食品に含まれるカドミウムについて
<1.食品中に含まれるカドミウム>
A)
カドミウムは土壌又は水など環境中に広く存在するため、米、野菜、果実、肉、魚など多くの食品に含まれていますが、我が国においては米から摂取する割合が最も多く、日本人のカドミウムの1日摂取量の約4割は米から摂取されているものと推定されています。
<食品からのカドミウム摂取量の経年変化>
厚生労働省の研究機関である国立医薬品食品衛生研究所は、昭和52(1977)年度から毎年、日常食の汚染物質の摂取量調査 1)を行っています。平成19(2007)年度の調査結果によれば、日本人の日常食からのカドミウムの1日摂取量は、21.1μg 2)(成人の平均体重を53.3kgとすると2.8μg/kg 体重/週)であり、調査開始以降、経年変化はあるものの米の摂食量の低下などにより減少してきています。
また、2003年6月に開催された第61回FAO/WHO食品添加物専門家会議(Joint Expert Committee on Food Additives, JECFA) 3)の報告書によれば、各国の調査に基づくカドミウムの平均的な摂取量は0.7~6.3μg/kg 体重/週、また、WHOが公表している世界の各地域の食品の消費量とカドミウム濃度から得られた地域ごとの平均的なカドミウム摂取量は2.8~4.2 μg/kg 体重/週となっており、我が国の摂取量は比較的低い状況となっています。
A)
お米(玄米)のカドミウム含有量について、全国のさまざまな地域(約3万7千点)を調査した結果によると、日本産のお米1kg中に含まれるカドミウム量は平均して0.06 mg(=0.06 ppm)でした(1997~1998年 旧食糧庁の全国実態調査結果より)。
お米のカドミウム濃度が0.4 ppmを超える場合、それは鉱山からの排出などによって人為的に水田がカドミウムに汚染されていることが原因と考えられていますが4)、上記調査結果からは、そのようなお米の割合は全体の0.3%となっています。
<玄米中のカドミウム含有量の全国実態調査結果>
<2.規制及びリスク管理>
A)
国内では、食品衛生法において、米、清涼飲料水及び粉末清涼飲料にカドミウムの基準値が設定されています。
米については、昭和45年以降、基準値は1.0 mg/kg未満とされてきました。また、その当時、カドミウム濃度0.4 mg/kgを超える米が生産される地域は、何らかのカドミウムによる環境汚染があると考えられていたため、市場の混乱を避けるために、国が0.4 mg/kgから1.0 mg/kg未満の米を買い上げて市場流通しないよう管理してきました。
<食品中のカドミウムの基準値>
食品 | 基準値 | |
米(玄米) | 1.0 mg/kg未満 | |
清涼飲料水 (ミネラルウォーター類を含む) | 原水 | 0.01 mg/L以下 |
製品 | 検出してはならない | |
粉末清涼飲料 | 検出してはならない |
また、国際基準は次のように設定されています。
<食品中の汚染物質規格> (CODEX STAN 193-1995, Rev.3-2007)
食品群 | 基準値 (mg/kg) | 備考 |
穀類(そばを除く) | 0.1 | 小麦、米を除く ふすま、胚芽を除く |
小麦 | 0.2 | |
ばれいしょ | 0.1 | 皮を剥いたもの |
豆類 | 0.1 | 大豆(乾燥したもの)を除く |
根菜、茎菜 | 0.1 | セロリアック、ばれいしょを除く |
葉菜 | 0.2 | |
その他の野菜(鱗茎類、アブラナ科野菜※、 ウリ科果菜、その他果菜) | 0.05 | 食用キノコ,トマトを除く |
精米 | 0.4 | |
海産二枚貝 | 2 | カキ、ホタテを除く |
頭足類(イカ及びタコ) | 2 | 内臓を除去したもの |
※「アブラナ科野菜」のうち、葉菜で結球しないものは「葉菜」に含まれる。
<個別食品規格>
食品 | 基準値 | 備考 |
ナチュラルミネラルウォーター | 0.003 (mg/l) | CODEX STAN 108-1981 |
食塩 | 0.5 (mg/kg) | CODEX STAN 150-1985 |
<改正後の米のカドミウムの基準値(平成23年2月28日施行)>
食品 | 基準値 |
米(玄米及び精米) | 0.4 mg/kg以下 |
また、現在、食品衛生法でカドミウムの規格基準が設定されている清涼飲料水(ミネラルウォーター類を含む)及び粉末清涼飲料については、別途検討することとしています。
<3.食品摂食時の注意事項>
<4.環境省調査結果への対応>
A)
我が国での市場流通食品の分析結果をもとに算定したカドミウムの一日摂取量は2.8 μ g/kg体重/週であり、耐容週間摂取量の7 μ g/kg体重/週を十分下回っていることから、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられるとされています。
また、同委員会では、比較的カドミウム濃度が高い農作物が流通することも想定し推計された日本人のカドミウム摂取量分布についても、以下のとおり評価しており、審議会における議論では、カドミウム摂取量が多いと推定される人でも、健康に悪影響を及ぼさない摂取量を十分に下回っているとされています。
-食品安全委員会汚染物質評価書 カドミウム(第2版)より抜粋-
独立行政法人国立環境研究所(2004)は、平成7年から平成12年までの6年間の国民栄養調査による摂取量データと農林水産省の実態調査による食品別カドミウム濃度データから確率論的曝露評価手法(モンテカルロシミュレーション)を適用し、日本人のカドミウム摂取量分布*の推計を行っている。この結果、現状の0.4ppm以上の米を流通させない場合におけるカドミウム摂取量は、算術平均値3.44μg/kg体重/週、中央値2.92μg/kg体重/週、95パーセンタイルで7.18μg/kg体重/週であると報告されている。
<日本人のカドミウム摂取量の分布>
日本人が食品を通じて摂取するカドミウムのうち野菜各品目から摂取する量の割合は、主要な摂取源である米に比べて低い上、我が国の農作物の流通・販売や食生活の現状からは、カドミウム濃度の高い野菜を毎日大量に、長期間にわたって摂取する可能性は低いと考えられますが、食生活を通じて健康な毎日を過ごすためにも、同じ食品を毎日たくさん食べ続ける偏食などに注意し、バランスの良い食生活を心がけましょう。
薬事・食品衛生審議会における検討状況
○ 平成22年4月
・米のカドミウムに関する規格基準を改正(1.0ppm → 0.4ppm)。
・米のカドミウムに関する規格基準を改正(1.0ppm → 0.4ppm)。
- 平成21年12月2日 食品衛生分科会(資料、議事録)
- 平成21年10月6日 食品規格部会(資料、議事録、報告書(PDF:240KB))
- 平成21年1月14日 食品規格部会(資料、議事録)
- 平成20年10月22日 食品規格部会(資料、議事録)
- 平成20年7月8日 食品規格部会(資料、議事録)
食品からのカドミウム摂取に係る安全性確保に関する説明会
開催結果
<主催>厚生労働省
<日時>平成21年11月