消費税増税「政府案」決定 首相「先送りできない課題」
12.31 00:18 [消費税]
政府は30日、社会保障と税の一体改革に関する5閣僚会合を開き、消費税率を平成26年4月に8%、27年10月に10%と2段階で引き上げることを柱とした一体改革大綱素案の政府案を決定した。野田佳彦首相は同日、来年3月の消費税増税関連法案の国会提出に向けて、1月第1週に政府・与党の「社会保障改革本部」で大綱素案を正式決定させた後、野党との協議に臨む意向を表明した。[記事詳細]
関連情報
首相「曲げません」
- 「政府案」決定の舞台裏 首相を覆う孤立の影(12月31日)
国民生活はどうなる?
- 所得・相続・証券…増税ラッシュ、富裕層狙い撃ち経済活力そぐ恐れ(12月30日)
離党者続出!どじょうは解散ちらつかせ
- 離党続出も決意曲げず ドジョウが解散ちらつかせる(12月30日)
- 党内亀裂の深刻さ露呈 野田首相の求心力低下(12月30日)
消費税増税 政官のリストラも前提だ
民主党税制調査会の役員会が消費税を平成27年に10%まで引き上げる増税案を示した。具体的な税率や引き上げ時期が同税調で示されたのは初めてである。
少子高齢化が進む中で安定した社会保障財源を確保するには消費税増税は避けて通れないが、国民の理解を得るには政府や国会が自ら身を削る覚悟が求められる。政府・与党は円滑な引き上げに向け、そうした環境整備に取り組まねばならない。
役員会案によると、現在5%の消費税率を、平成25年10月にまず8%とし、27年4月には10%へと2段階で引き上げる。段階的な引き上げで景気に対する影響を極力抑える一方、企業や商店の準備時間を確保する狙いもある。
国民に負担増を求める以上、まず政官のリストラが求められるのは当然で、なにより徹底した歳出削減が大前提となる。
ところが、民主党はマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ国会議員の定数削減にすら見通しを付けるに至っていない。大震災の復興財源に充てる時限的な国家公務員給与の引き下げ法案も成立をみておらず、自らの身を削る姿勢に疑いの目が向けられている。
今回の役員案では、景気に応じて増税を中止する「弾力条項」も導入するとした。欧州の債務危機に見られるように世界経済は不透明感が強まっている。増税で景気の腰折れを招いたのでは、期待した税収が確保できない事態にもなりかねない。
民主党の議論では、弾力条項の発動条件として経済成長率など具体的な物差しを盛り込むべきだとする意見もあった。景気判断には幅広い検討が必要だろう。
低所得者対策として、現金給付と税額控除を組み合わせ、支払った消費税を還付する「給付付き税額控除」の創設も盛り込んだ。公平性を確保するには国民ひとりひとりの所得を把握する「共通番号」が不可欠だが、実際には法案化の作業は遅れている。制度導入を急がねばならない。
国民が広く負担する消費税は、社会全体で支え合う社会保障財源に適している。一般歳出の半分を占めるまでに至った社会保障費を赤字国債で賄う現行の歳出構造は限界だ。
財政再建への道筋をつける上でも消費税増税に向けた政府・与党の取り組みが問われている。
年金一元化 公務員天国にただ呆れる
“公務員天国”をいつまで許すつもりなのか。民主党が会社員の厚生年金との一元化にあたり、公務員共済年金の上乗せ給付制度である「職域加算」を温存しようとしていることだ。
特権を残したままでは制度の完全統合にはならない。改革の意味そのものを失うことになり、国民の理解はとても得られまい。
「職域加算」とは、年金給付額に月額約2万円を上積みする共済独自の仕組みだ。「追加費用」と呼ばれる税の投入や、遺族年金の受給権が父母や孫らにも引き継がれる「転給制度」とともに公務員特権の象徴とされてきた。一元化は、これらの優遇策を含めた年金の官民格差解消が目的だ。
ところが、民主党は社会保障と税の一体改革の素案に、「民間の退職金との比較を行う人事院の調査の結果を踏まえる」との文言を書き入れる方向だ。職域加算を「退職金の一部を分割して受け取る企業年金のようなもの」と位置づける官側の言い分をそのまま受け入れたにすぎない。
民主党を支持する自治労や日教組への配慮から、一体改革の法案内容を骨抜きにしようとする意図は明白だ。
そもそも民主党の年金改革議論は生煮えの部分が多すぎる。とりわけ一元化は、十分な検討がなされてきたとは言い難い。
【主張】消費税増税 政官のリストラも前提だ
今回の役員案では、景気に応じて増税を中止する「弾力条項」も導入するとした。欧州の債務危機に見られるように世界経済は不透明感が強まっている。増税で景気の腰折れを招いたのでは、期待した税収が確保できない事態にもなりかねない。
民主党の議論では、弾力条項の発動条件として経済成長率など具体的な物差しを盛り込むべきだとする意見もあった。景気判断には幅広い検討が必要だろう。
低所得者対策として、現金給付と税額控除を組み合わせ、支払った消費税を還付する「給付付き税額控除」の創設も盛り込んだ。公平性を確保するには国民ひとりひとりの所得を把握する「共通番号」が不可欠だが、実際には法案化の作業は遅れている。制度導入を急がねばならない。
国民が広く負担する消費税は、社会全体で支え合う社会保障財源に適している。一般歳出の半分を占めるまでに至った社会保障費を赤字国債で賄う現行の歳出構造は限界だ。
財政再建への道筋をつける上でも消費税増税に向けた政府・与党の取り組みが問われている。