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受動喫煙防止対策について

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健発0225第2号
平成22年2月25日
都道府県知事
各 保健所設置市 殿
特別区長
厚生労働省健康局長
受動喫煙防止対策について

健康増進法(平成14年法律第103号。以下「法」という。)第25条に規定された受動喫煙の防止については、「受動喫煙防止対策について」(平成15年4月30日付け健発第0430003号厚生労働省健康局長通知。以下「旧通知」という。)において、その必要な措置の具体的な内容及び留意点を示しているところである。
その後、平成17年2月に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発効し、平成19年6月から7月にかけて開催された第2回締約国会議において、「たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドライン」が採択されるなど、受動喫煙を取り巻く環境は変化してきている。
このような状況を受け、平成21年3月に「受動喫煙防止対策のあり方に関する検討会報告書」(別添)が取りまとめられたことを踏まえ、今後の受動喫煙防止対策の基本的な方向性等について下記のとおりとするので、御了知の上、関係方面への周知及び円滑な運用に御配慮をお願いしたい。
また、職場における受動喫煙防止対策は、厚生労働省労働基準局安全衛生部において、「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」において、今後の方向性についての議論をしているところであり、併せてご了知いただきたい。
なお、旧通知は、本日をもって廃止する。

1 法第25条の規定の制定の趣旨
法第25条の規定において「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」こととした。また、本条において受動喫煙とは「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義した。
受動喫煙による健康への悪影響については、科学的に明らかとなっている。
本条は、受動喫煙による健康への悪影響を排除するために、多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙を防止する措置をとる努力義務を課すこととし、これにより、国民の健康増進の観点からの受動喫煙防止の取組を積極的に推進することとしたものである。
注)
注)受動喫煙による健康への悪影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等に関する知見が示されるとともに、慢性影響として、肺がんや循環器疾患等のリスクの上昇を示す疫学調査があり、IARC(国際がん研究機関)は、証拠の強さによる発がん性分類において、たばこをグループ1と分類している。

また、受動喫煙により非喫煙妊婦であっても低出生体重児の出産の発生率が上昇するという研究報告がある。
また、国際機関や米英をはじめとする諸外国における公的な総括報告においては、受動喫煙の煙中には、ニコチンや一酸化炭素など様々な有害化学物質が含まれており、乳幼児突然死症候群、子どもの呼吸器感染症や喘息発作の誘発など呼吸器疾患の原因となり、特に親の喫煙によって、子どもの咳・たんなどの呼吸器症状や呼吸機能の発達に悪影響が及ぶなど、様々な報告がなされている。
2 法第25条の規定の対象となる施設
法第25条の規定においてその対象となる施設として、学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店が明示されているが、本条における「その他の施設」は、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設等
多数の者が利用する施設を含むものであり、本条の趣旨にかんがみ、鉄軌道車両、バス、タクシー、航空機及び旅客船などについても「その他の施設」に含むものである。
 

3 今後の受動喫煙防止対策の基本的な方向性
今後の受動喫煙防止対策の基本的な方向性として、多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべきである。一方で、全面禁煙が極めて困難な場合等においては、当面、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進めることとする。
また、特に、屋外であっても子どもの利用が想定される公共的な空間では、受動喫煙防止のための配慮が必要である。
 

4 受動喫煙防止措置の具体的方法
(1)施設・区域における受動喫煙防止対策
全面禁煙は、受動喫煙対策として極めて有効であると考えられているため、受動喫煙防止対策の基本的な方向性として、多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべきである。全面禁煙を行っている場所では、その旨を表示し周知を図るとともに、来客者等にも理解と協力を求める等の対応をとる必要がある。
また、少なくとも官公庁や医療施設においては、全面禁煙とすることが望ましい。
 

(2)全面禁煙が極めて困難である施設・区域における受動喫煙防止対策
全面禁煙が極めて困難である場合には、施設管理者に対して、当面の間、喫煙可能区域を設定する等の受動喫煙防止対策を求めることとし、将来的には全面禁煙を目指すことを求める。
全面禁煙が極めて困難である場合においても、「分煙効果判定基準策定検討会報告書」(平成14年6月)等を参考に、喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れ出ないことはもちろんのこと、適切な受動喫煙防止措置を講ずるよう努める必要がある。喫煙可能区域を設定した場合においては、禁煙区域と喫煙可能区域を明確に表示し、周知を図り、理解と協力を求めるとともに、喫煙可能区域に未成年者や妊婦が立ち入ることがないように、措置を講ずる必要がある。例えば、当該区域が喫煙可能区域であり、たばこの煙への曝露があり得ることを注意喚起するポスター等を掲示する等の措置が考
えられる。

5 職場における受動喫煙防止対策との連携と調和
(1)労働者のための受動喫煙防止措置は、「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(平成15年5月9日付け基発第0509001号厚生労働省労働基準局長通達)に即した対策が講じられることが望ましい。

(2)都道府県労働局においても、職場における受動喫煙防止対策を推進していることから、法第25条に基づく施策の実施に当たっては、管内労働局との連携を図る。

(3)法第25条の対象となる施設の管理者は多岐にわたるが、これらの管理者を集めて受動喫煙の健康への悪影響や各地の好事例の紹介等を内容とした講習会を開催するなど、本条の趣旨等の周知徹底を図る。この際、職場における受動喫煙対策推進のための教育については、「職場における喫煙対策推進のための教育の実施について」(平成16年5月13日付け基発第0513001号厚生労働省労働基準局長通達)により都道府県労働局が推進していることに留意する。
 

6 その他
(1)平成15年度より、株式会社日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)の生活衛生資金貸付の対象として、受動喫煙防止施設が追加されていることから、飲食店、旅館等の生活衛生関係営業者に対して、これを周知する。また、都道府県や市町村において、禁煙支援の保健指導、分煙方法の情報提供等を実施している場合、事業者や個人の参加をより一層促すよう努力する。

(2)受動喫煙防止対策を実効性をもって継続的に推進するためには、社会全体として受動喫煙防止対策に取り組むという気運を醸成することが重要である。このためにも、本通知を幅広く周知し、理解と協力を求めるとともに、健康日本21の枠組み等のもと、たばこの健康への悪影響や、禁煙を促す方法等について、さまざまな機会をとらえて普及啓発を行うなどの受動喫煙防止対策を進めていく必要がある。

(3)エビデンスに基づいた情報の発信及び普及啓発
ア 受動喫煙による健康影響に関する客観的な研究成果を活用し、受動喫煙の実態や健康への悪影響、諸外国の取組状況等について情報提供を進める。

イ 受動喫煙防止対策の推進に当たり、ニコチン代替製剤や内服薬等の禁煙補助薬による禁煙方法等の禁煙を促す情報等を提供する。
ウ たばこの健康への悪影響について普及啓発し、禁煙を促す方法等について、健康教育の一環として、地域、職域、家庭等において、関係者の対話と連携のもとで一層推進する。
特に健康被害を受けやすい乳幼児の家庭内受動喫煙防止のために、妊婦健診や両親教室など様々な機会を捉えて、禁煙とその継続を図るよう啓発する。

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