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海洋環境の保全

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海洋環境の保全

1 海洋汚染の防止等

 ロンドン条約1996年議定書の締結に向けた平成16年の海洋汚染防止法の改正による海洋投入処分の許可制度等の導入を受け、海洋投入処分を行うことができる廃棄物を規定している廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令を平成18年10月に改正、平成19年4月から施行し、許可制度の適切な運用を図っています。
 また、廃棄物の海底下廃棄を原則禁止し、二酸化炭素の海底下廃棄に係る許可制度を創設するため、海洋汚染防止法の改正等を行い、平成19年11月から施行しており、平成20年4月から平成23年3月まで二酸化炭素の海底下への貯留(CCS)に係る許可制度の適切な運用を図ることを目的に、海洋に関する環境影響評価やモニタリング等の海洋環境の保全上適正な管理手法の高度化に関する開発、海洋環境への影響を審査するためのマニュアルを作成しました。また、平成23年度からはCCS事業の普及と適正な実施のために、海洋生態系及び海水の炭酸系指標に係る化学的性状を、日本近海の生態区分と海底下貯留の実施可能性が高い海域などの条件から選定した海域で調査しています。
 なお、平成21年10月に、ロンドン条約1996年議定書締約国会合において、CCSを目的とする二酸化炭素の越境移動に関するロンドン条約1996年議定書改正案が採択され、議定書が改正されています。
 さらに、船舶のバラスト水中に混入する水生生物の越境移動を防止するため、平成16年2月にIMOにおいて採択されたバラスト水管理条約について、早期の発効に向けた取組(例:港湾における外来種や生息環境等の調査)を進めています。
 中国、韓国、ロシアとわが国の4か国による日本海及び黄海の環境保全のための北西太平洋地域海行動計画NOWPAP)に基づき、対象海域の状況を把握するために人工衛星を利用したリモートセンシング技術による海洋環境モニタリング手法の開発等を進めています。また、ウェブページからの解析データ提供を目的とした環日本海海洋環境ウォッチシステムを構築し、水温、植物プランクトン濃度等の観測データを取りまとめました。このデータの活用のための教材の開発や解析トレーニング研修を実施しており、赤潮や青潮など海洋環境に影響を与える現象の原因究明に係る研究に利用されました。
 さらに、生物多様性を指標とした新しい海洋環境影響評価手法の開発にも取り組みました。
 未査定液体物質の査定については、船舶によって輸送される有害液体物質等に関し、MARPOL条約附属書IIが改正され、平成19年1月1日から汚染分類が変更となりました。新基準に基づき、環境大臣が海洋環境保全の見地から有害性の確認がなされていない液体物質(未査定液体物質)の査定を行っています。

2 排出油等防除体制の整備

 1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約及び2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書に基づき、「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を策定し、環境保全の観点から油等汚染事件に的確に対応するため、緊急措置の手引書の備え付けの義務付け並びに沿岸海域環境保全情報の整備、脆弱沿岸海域図の公表、関係地方公共団体等に対する傷病鳥獣の救護及び事件発生時対応のあり方に対する研修・訓練を実施しました。

3 海洋環境保全のための監視・調査

 日本周辺海域の海洋環境の現状を把握するとともに、国連海洋法条約の趣旨を踏まえ、領海・排他的経済水域における生態系の保全を含めた海洋環境の状況の評価・監視のため、水質、底質、水生生物を総合的・系統的に把握するための海洋環境モニタリングを行いました。
 また、東京湾・伊勢湾・大阪湾における海域環境の観測システムを強化するため、各湾でモニタリングポスト(自動連続観測装置)により、水質の連続観測を行いました。

4 監視取締りの現状

 海上環境事犯の一掃を図るため、沿岸調査や情報収集の強化、巡視船艇・航空機の効果的な運用等により、日本周辺海域及び沿岸の監視取締りを行っています。また、潜在化している廃棄物・廃船の不法投棄事犯や船舶からの油不法排出事犯に重点をおき、悪質な海上環境事犯の徹底的な取締りを実施しました。最近5か年の海上環境関係法令違反送致件数は図4-7-1のとおりで、平成23年は593件を送致しています。

図4-7-1 海上環境関係法令違反送致件数の推移

5 漂流・漂着ごみ対策

 漂流・漂着ごみの被害が著しいモデル地域を対象に詳細な調査を実施し、漂流・漂着ごみの実態を把握するとともに、地域の実情に応じた効率的かつ効果的な回収・処理方法や今後の対策のあり方の検討を行いました。
 また、漂着ごみのモニタリングを実施し、既存の調査結果と合わせて分析し、漂着ごみの全国的な現存量・分布、漂着ごみの年間又は季節あたりの漂着物量(漂着速度)等の試算を行いました。
 さらに、災害はもとより災害に起因しない漂着ごみを市町村が処理した場合に「災害等廃棄物処理事業費補助金」により支援を行うとともに、広範囲にわたり堆積した海岸漂着ごみや流木等を処理するため、「災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業」による支援も行っています。
 また、平成21年7月に成立した美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号)に基づき海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進しています。平成22年3月には、同法に基づく基本方針が閣議決定されています。そして、都道府県が設置する地域グリーンニューディール基金への補助により、都道府県又は市町村が海岸管理者等として実施する海岸漂着物等の回収・処理に関する事業や、都道府県や市町村による海岸漂着物等の発生抑制対策に関する事業等に対する支援を行いました。
 漂流ごみについては、船舶航行の安全を確保し、海域環境の保全を図るため、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海及び有明・八代海の閉鎖性海域において、海域に漂流する流木等のごみの回収や船舶等から流出した油の防除等を行いました。
 国際的な対応としては、中国江蘇省連雲港市において、NOWPAPの枠組みの下で、各国間の情報交換や、一般市民への普及啓発を目的としたクリーンアップキャンペーン・ワークショップを実施し、海洋ごみの回収・収集が行われるとともに、関係者による情報交換が行われました。医療系廃棄物や廃ポリタンク等の大量漂着については、二国間又は多国間の会議において、関係各国に対し原因究明や適正な廃棄物管理の申し入れを行いました。また、日中韓三カ国環境大臣会合において、NOWPAPの枠組みの下での海洋ごみに関する協力の強化が合意されました。



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