内地渡航の鮮人は郷里で思い止まらせる方法を将来取りたい
東上途中の池上総監談
1928年（昭和3年）4月17日 大阪毎日新聞附録西部毎日
【下関】池上朝鮮政務総監は、同夫人道岡由井子さんと福士学務課長、秘書官を従え、トランク３６個を携帯し、１６日夜、関釜連絡船で下関着、９時５０分発特急で東上した。池上朝鮮政務総監は語る。
在満の朝鮮人問題については外務省の出先官憲に心配してもらっているので、こちらで特にどうしようこうしようとは思っていない。朝鮮人の内地渡来が多いことは認めているが、せっかく釜山までやって来ているものに対して郷里にまた引き帰させるというのも考えもので、将来は、漫然とした渡来者のないよう、決まった仕事もなく所持金も少ないものに対しては、郷里をまだ出ないうちに出発を思い止まらす方法を講じたいと、現在、その方法について研究中だ。
小農保護、あるいは悪地主から苦しめられつつある小作人の救済のために、低利資金（本紙詳報）を貸与する方法を講じた。この資金は、各道が持っている御下賜金が全部で１７００万円ほどあるので、それを貸し付けたいと思っている。貸付金が返らない場合、その欠損の補填方法は現在研究中だ。
朝鮮内で米穀の公定相場を決めることは最も必要だと思っているので、特別議会でも済んだら具体的に研究して見たい。俺の辞職問題？ 勝手気ままには辞められないだろう。
平25.3.4 追記
下の xiaokeさんのコメントによる御教示です。
「郷里をまだ出ないうちに出発を思い止まらす方法」として、昭和3年7月以降、「就職口確実なる者」、「必要旅費を除きなお十円以上の余裕を有するもの」、「モルヒネ中毒者にあらざること」、「ブローカー募集に応じたるものにあらざること」等の条件を満たす者に釜山署宛の渡航紹介状を発行する制度を施行。