北朝鮮のミサイル発射
2012.4.16 07:44(1/3ページ)
■制裁破りに罰則求めた産経/6紙とも核実験の恐れ指摘
北朝鮮が13日、「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルの発射を強行し、失敗に終わった。6紙はそろって社説で、北朝鮮を強く非難した。
「世界が『国連安保理決議の明白な違反』と制止したのを無視した暴挙」と産経が書くように、いずれの社説も今回の発射が「安保理決議違反」であることを明確に打ち出している。
「『発射失敗』が核実験強行の呼び水になる可能性」(毎日)についても、全6紙が一致して指摘するところだ。
同様に6紙が触れながら内容に違いが見られたのは「中国」に関する論評である。中国は言うまでもなく北朝鮮の最大の友好国であり、北にも大きな影響力をもつ。しかし今回のミサイル発射に関して中国の責任を直接的に論じたのは、産経と読売だけだった。
産経は、朝鮮労働党第1書記に就任した金正恩氏に中国が祝電を送ったことを挙げ、「発射強行への後押しと言わざるを得ない」と批判した。また安保理常任理事国で、6カ国協議の議長国でもある中国が北への食糧・エネルギー支援を続けてきたことが「北の核・ミサイル開発を進展させた」と断じた。
読売も「(中国の)長年の融和的な態度が、核実験を強行しても国際社会には止める能力も意思もない、と北朝鮮がみくびり、暴挙を重ねる結果を招いてきたのではないか」と評した。
今後の取り組みについては各紙とも、安保理の役割とともに、とりわけ中国による北への働きかけを強調している。
「核兵器とミサイル開発にひた走る北朝鮮の増長を止める説得役を期待する」(朝日)
「安保理決議違反は許されないという国際常識を北朝鮮に納得させねばならない」(毎日)
「(北朝鮮が)強硬路線をとればさらに孤立すると警告すべきだ」(東京)
産経は安保理による制裁決議で、制裁破りへの明確な罰則がない現状を訴え、「この欠落を埋める工夫と加盟国の真剣な取り組みが不可欠」と提言した。さらに「オバマ米政権にも対北金融制裁復活や『テロ支援国家』の再指定を」と、米政府にも実効的な制裁を求めた。
日経は「米国内には『北朝鮮の核問題はイランほど脅威ではない』との見方がある。米側が北朝鮮と安易な対話に戻らないよう、政府は連携を密にしてほしい」と、日米両政府に向けて注文をつけている。
今回のミサイル発射に備えて日本は、沖縄本島などに迎撃用地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備するなど万全の態勢で臨んだが、東京は「効果を疑問視する声もある迎撃ミサイルを沖縄本島などに配備したことも含め、安保体制の再検討が必要だ」と論評した。
社民党も「政府の対応は過剰」などと批判しているが、産経はこれに対し「傍観しろという意味なのだろうか」と疑問を呈し、「ミサイル防衛(MD)システムで迎撃態勢を敷いたのは当然である」と主張した。
発射の公表が遅れたことには、朝日を除く5紙が「有事では一瞬の遅れが重大な被害を招きかねない」(日経)といった観点などから、システムや政府の対応を問題視した。
北朝鮮の核やミサイルの脅威はますます高まるのではなかろうか。それだけに今回の北の暴挙を「日米同盟を通じた日本の防衛と安全のあり方を検証する機会ともしたい」(産経)。(清湖口敏)
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■北朝鮮のミサイル発射を受けた社説
産経
・さらなる暴挙に備えよ/安保理で実効性ある懲罰を
朝日
・発射強行に抗議する
毎日
・安保理で厳正な対応を
読売
・強固な北朝鮮包囲網の構築を/政府は発表の遅れを猛省せよ
日経
・北朝鮮の危険な挑発をどう止めるか
東京
・軍事力よりまず民生だ
〈注〉いずれも14日付