道路の不法占有と占用料相当額の徴収
占用料は占用許可を得た者から徴収されるものであるから、占用許可を得ていない不法占有者から徴収することはできない。
しかしこれは、適法に占用し、占用料を徴収されている者との比較において、不公平ではないかという問題がある。
この問題の一つの解決策として、占用料相当額を不当利得として不法占有者から徴収することが考えられる。これについて、最判平成16年4月23日民集58巻4号892頁(はみ出し自販機事件)は、「道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収して収入とすることができるのであるから、道路が権原なく占有された場合には、道路管理者は、占有者に対し、占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得するものというべきである」と判示している。
この問題の一つの解決策として、占用料相当額を不当利得として不法占有者から徴収することが考えられる。これについて、最判平成16年4月23日民集58巻4号892頁(はみ出し自販機事件)は、「道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収して収入とすることができるのであるから、道路が権原なく占有された場合には、道路管理者は、占有者に対し、占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得するものというべきである」と判示している。
この事案における都道敷にはみ出した自動販売機の設置については、占用許可を申請したとしても許可基準を満たさず、占用許可が得られないから、占用料徴収の対象となりえないのではないかが問題となるが、本判決は、占用料相当額の損害賠償請求権または不当利得返還請求権の成立を認めた。
この点については、学説上も、当該公共用物が客観的、潜在的に有する私物としての価値が不法占拠によって侵害されているのであるから損失ないし損害があるという積極説が有力であるが 、 上記判決は、 最高裁
として初めて積極説を採ることを明らかにしたものである 。 したがって、不法占有者は占用許可を得ていないがゆえに占用料徴収の対象となしえないのではないかという問題は、少なくとも実体法的には、判例・学説上、克服されているといえる。
として初めて積極説を採ることを明らかにしたものである 。 したがって、不法占有者は占用許可を得ていないがゆえに占用料徴収の対象となしえないのではないかという問題は、少なくとも実体法的には、判例・学説上、克服されているといえる。
しかし、徴収手続に着目すると、占用料については行政上の強制徴収の対象になる(道路法73条)のに対し、不法占有者に対する占用料相当額の徴収は民事訴訟によってしかなしえない点で、なお不均衡ではないかが問題となる。そこで、立法論として、不法占有者から占用料相当額を徴収する課徴金制度を創設することが考えられる。
それによって、不法占有者からも占用料相当額(の課徴金)を行政上の強制徴収によって徴収することが可能となり、適法に占用許可を受けた者との不均衡は徴収手続面でも解消される。
さらに、不法占有を抑止するという観点からは、占用料相当額よりも高額の課徴金を課すことも考えられる*7。すなわち、占用料相当額を徴収するだけでは、適法に占用許可を得た場合と同じ利益状態に置くに過ぎず、不法占有を抑止する効果としては不十分である。もっとも、不法占有者に対しては、道路法上の監督手段(同法71条)をとることが可能であるし、罰則規定(同法100条1号)もある。
さらに、不法占有を抑止するという観点からは、占用料相当額よりも高額の課徴金を課すことも考えられる*7。すなわち、占用料相当額を徴収するだけでは、適法に占用許可を得た場合と同じ利益状態に置くに過ぎず、不法占有を抑止する効果としては不十分である。もっとも、不法占有者に対しては、道路法上の監督手段(同法71条)をとることが可能であるし、罰則規定(同法100条1号)もある。
しかし、それらの執行は、実際には必ずしも容易ではない。そこで、そのような手段とあいまって行政上の義務履行を確保する手段として、課徴金制度を導入する
ことが考えられる。
上記のような観点から、占用料相当額よりも高額の課徴金を課す制度を導入することは、法的に許容されるであろうか。
ことが考えられる。
上記のような観点から、占用料相当額よりも高額の課徴金を課す制度を導入することは、法的に許容されるであろうか。
4.で述べたように、占用料についても、一定の政策誘導目的追求のために、対価や費用を超える額に設定することは可能であると解されるが、ここで問題としている課徴金は、占用料そのものではないので、対価や費用と一致すべき必然性は、より一層小さいと考えられる。すなわち、不法占有による利益の剥奪にとどまらず、不法占有抑止の実効性を確保するために必要な一定の割増を行うことも、賦課の目的との関係で不必要または不相当に重い負担を課すものでない限り、許されると解すべきである。
その際、上述の不法占有に対する罰則と併科されたとしても、必ずしも二重処罰禁止(憲法39条)に反しないと考えられる。これらの点については、独占禁止法や金融商品取引法における課徴金に関するのと同様の議論が妥当すると考えられる。
○不当利得返還請求
訴訟手続等により、不法占用期間にかかる占用料相当額を請求するもの。
<はみ出し自動販売機住民訴訟>
(H16.4.23最高裁判決)
自動販売機を都道にはみ出して設置した日から撤去した日までの間、何らの占有権原なくこれらの自動販売機を設置してはみ出し部分の都道を占有していたのであるから、行政は、被上告人らに対し、上記各占有に係る占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得したものというべきである。
自動販売機を都道にはみ出して設置した日から撤去した日までの間、何らの占有権原なくこれらの自動販売機を設置してはみ出し部分の都道を占有していたのであるから、行政は、被上告人らに対し、上記各占有に係る占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得したものというべきである。
1.訴訟概要
○ 東京都民たる消費者団体の構成員が、タバコや飲料のメーカーが自動販売機を都道に権原なくはみ出して設置し、東京都が占用料相当額の損害を被ったとして、東京都に代位して不当利得返還等を請求したもの
○ 東京都民たる消費者団体の構成員が、タバコや飲料のメーカーが自動販売機を都道に権原なくはみ出して設置し、東京都が占用料相当額の損害を被ったとして、東京都に代位して不当利得返還等を請求したもの
2.経緯
H2.10月消費者団体が、東京都等に対しはみ出し自動販売機の撤去を要請その後、東京都の指導とメーカーの協力により、本件訴訟に係る自動販売機はH5.11月までに撤去され、約3万6千台あったはみ出し自動販売機のほとんどがH6初頭までに撤去された。
H6.1月住民訴訟提起
H16.4月最高裁判決
3.争点
○ 道路が権原なく占有された場合、道路管理者は、占有者に対し、占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得するか
○ はみ出し自動販売機が撤去されている状況下で、東京都がメーカーに占用料相当額の不当利得返還請求
権等を行使しないことは違法か
権等を行使しないことは違法か
4.判決
○ 道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収して収入とすることができるのであるから、道路が権原なく占有された場合には、道路管理者は、占有者に対し、占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得する
○ 道路管理者は道路の占用につき占用料を徴収して収入とすることができるのであるから、道路が権原なく占有された場合には、道路管理者は、占有者に対し、占用料相当額の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を取得する
○ はみ出し自動販売機に係る最大の課題は、それを放置することにより通行の妨害となるなど望ましくない状況を解消するためこれを撤去させるべきであるということにあったのであるから、対価を徴収することよりも、はみ出し自動販売機の撤去という抜本的解決を図ることを優先した東京都の判断は十分に首肯することができる。メーカーが、東京都に協力し、撤去費用の負担をすることによって、はみ出し自動販売機の撤去という目的が達成されたのであるから、東京都が撤去前の占用料相当額の金員を取り立てることが著しく不適当であると判断したとしても、それを違法であるということはできない
○ 適法に許可を受けて占用料を納付している者に不公平感を与えている。
東日本大震災を受けて、
・不法占用の突出看板が落下して通行者に危害を加えたり緊急車両の通行を妨げるおそれ
・歩道上の不法占用物件が帰宅困難者の移動を妨げるおそれが認識されている。
・不法占用の突出看板が落下して通行者に危害を加えたり緊急車両の通行を妨げるおそれ
・歩道上の不法占用物件が帰宅困難者の移動を妨げるおそれが認識されている。