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我が国の水と衛生分野をめぐる国際交流

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水と衛生分野をめぐる国際潮流

概況

 水と衛生は、国連ミレニアム開発目標(MDGs)のターゲットの1つ。世界で約8億8,400万人が安全な飲料水を利用できず、約26億人が基本的な衛生施設を利用できない。水と衛生の欠乏より、例えば、毎年約180万人の子供が下痢のために死亡し、毎年のべ4億4,300万日の子供の授業日が失われているとされる。
 しかし、2015年までに、安全な飲料水及び衛生施設を継続的に利用できない人々の割合を半減するというMDGs達成に向けた改善は必ずしも順調ではなく、現在の動向が続けば、特に衛生施設のターゲットはサハラ以南アフリカ及びアジアの多くの国で達成軌道から外れ、世界全体でターゲットには10億人届かない。
 

©I.Fukuzawa
 世界保健機構(WHO)と国連児童基金(UNICEF)が作成した「Progress on Sanitation and Drinking-water: 2010 Update」(2010年)の推計によると、上水道や井戸などの安全な水を利用できない人口は2008年に世界全体で約8億8,400万人おり、そのうち、半分以上(約4.8億人)がアジアに、約3.3億人がサハラ以南アフリカに暮らしています。
 また、世界で約26億人が下水道などの基本的な衛生施設を利用できない状況にあり、そのうち72パーセント(約19億人)がアジアに、21パーセント(約5.7億人)がアフリカに暮らしています。
 
 水と衛生は人の生命と生活に関わる重要な問題です。国連開発計画(UNDP)が作成した「人間開発報告書2006」によると年間約180万人の子供が下痢のために死亡しています。これは、世界で2番目に多い子供の死因です。また、水関連の病気により年間のべ4億4,300万日の子供たちの授業日が失われ、何百万もの女性が水汲みに毎日数時間を費やしています。
 
 このような状況を反映し、国連は、ミレニアム開発目標(MDGs)の中で「安全な飲料水及び基本的な衛生施設を継続的に利用できない人の割合を2015年までに半減する」という目標を掲げるとともに、2005~2015年を「『命のための水』国際行動の10年」として様々な取組を進めています。
 例えば、国連持続可能な開発委員会(CSD: UN Commission on Sustainable Development)は、2004~2005年に水、衛生施設及び人間居住を特定テーマとして取り上げ集中的に討議し、2005年4月に「政策決定文書」を発表しました。
 また、国連「水と衛生に関する諮問委員会」は、2004年7月の設立以降、2010年6月までに14回開催され、第4回世界水フォーラム(2006年3月)の機会に「橋本行動計画(Hashimoto Action Plan)」を発表しました。この提言の一つを受け、日本等が主導して2006年12月に国連総会で採択された「2008年国際衛生年」は、世界各地でより良い衛生に向けた関心を高め、様々な行動を促進しました。2010年には、国連水の10年実施の中間評価として、国連総会の水に関するハイレベル対話等が行われました。
 
  2008年7月、G8首脳は、北海道洞爺湖サミット首脳宣言において、
1)日本が推進する循環型水資源管理が決定的に重要との認識を共有し、
2)エビアン・サミットで合意された「水行動計画」の実施に向けて努力を再活性化するとともに、次回サミットまでにG8水専門家により準備される進捗報告に基づき、これを再検討する、
3)アフリカ及びアジア太平洋地域に特に焦点を当てる、
4)国際衛生年である本(2008)年、各国政府に対して衛生へのアクセスを優先課題とするよう呼びかけることに合意しました。
 
  2009年7月のラクイラ・サミットにおいて、首脳はエビアン水行動計画の進捗状況に関するG8水専門家による報告を歓迎するとともに、水と衛生の確保が持続的な経済成長に不可欠であることを強調し、アフリカとのパートナーシップの強化に合意しました。

関連国際会議等

G8ムスコカ・サミット成果文書
・G8説明責任報告書(要旨抄訳(PDF)PDF
G8ラクイラ・サミット成果文書
・G8首脳宣言(骨子(世界経済気候変動、開発・アフリカ)/仮訳(PDF)PDF/)
・G8首脳宣言別添:G8暫定説明責任報告書(仮訳(PDF)PDF
・共同声明:水と衛生に関するより強力なG8・アフリカ・パートナーシップ(仮訳(PDF)PDF/)
G8北海道洞爺湖サミット成果文書
・開発・アフリカ(骨子 仮訳 
世界水フォーラム (第5回第4回第3回
 
 
 

日本の取組

水と衛生分野における政策方針

・概況
 日本は、水と衛生分野のトップドナーであり、自国の経験、知見や技術を活かし、ソフト・ハード両面での包括的な支援を行っています。2006年3月には「水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ」(WASABI)を発表、日米水協力「きれいな水を人々へ」イニシアティブに基づく米国との連携をはじめ、国際機関、他の援助国、内外のNGO等との連携を強化し、一層質の高い援助を追求しています。
 また、2003年3月には第3回世界水フォーラムをホストし、2006年12月の国連「2008年国際衛生年」の採択に主導的役割を果たすなど、多国間の取組にも積極的な貢献を行っています。
 
 
  日本は、水と衛生分野では従来から大きな貢献をしています。1990年代から継続的にDAC諸国の中のトップドナーとして支援を実施してきており、2005年から2009年までの5年間で二国間ドナーの38%に当たる98億ドルのODAを実施しました。
 日本は、歴史的に経済発展と産業構造の変化、都市化の進展等に伴って深刻化した洪水、渇水、水質汚濁等の問題を克服するため、水関連災害の軽減、水利用調整、水質汚濁防止等に関してソフト、ハード両面の対策を進めてきました。こうした経験、知見や技術を開発途上国の水と衛生に関する状況の改善に活用しています。

 2003年3月に京都で開催された第3回世界水フォーラムでは「日本水協力イニシアティブ」を発表し、日本の水分野における包括的な取組を表明しました。また、2006年3月にメキシコ・シティで開催された第4回世界水フォーラムでは、水と衛生分野で国際機関、他の援助国、内外のNGO等との連携を強化し、一層質の高い援助を追求するため、「水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ(WASABI)」を発表しました。
 
水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ

 
国際的なパートナーシップの強化のため、日本は、日米水協力「きれいな水を人々へ」イニシアティブに基づき米国との連携を進めています。第4回世界水フォーラムの機会には、日米両国がセッション及び共同会見を共催し、同パートナーシップの進展と成果を発表しました。現在、インドネシア、インド、フィリピン、ジャマイカの4ヶ国をパイロット国とし、日本のJICAによる有償資金協力とUSAIDの投資保証を組み合わせて、地方上下水道インフラに民間資金を呼び込むための手法等について検討を進めています。
 フィリピンでは、「地方自治体上下水道事業協力(MWLFI: Municipal Water Loan Financing Initiative)」として、日米両国の資金スキームを組み合わせた融資の第1号案件が2006年3月に実現しました。また、MWLFIの構築で得られた教訓も活かしつつ、より効率的かつ持続可能な方法で民間投資促進を行う新たな資金スキーム「フィリピン上下水道整備基金(PWRF: Philippine Water Revolving Fund)」が2008年に設立されました。
 
 2008年2月、高村外務大臣は「貴重な水の有効利用のために~安全な水と衛生施設へのアクセス拡大に向けて~」と題する政策演説を行い、
(1)循環型水資源管理を通じて水資源の持続的利用を追求すること、
(2)日本が有する水分野における高い技術と知見を世界の人々と共有していくいこと、
(3)人間の安全保障の実現のために安全な飲料水や基礎的衛生施設の利用、また手洗いのような生活習慣を改善すること、
(4)水の問題への地球規模での取り組みを強化すること、
(5)中央と地方の連携や官民連携など国内的にも国際的にも全員参加型の協力を推進することを提起し、水・衛生問題へのグローバルな対応を呼びかけました。
 
 このような考え方をふまえて、2008年5月のTICAD IVでは、水分野の支援として、
(1)650万人に安全な飲料水を提供するための給水施設整備、
(2)給水分野の人材5千人の育成、
(3)貴重な水を一滴たりとも無駄にしないよう「水の防衛隊(W-SAT)」の派遣、を表明しました。
 
 同年7月のG8北海道洞爺湖サミットにおいても、サミット首脳宣言の「開発・アフリカ」の中で水・衛生が取り上げられ、良い循環型水資源管理の重要性が確認されるとともに、水・衛生に関するG8専門家会合を設置し、アジア・太平洋とともにサブサハラ・アフリカに特に焦点を当て、必要な行動をとること等について協議することが合意されました。
 
 

実績

水と衛生分野の援助実績

国際比較(暦年)
・主要DAC諸国の援助実績(2005-2009年・上位6カ国)
国名 2005 2006 2007 2008 2009 合計 割合
日本2,1291,2561,9301,6682,7869,76937.9%
アメリカ1,0268184328474623,58513.9%
ドイツ4024975949068203,22012.5%
オランダ2074553643731971,5956.2%
フランス1142543833607791,8917.3%
デンマーク9614532191654561.8%
その他6636647571,8011,3935,27920.5%
合計4,6374,0894,4925,9756,60125,795100.0%
(単位:百万ドル(約束額ベース))
出典:OECD/DAC・CRSオンラインデータベース(2011年2月時点)
・主要DAC諸国の援助実績の推移(2005-2009年計)
出典:OECD/DAC・CRSオンラインデータベース(2009年3月時点)
・主要DAC諸国の援助額の割合(2005-2009年計)
出典:OECD/DAC・CRSオンラインデータベース(2009年3月時点)
・主要DAC諸国の拠出額と拠出割合(2005-2009年計)

出典:OECD/DAC・CRSオンラインデータベース(2011年2月時点)
国名 ODA全体に
占める割合  水と衛生分野に
対する約束額
オーストラリア1.0%124
オーストリア2.2%121
ベルギー4.5%378
カナダ1.3%207
デンマーク5.8%456
フィンランド5.4%224
フランス4.2%1,891
ドイツ6.4%3,220
ギリシャ0.6%8
アイルランド2.7%96
イタリア4.0%402
日本13.6%9,769
韓国10.7%497
ルクセンブルグ6.4%78
オランダ5.4%1,595
ニュージーランド0.9%13
ノルウェー1.4%215
ポルトガル0.4%5
スペイン8.2%1,433
スウェーデン2.4%343
スイス3.0%229
英国2.0%904
アメリカ2.6%3,585
合計5.0%25,795
(単位:百万ドル(約束額ベース))

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