韓国で広がる原発不安 周辺自治体が稼働停止・情報公開を要求
2011.4.30 20:48
【ソウル=加藤達也】韓国では、南部の釜山市にある古里原発が故障で運転停止となったことをきっかけに、近隣の自治体が原発の運転中止を決議するなど“原発アレルギー”が広がっている。21基の商業炉が稼働する韓国は日本に次ぐアジア第2の原発大国。福島第1原発の事故後、首都ソウル近郊で“放射能雨パニック”も起きるなど、日本の事故が韓国の原子力政策に与える影響も無視できなくなっている。
古里原発は韓国初の商業原発として、1号機が1978年に運転を開始。設計の寿命は30年で、2007年に休止していた。しかしエネルギー確保のため運転再開が承認され、再稼働していた。
地元関係者によると、東日本大震災によって福島第1原発で深刻な放射能漏れ事故が起きたことを受け、原発近隣では不安が徐々に高まっていたが、4月12日に電気系統の故障で古里1号機が停止。これを機に、周辺自治体の議会などで安全性を疑問視する議論が活発化した。
周辺にある蔚山市の議会は同15日、福島第1原発級の事故で「80万人以上が放射能の危険にさらされる」として、古里1号機の運転中止を要請。さらに、12年中に設計寿命を迎える原発の稼働延長計画撤回や、原発の新規建設の再検討を要求した。
同26日には、原発を抱える5つの自治体の首長が南部の慶州に集まり、原子力安全対策の徹底などを政府に求める意見書を採択。このほか、釜山の複数の区議会で「古里1号機廃炉」の要求も決議された。
こうした中、教育科学技術省は古里1号機の故障について「単純な部品欠陥が原因」と強調。韓国政府は全国の原発を点検する組織を急遽(きゅうきょ)立ち上げ、「原発の安全性に問題ない」との立場を繰り返している。