や現在の知識からの類推、粉塵が多かったか否
かの主観的判断、あるいは直接実際の粉塵を分析したのではなく、その工程で使われていた材料の150
meshの分析結果を用いた間接的な測定に基づくものであった。従って、ガス状ニッケル化合物の影響、
粒径が細かく吸入されやすいか否か、等々の考慮はなされていない。以上を留保した上で、この報告
に従ってニッケルの化学形態別の発がん性を整理すると表3のようになる (International Committee on
Nickel Carcinogenesis in Man, 1990)。
表3.ニッケルの化学形態別の発がん性
金属ニッケル
ClydachおよびKristiansand精錬所のコホート研究によると、金属ニッケルの曝露量と呼吸器がんの
間に因果関係は認められなかった。なお、Oak Ridge Gaseous Diffusion Plantの作業者は金属ニッケル
だけに曝露しており、1mg Ni/m3以下の濃度の金属ニッケルの曝露で呼吸器がんが増加する証拠はな
かった。
ニッケル酸化物
ニッケル酸化物の曝露が肺がんと鼻腔がんの死亡率を高めるという証拠がある。主にニッケル酸
化物に曝露されていると考えられるKristiansandの焙焼および熔錬工程の作業者で、肺がんのリスク
が高かった。しかし過剰死亡の程度は小さく、リスクと曝露期間との関係は弱かった。また精錬工
程の変更で、環境中のニッケル酸化物が減少すると肺がんのリスクも減少した。Clydachでもニッケ
ル酸化物に、50mg Ni/m3・年以上の累積曝露、または銅工程で10mg Ni/m3以上の濃度のニッケル酸化
物に曝露した作業者の肺がんのリスクは明らかに高かった。
Hanna Mining and SmeltingとNew Caledoniaではラテライト鉱を用いているが、この鉱石のニッケル
酸化物に銅は含まれず、呼吸器がんの増加の証拠もないことから、ニッケル酸化物の発がん性には
銅の存在が関与している可能性が示唆された。このことは各種の精錬中間産物を用いたSundermanら
(1987) の動物実験の結果とも一致する。しかし、Clydachの作業者は10~100mg Ni/m3、Kristiansand
では8mg Ni/m3以上の曝露に対し、Hanna Mining and SmeltingとNew Caledoniaでは1mg Ni/m3未満の
曝露であり、この曝露濃度の差で精錬所間の差を説明できる可能性もある。
Clydachの炉作業で15年以上ニッケル酸化物に曝露していた者に鼻腔がんが見られ、累積曝露量と
の間に一定の傾向が見られた。Kristiansandでも同様の傾向があり、鼻腔がん7例のうち5例は熔錬
作業に長く従事していた者であった。その作業場ではニッケル硫化物濃度も低くはなかったが、
Clydachでは鼻腔がんが見られない程度の濃度であった。
ニッケル硫化物
ニッケル精錬所の熔錬工程で発生するニッケル硫化物、特に二硫化三ニッケルの発がん性につい
ては、ほぼ合意が見られる。すなわち、肺がんと鼻腔がんの死亡率が最も高かったCopper Cliffの焼
結工程、Port Colborneの溶出、焙焼、焼結工程、Clydachの線状焙焼工程でいずれもニッケル硫化物
の極めて高濃度の曝露があり、二硫化三ニッケルがその主要な成分であった。しかし、これらの工
程はニッケル酸化物も最も高濃度となる場所であり、水溶性ニッケル濃度も低くない。Clydachでは
ニッケル硫化物の累積曝露量は肺がんや鼻腔がんの増加に関係していたが、KristiansandとHuntington
Alloyではニッケル硫化物の累積曝露量と発がんの間に量-反応関係は明らかでなかった。これは、
Clydachではニッケル硫化物濃度が9mg Ni/m3以上であったのに対して、Kristiansandではニッケル硫
化物の最高推定濃度が2mg Ni/m3、Huntington Alloyで4mg Ni/m3以下ということが関係していたと考
えられるが、同時に曝露しているニッケル酸化物や水溶性ニッケルの濃度の差であった可能性もあ
る。
ニッケル精錬所の熔錬工程で発生するニッケル硫化物、特に二硫化三ニッケルの発がん性につい
ては、ほぼ合意が見られる。すなわち、肺がんと鼻腔がんの死亡率が最も高かったCopper Cliffの焼
結工程、Port Colborneの溶出、焙焼、焼結工程、Clydachの線状焙焼工程でいずれもニッケル硫化物
の極めて高濃度の曝露があり、二硫化三ニッケルがその主要な成分であった。しかし、これらの工
程はニッケル酸化物も最も高濃度となる場所であり、水溶性ニッケル濃度も低くない。Clydachでは
ニッケル硫化物の累積曝露量は肺がんや鼻腔がんの増加に関係していたが、KristiansandとHuntington
Alloyではニッケル硫化物の累積曝露量と発がんの間に量-反応関係は明らかでなかった。これは、
Clydachではニッケル硫化物濃度が9mg Ni/m3以上であったのに対して、Kristiansandではニッケル硫
化物の最高推定濃度が2mg Ni/m3、Huntington Alloyで4mg Ni/m3以下ということが関係していたと考
えられるが、同時に曝露しているニッケル酸化物や水溶性ニッケルの濃度の差であった可能性もあ
る。
水溶性ニッケル
Kristiansand精錬所の電解工程の作業者に明らかな過剰死亡が観察されたことから、水溶性のニッ
ケル曝露は呼吸器がんのリスクを高めると考えられた。この電解工程では1~5mg Ni/m3以上の水溶
性ニッケルの曝露があったが、ニッケル酸化物やニッケル硫化物は1mg Ni/m3以下であった。肺がん
のリスクは水溶性ニッケルへの曝露期間と強く相関し、10年以上の曝露を受けた作業者は非曝露者
に比べ3倍以上のリスクであった。このKristiansandでの観察結果は、同様の濃度の水溶性ニッケル
に曝露したと考えられるClydachの湿式精錬作業者でも肺がんが多いことで、確認されたように思わ
れた。しかし、Clydachでは、量-反応関係が明らかでなかった。また、水溶性ニッケルの累積曝露
量が最大でありながらニッケル酸化物や金属ニッケルの曝露量は少ない作業者たちにがんの増加は
みられなかった。
Kristiansand精錬所の電解工程の作業者に明らかな過剰死亡が観察されたことから、水溶性のニッ
ケル曝露は呼吸器がんのリスクを高めると考えられた。この電解工程では1~5mg Ni/m3以上の水溶
性ニッケルの曝露があったが、ニッケル酸化物やニッケル硫化物は1mg Ni/m3以下であった。肺がん
のリスクは水溶性ニッケルへの曝露期間と強く相関し、10年以上の曝露を受けた作業者は非曝露者
に比べ3倍以上のリスクであった。このKristiansandでの観察結果は、同様の濃度の水溶性ニッケル
に曝露したと考えられるClydachの湿式精錬作業者でも肺がんが多いことで、確認されたように思わ
れた。しかし、Clydachでは、量-反応関係が明らかでなかった。また、水溶性ニッケルの累積曝露
量が最大でありながらニッケル酸化物や金属ニッケルの曝露量は少ない作業者たちにがんの増加は
みられなかった。
水溶性のニッケルは、他の化学形態のニッケル化合物と相互作用を起こし、発がんリスクを増加
させている可能性がある。例えばClydachの銅工程作業者の場合、高濃度のニッケル酸化物と1mg
Ni/m3を超える水溶性ニッケルに曝露した場合、肺と鼻腔のがんが高頻度に観察されたが、同程度の
ニッケル酸化物に曝露しても水溶性ニッケル曝露の少ない作業者は、発がんリスクが低かった。同
様の現象は、Kristiansandのニッケル酸化物と水溶性ニッケルの混合曝露者やClydachのニッケル硫化
物と水溶性ニッケルの混合曝露者でも観察された。このような相互作用がPort Colborneの電解工程の
作業者で肺がんの増加が見られなかったことに対する説明になる可能性がある。すなわち、Port
Colborneの電解工程では水溶性ニッケル濃度はKristiansandの電解工程とほぼ同じであったが、不溶性
のニッケル濃度は後者の1/7であったからである。実際Port Colborneで電解槽のスライム汲出しとアノ
ードスクラップの洗浄を行っていた作業者は、不溶性と水溶性のニッケルの両者に曝露をしており、
数が少ないため統計的に有意でないものの、肺がんリスクの増加を示した。
鼻腔がんについては、Kristiansand、Clydach、OntarioのINCO、Outokumpuの作業者の中で、水溶性
ニッケルに主に曝露しており、他のタイプのニッケル曝露の少ない作業者で鼻腔がんが見られた。
ただ、比較的最近のOutokumpuの報告 (Karjalainenら 1992) では、もっぱら水溶性ニッケルのみに曝
露すると考えられている電解工程の反応槽の底にニッケルサブファイドが多くあり、洗浄などの過
程で曝露が考えられる。
Grimsrudら (2002) は、Kristiansendの精錬工場で1910年から1994年まで働いていた5,389名の男性を
対象に、曝露量を見直して、水溶性ニッケル、ニッケル硫化物、ニッケル酸化物、金属の化学形態
別に推定累積曝露量を定め、累積喫煙量を補正して肺がんに関する患者対照研究を行なった。この
結果、水溶性ニッケル曝露量と肺がん発症率の間でのみ明確な量-反応関係が認められ (対数累積曝
露量<mg Ni/m3×年数>が1ユニット増加した時のOdds比は1.7で95%信頼区間は1.3~2.2)、この化学
形態の発がんへの関与が推定された。
ニッケルカルボニル
ニッケル精錬所の呼吸器がんの増加が初めて報告されたClydachの精錬所 (Doll 1958) は、ニッケ
ルカーボニルを用いるMond法精錬であったため、呼吸器がんの増加の原因はニッケルカルボニルへ
の曝露であると当初考えられた (Mastromatteo 1967)。しかし、OntarioやKristiansand (Pedersenら
1973)、ソ連 (SaknynとBlohkin 1978) のニッケル精錬所では、ニッケルカルボニルを用いていないに
もかかわらず、がんの増加が見られた。また、Clydachでは1930年以降呼吸器がんの増加は見られな
くなったが (Dollら 1977)、今日までニッケルカルボニル工程は依然として続けられている。したが
って、ニッケルカルボニルが呼吸器がんの原因とは考えにくい。
その他のがん
ニッケル精錬所の呼吸器がんの増加が初めて報告されたClydachの精錬所 (Doll 1958) は、ニッケ
ルカーボニルを用いるMond法精錬であったため、呼吸器がんの増加の原因はニッケルカルボニルへ
の曝露であると当初考えられた (Mastromatteo 1967)。しかし、OntarioやKristiansand (Pedersenら
1973)、ソ連 (SaknynとBlohkin 1978) のニッケル精錬所では、ニッケルカルボニルを用いていないに
もかかわらず、がんの増加が見られた。また、Clydachでは1930年以降呼吸器がんの増加は見られな
くなったが (Dollら 1977)、今日までニッケルカルボニル工程は依然として続けられている。したが
って、ニッケルカルボニルが呼吸器がんの原因とは考えにくい。
その他のがん
肺と鼻腔以外のがんがニッケル化合物の曝露で起こるという証拠はない。すなわち肺と鼻腔のが
んの増加のないコホートで、それ以外のがんの増加が観察されたことはなく、肺と鼻腔のがんの増
加したコホートで見られた他のがんの僅かな増加は、診断の誤謬 (骨、咽頭) ないし偶然 (前立腺) の
ためと考えられた。
<動物実験による発がん>
吸入曝露実験を要約すると表4のようになる (粉塵径は数μmまでの可吸入粉塵)。
んの増加のないコホートで、それ以外のがんの増加が観察されたことはなく、肺と鼻腔のがんの増
加したコホートで見られた他のがんの僅かな増加は、診断の誤謬 (骨、咽頭) ないし偶然 (前立腺) の
ためと考えられた。
<動物実験による発がん>
吸入曝露実験を要約すると表4のようになる (粉塵径は数μmまでの可吸入粉塵)。