その中で,「車のセールスマン」「肉屋」「大工」の3つは,どういうわけかイスラエルの『エルサレム・ポスト』紙の記事で報じられた際には削除されていました。
「大工」(builders)については,大工の家に生まれたイエス・キリストとの関連性を疑ってみました。
ただ,ユダヤ教においては「偽メシア」とされているイエス・キリストを「嘘つき」の仲間に入れることは,イスラエル社会においてはむしろ受け入れやすいことかもしれず,『エルサレム・ポスト』が削除した理由を説明できる解釈であるかどうか,私にはよくわかりません。
これはキイチロウさんに教えて頂いたのですが,「大工」に相当する英単語には,「builder」や「carpenter」の他に,「mason」というのがあります。
メイソン(=石工)です。
「走れメロス」のセリヌンティウスと同じです。
石工職人のギルドが発展したものだと言われている「フリーメイソン」の「mason」です。
「嘘つきの大工」が「嘘つきのフリーメイソン」を遠回しに含意しているのだとすれば,『エルサレム・ポスト』紙が削除する理由も説明できるかもしれません。
でも,これはまあ,かなりアクロバティックな解釈(=与太話)ですね。
ちょうど「フリーメイソン」などという与太話に思いを巡らせていたとき,とても面白い解釈に出会いました。
嘘つきのbutchersというのはミートホープであり,嘘つきのbuildersというのは耐震偽装事件で世間を騒がせた姉歯建築士であるというのです。
なるほど,牛肉偽装事件を起こした雪印食品も嘘つきのbutchersですし,耐震偽装事件を起こしたヒューザーやイーホームズ,APAグループなどは嘘つきのbuildersと言ってもよさそうです。
そうだとすると,嘘つきのcar salesmanというのは,リコール隠しで激しい批判を受けた三菱自動車工業であるということになるのでしょうか。
さらに言えば,嘘つきのgenerals(軍幹部)というのは,防衛省の守屋元事務次官ということになるのかもしれません。
もちろんその気になれば,嘘つきのdiplomats(外交官)を探す出すことも容易です。
あまりにもたくさんの嘘つきが次から次へと登場するので,忘却の彼方に消え去りそうですが,外務省の機密費流用問題や鈴木宗男事件など,何人もの嘘つきのdiplomats(外交官)がメディアをにぎわせたのは,それほど昔のことではありません。
それから,言わずもがなのことですが,嘘つきのpoliticians(政治家)など,掃いて捨てるほどいます。
「肉屋」がアラブ人から“ブッチャー(肉屋)”と呼ばれて忌み嫌われてきたシャロン元首相であるというような解釈は,スピーチの聴衆の多くがイスラエル人であることを意識しているからこそ出てくるものです。
私は,イスラエルのエルサレムで英語のスピーチをした村上春樹が聞き手として意識していたのは,主としてイスラエルのメディアなのだろうと考えていました。
ところが,もしも「肉屋=ミートホープ」「大工=ヒューザー」というような含意があるのだとすれば,村上春樹は英語でのスピーチを通して日本のメディアを強く意識していたことになります。
そうだとすれば,きわめて興味深いことだと言わざるを得ないのですが,果たして真相は…。