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「反日中国」で必要な“帽子と用心棒” 編集委員 後藤康浩 (1/2ページ)2012/10/28 7:00 小サイズに変更 中サイズに変更 大サイズに変更 印刷 中国・広東省にあるパナソニックの工

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「反日中国」で必要な“帽子と用心棒” 

(1/2ページ)
2012/10/28 7:00
中国・広東省にあるパナソニックの工場を訪れた筆者
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中国・広東省にあるパナソニックの工場を訪れた筆者
 






中国事業をどうすべきか。1990年代半ばから中国に大挙、進出した日本企業は今、きわめて重大な岐路にさしかかり、中国事業に関する決断を迫られている。今回の「反日」はデモから破壊行為、不買運動に発展し、日本企業が直接的な被害を受けただけでなく、中国の国民を長期的に縛りかねない日本企業嫌い、日本製品忌避の感情を残した。直接的な原因となった尖閣諸島国有化の現実は今後も続くわけで、日本企業は中国での生産、販売でこれからも大きな反日リスクを抱え続ける。一方、日本のビジネスマンの中国嫌悪感の高まりもある。中国事業に意欲と熱意を持ち、日中友好を願っていた日本のビジネスマンの多くは激しい日本たたきの現実に自らが立っていた基盤の崩壊を経験した。日本企業の対中ビジネスはもはや元には戻らない変化を遂げた。
■転換点を迎えた「中進国」中国
 重要なのは中国の経済、市場そのものも今、大きな転換点にあることだ。人件費の高騰、人民元の上昇、自動車、家電や鉄鋼など様々な商品が示す需要の飽和化であり、一言でいえば「高度成長期の終わり」である。中国を世界第2位の経済大国に押し上げたトウ小平氏の「改革開放」政策の発動から34年。中国の1人当たり国内総生産(GDP)は5400ドルに達し、「中進国」となった以上、高成長期にピリオドが打たれるのは自然なことだ。ただ、中国経済に次のステージは用意されていない。成長の道半ばで先が見えなくなった焦燥感こそ「反日」のエネルギーだったのかもしれない。
反日デモの裏で一体何が起きていたのか。「未来世紀ジパング」(テレビ東京系列)で検証する
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反日デモの裏で一体何が起きていたのか。「未来世紀ジパング」(テレビ東京系列)で検証する
 では、これから日本企業は中国にどう向き合うべきか。まず、考えるべきは中国経済の変質である。90年代から中国の成長をけん引してきた輸出型の生産はすでにかなりの分野で競争力を失っており、ここ数年進んでいた東南アジア、南アジアへの工場流出はさらに加速するだろう。この10年、中国の新たなビジネスチャンスとして日本企業を潤してきた中国の内需は成長鈍化に直面するだろうが、今後も重要性は変わらず、日本企業にとっては欠かせない成長の原動力だ。中国の内需向けの生産拠点も重要性はあまり薄れないだろう。まとめていえば、こうなる。中国は「世界の工場」から「中国の工場」になる。内需で成長する米国と同様に、中国も内需で国内に立地する工場をある程度、食べさせていけるだろう。
■無国籍化で身を守る
日本食レストランの一部では、破壊行為の標的にならないようにするため、看板から「日本」の文字が消された
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日本食レストランの一部では、破壊行為の標的にならないようにするため、看板から「日本」の文字が消された
 それを踏まえれば、日本企業の戦略は、輸出型生産拠点の中国からの脱出、中国内需向け生産拠点の維持と中国国内販売の強化だろう。だが、中国のなかに工場を残し、販売を強化するのは簡単ではない。いつまた「反日」の標的にされるかはわからないからだ。「反日」回避のひとつの戦略は「無国籍化」だ。どこの国の企業かわからなくなれば「反日」には巻き込まれにくい。そういう企業は少なくない。スイス発祥の食品大手、ネスレをスイス企業と知る中国人は少ないが、ネスレ商品は中国のスーパーの棚で大きなスペースを占めている。フランスの化粧品メーカーのロレアル、英蘭系日用品メーカーのユニリーバ、ドイツのアディダスなど中国市場で国籍をあまり認識されずに売れている商品は多い。日本企業も無国籍化がひとつの選択肢となる。
■ASEANの「帽子」
 一方、からめ手から行く手法もある。日本から中国に投資するのではなく、日本以外の国に設立した現地法人から中国に投資、進出する迂回(うかい)戦略だ。台湾、シンガポール、マレーシアなどの現地法人を対中投資のプラットホーム化するわけだ。もともとは日本企業であってもシンガポールの法人が投資すればシンガポール企業として活動できる。こうした戦略を「帽子をかぶる」という。中国ではかつて江蘇省、浙江省あたりで多くの民営企業が国有企業待遇を得るため、実質的に破綻した国有企業を買収するなどして、国有企業を装った。これを「“紅い帽子”をかぶる」と呼んでいた。日本は東南アジア諸国連合(ASEAN)企業の帽子をかぶり、ASEANで生産し、中国とASEANの自由貿易協定(FTA)を活用して中国市場に商品を供給するという道もある。
 さらにすでに一部の企業は90年代から行っているが、米国法人から対中投資をし、米国企業の待遇で「反日」に立ち向かう手がある。自国企業を守ることを米国ほど重視し、力もある国はほかにない。言葉は悪いが、米国を“用心棒”とするアイデアである。
 日本企業にとって、中国の事業環境は変質した。新しい現実に向き合い、踏み出す勇気が問われている。



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