公務員給与勧告 人件費抑制へ多角的議論を(8月14日付・読売社説)
このままでは「総人件費2割カット」は、やはり、掛け声倒れに終わるのではないか。
人事院は2010年度国家公務員一般職給与について、月給を平均0・19%、ボーナスを0・2か月分それぞれ引き下げるよう勧告した。2年連続のマイナス勧告だ。
人事院は2010年度国家公務員一般職給与について、月給を平均0・19%、ボーナスを0・2か月分それぞれ引き下げるよう勧告した。2年連続のマイナス勧告だ。
この通り実施されれば、公務員の平均年収は、9万4000円減る。国の費用負担の減少は、790億円程度である。
民主党は、衆院選の政権公約で「国家公務員の総人件費を2割削減する」とし、削減額は1・1兆円と試算していた。
無論、給与改定だけでこれが可能というわけではない。だが、その落差は大きすぎる。
玄葉公務員改革相は「公務員の定員削減や地方移管もある。労働基本権を付与して労使交渉で人件費を抑制していく。削減のための工程表を作る」と述べている。
いずれも簡単な話ではない。
人事院は今回の勧告で、「公務員の定年を段階的に65歳まで延長することが適当」としている。
天下りあっせんの禁止などにより、高齢期の雇用問題は切実さを増している。定年延長となれば、人事管理の面でも、大幅な制度の見直しが必要になるだろう。
その際、増加する総人件費をできるだけ抑制するには、60歳代前半の給与水準を相当引き下げなければならない。
その際、増加する総人件費をできるだけ抑制するには、60歳代前半の給与水準を相当引き下げなければならない。
一方、定員を維持するとして公務員の新規採用を極端に減らすならば、職場にひずみを生じ、公務員の士気や仕事の効率に影響が出かねない。しっかりした制度設計が欠かせない。
公務員に労働基本権を付与する問題も、議論が進んでいない。
協約締結権が与えられると、民間と同様、労使交渉で給与などが決定される。そうなれば公務員の労働基本権制約の代償措置である人勧制度は、廃止を免れない。
協約締結権が与えられると、民間と同様、労使交渉で給与などが決定される。そうなれば公務員の労働基本権制約の代償措置である人勧制度は、廃止を免れない。
今回の勧告は、労働基本権付与に関して論点整理をしている。
付与する職員の範囲や交渉・協約事項をどう定めるのか、国会はどう関与するのかなど、数多くのテーマがある。
問題は、安易な交渉で人件費が膨らんだり、労使対立で結論が出なかったりすることだ。その歯止めも検討しなければならない。
厳しい国家財政を考えれば、公務員給与の抑制は必要だ。政府・与党は、公務員制度改革の全体像を早く固めるとともに、労働基本権付与などについて野党とも議論を深めるべきだ。
厳しい国家財政を考えれば、公務員給与の抑制は必要だ。政府・与党は、公務員制度改革の全体像を早く固めるとともに、労働基本権付与などについて野党とも議論を深めるべきだ。
(2010年8月14日01時11分 読売新聞)