水銀除去する日本の技術、水俣条約を機に世界へ
- (1/3ページ)
- 2014/1/23 7:00
- 2013年10月、水銀の製造から利用・廃棄までを包括的に規制する「水銀に関する水俣条約(水俣条約)」が採択された。水俣条約は、50カ国が批准してから90日後に発効する。条約の締約国は、2020年に水銀含有製品の製造や輸出入が原則として禁止される。
条約採択の背景には、途上国で発生している深刻な水銀汚染がある。小規模な金採掘での水銀利用や、火力発電所の排ガス、工場排水などに含まれる水銀が環境汚染をもたらしており、排出源の近隣や下流域の住民が健康被害を訴えるケースが増えている。
水銀は常温で液体となる唯一の金属元素である。揮発性が高く水や大気を媒介にして世界を循環する。国を超えて生物の体内に蓄積し、人間にも悪影響を及ぼしかねない。
日本政府は水俣条約の採択に当たり、途上国の水銀汚染対策として今後3年間で約20億ドル(約2000億円)の支援を表明した。製品中の水銀を削減する技術や、水銀のリサイクル技術などを海外展開する方針も示した。
日本が培ってきた水銀関連技術をインフラ輸出につなげる狙いもある。水銀低減・除去技術を持つ企業にしてみれば、世界の環境問題の解決に貢献できるとともに、成長や海外展開につながる機会になる。
日本国内における水銀の用途
■少ない量でも長寿命の蛍光灯
日本の水銀利用は年間約8トン(t)である。そのうち約4割と最も多く使われているのが、蛍光灯をはじめとする照明類である。2012年に国内で生産された蛍光灯は約2億本。近年はLED(発光ダイオード)照明が普及しつつあるが、生産本数から見れば蛍光灯がまだ主流である。
水俣条約では、一般照明用の蛍光灯に封入する水銀の上限量を5ミリグラム(mg)に定めた。2020年以降、この上限を超える水銀を使った蛍光灯の製造や輸出入は禁止となる。
蛍光灯の中では、封入された水銀原子に電子がぶつかっている。このとき発生する紫外線を、管内に塗られた蛍光物質が受けて発光する。水銀の封入量が多いほど蛍光灯の発光時間は長くなる。封入量を抑えながら、発光時間をいかに長く保てるかが技術開発のポイントになる。
関連キーワード
水俣条約、水銀、東芝ライテック、三菱重工業、野村興産
化学物質規制、アジアに拡大 見えにくい運用実態(2013/9/1 7:00)
水俣病の悲劇を繰り返さないために(2013/12/2 3:30)
「水俣条約」を採択 水銀の排出・輸出入など規制(2013/10/10 11:52更新)
途上国では水銀汚染拡大 採掘現場の規制で課題も(2013/10/10 11:35)
異常気象に負けない ブドウ、コメ、ダム…「適応策」を急げ(2013/12/21 7:00)