住民監査請求(災害廃棄物の広域処理3)監査結果について(概要)
2 地方自治法法第242条の要件に係る判断
・ 法第242条に定める住民監査請求においては、本市職員等による個別具体的に特定された財務会計上の行為又は怠る事実(以下「当該行為等」という。)について、違法不当性が主観的に思料されるだけでなく、具体的な理由により、当該行為等が法令に違反し、又は行政目的上不当である旨を摘示して初めて請求の要件を満たすものとされ、請求人において違法事由を他の違法事由から区別して特定認識できるように個別的、具体的に主張し、これらを証する書面を添えて請求をする必要があるとされ、監査請求書及び事実証明書の各記載、監査請求人が提出したその他の資料等を総合しても、監査請求の対象が上記の程度に具体的に摘示されていないと認められるときは、当該監査請求は、請求の特定等を欠くものとして不適法であり、監査委員は監査する義務を負わないとされている。
・ また、たとえ違法不当があるとしても、市に損害をもたらさないものは住民監査請求の対象にはならないとされている。
・ 以下、本件請求において請求人が主張している点について検討する。
・ 請求人は、岩手県が大阪府に委託した災害廃棄物処理業務のうち、大阪府が災害廃棄物の焼却業務及びその焼却灰の埋め立て処分業務を本市に再委託し、本市が焼却残滓処分業務及び焼却灰の運搬業務並びに焼却灰の埋め立て処分業務を民間業者に委託していることが、禁止されるべき再々委託にあたり、違法な契約締結である旨主張する。
・ しかしながら、本市の業務委託が再々委託にあたるか否かについて、平成23年7月に環境省が示した「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令等の施行について」における再委託の特例措置の考え方に関って、環境省は、本市からの文書照会に対して、本市の業務委託が禁止されるべき再々委託にあたらない旨の見解を示しており、請求人の主張は、違法をいう前提を欠くものと言うべきである。
・ また、請求人は、岩手県、大阪府及び本市の三者間の基本合意に基づく災害廃棄物処理について、国からの交付金を得ることができないこととなる蓋然性が高いとして、市に損害が発生する可能性のあるような府と市の間の契約を中止するよう独自の見解に基づき主張するが、住民監査請求の対象となり得る契約の締結若しくは履行という財務会計上の行為に固有の違法性を主張するものではない。
・ さらに、そもそも三者間の基本合意書により、廃棄物処理等に要する費用は岩手県が負担することとなっており、基本的に本市に負担が発生する関係にはなっていないのであるから、本市の損害発生の可能性について具体的に摘示しているとは言えない。
・ そうすると、本件請求は、法第242条の要件を満たさないものと判断せざるを得ない。
・ また、請求人は、本件請求について、監査委員監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求め、その理由として、これまでに提出した監査請求の却下理由に異論があることを挙げているが、もとより監査委員は、常に公正不偏の態度を保持して、監査を行う義務があるのであって、法に基づき、定められた手続に則り、法律上の要件に照らして適正に審査を行うものであり、請求人の求めは相当とは認められない旨思料するので、この際あえて付言する。
第十節 住民による監査請求及び訴訟
第二百四十二条
普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担があると認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3 第一項の規定による請求があつた場合において、当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があり、当該行為により当該普通地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、当該行為を停止することによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるときは、監査委員は、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関又は職員に対し、理由を付して次項の手続が終了するまでの間当該行為を停止すべきことを勧告することができる。この場合においては、監査委員は、当該勧告の内容を第一項の規定による請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。
4 第一項の規定による請求があつた場合においては、監査委員は、監査を行い、請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表し、請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。
5 前項の規定による監査委員の監査及び勧告は、第一項の規定による請求があつた日から六十日以内にこれを行なわなければならない。
6 監査委員は、第四項の規定による監査を行うに当たつては、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない。
7 監査委員は、前項の規定による陳述の聴取を行う場合又は関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員の陳述の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員又は請求人を立ち会わせることができる。
8 第三項の規定による勧告並びに第四項の規定による監査及び勧告についての決定は、監査委員の合議によるものとする。
9 第四項の規定による監査委員の勧告があつたときは、当該勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講ずるとともに、その旨を監査委員に通知しなければならない。この場合においては、監査委員は、当該通知に係る事項を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。