Quantcast
Channel: 持続可能な開発(水・土・廃棄物)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2268

東京直下型大地震(南関東大地震)の特殊性と高いリスク

$
0
0
 
 
 
 

概要

日本列島周辺のプレートの分布
南関東の衛星画像
 
 相模湾においては、フィリピン海プレートが陸のプレート(北アメリカプレート)の下に沈み込んでいて、相模湾西部から房総半島南方30kmを通り三宅島東方200km付近までは海底の谷状地形が続くプレート境界「相模トラフ」を形成している。
 この相模トラフの北側の幅80km - 150kmの領域を震源域として、1703年12月31日元禄16年11月23日)の元禄地震(M8.1)、1923年大正12年)9月1日の関東地震(関東大震災)(M7.9)などのマグニチュード8級の巨大地震が推定200 - 400年間隔で発生していて、これらを総称して関東地震と呼ぶ。
 
 これに対して、相模トラフから前述よりさらに北側をも含めた関東地方南部のいずれかの地域を震源域として、ひとまわり規模が小さいマグニチュード7級の地震が数十年間隔で何度も発生している。1855年11月11日安政2年10月2日)の安政江戸地震(M6.9)、1894年明治27年)6月20日明治東京地震(M7.0)などが発生していて、これらを総称して南関東直下地震と呼ぶ。
 地震のタイプとしては内陸地殻内地震(直下型地震)に限らず、プレート間地震(海溝型地震)、スラブ内地震も想定される(詳細は後述)。なお、 明治東京地震の震源は相模トラフより北側の東京湾北部となっており、安政江戸地震の震源も断定はされていないが同様の地域と考えられている。また、震源が海底ではないため、緊急地震速報S波の到達まで間に合わない可能性があると予想されている。
 
 

南関東の特殊性と高いリスク

増幅率の低い(地盤の強い)駅 増幅率の高い(地盤の弱い)駅順位 駅名 増幅率 順位 駅名 増幅率
山手線内側の鉄道主要駅の地震増幅率[3]
1位東新宿駅1.311位秋葉原駅1.85
1位代々木駅1.311位水道橋駅1.85
3位池袋駅1.323位浜松町駅1.74
4位新宿駅1.334位東京駅1.74
5位四ッ谷駅1.345位神田駅1.69
 
 マグニチュード7級の地震が時折発生するという点では、南関東も日本の他の地域も同様である。
 しかし、南関東では以下のような理由により地震の頻度が高く、また被害の程度が顕著になると想定されることから、地震学地質学の研究においても防災の観点においても注目され、重要視されている。
 まず、関東地方には日本の他の地域と同様に地表近くに活断層が存在すると同時に、地下では相模トラフ付近だけではなく、群馬県南部・栃木県南部までプレートの境界が存在し、そこでも地震が発生する。北関東では震源が深いため揺れが減衰されるが、南関東では震源が浅いため強い揺れが起こる。しかも、南関東では地表を覆う大陸プレート(北アメリカプレート, NA)の下に南から海洋プレート(フィリピン海プレート, PH)が沈み込み、さらにその下に東から海洋プレート(太平洋プレート, PA)が沈み込んでいる複雑な構造であり、プレート間の相対運動速度はNA-PH間4 - 5cm/年・NA-PA間8 - 10cm/年と世界的にも比較的速いため、必然的に地震の確率は高くなる。
 
 また、関東平野は埼玉北部・東部、東京東部、神奈川東部、千葉北部・中部、茨城南部まで広がっており、第四紀以降の堆積物に厚く覆われていて(最も深い東京湾付近で3,000m程度)揺れが反射・増幅されやすく、政府発表の「表層地盤のゆれやすさ全国マップ」(2005年)においても南関東の大部分が揺れやすい地域とされている。特に、東京湾岸や荒川利根川流域などは揺れの増幅率(表層地盤増幅率)が高い地域に分類されており、都心部でも東側は地盤が弱い(表参照)。
 
 南関東直下地震は、M8クラスの関東地震東海地震に比べれば想定される震災被害の範囲は小さいが、プレート間地震が内陸で起こる「直下型」であるため震源付近では甚大な被害が発生すると考えられる。
 
 世界最大の再保険会社であるミュンヘン再保険英語版が2002年に発表した、大規模地震が起きた場合の経済的影響度を含めた世界主要都市の自然災害の危険度ランキングでは、東京・横浜が710ポイントと1位で、167ポイントで2位のサンフランシスコと大差がつき、首都圏での震災を含めた災害リスクの高さが表れている。
 
  現在、国内主要企業の本社のほとんどが集中する経済の中心地、また国会中央省庁が集まる政治の中心地ゆえ、直下型地震によって経済活動や国家安全保障に甚大な被害を及ぼす事態も予想されている。
 また、周辺を含めた首都圏にも横浜市川崎市相模原市千葉市さいたま市などの大都市があり全体的に人口密度が高く、京浜工業地帯京葉工業地域鹿島臨海工業地帯などの工業地域横浜港川崎港千葉港などの重要港湾機能がある。このように人口や機能の集中する首都圏において大地震が発生し、その機能が麻痺状態に陥った場合のリスクは極めて高いものと想定されており、これが他地方への首都機能移転を主張する意見の一根拠にも用いられている。
 
 首都近郊での大地震は近代より注目されている。地震学者今村明恒は、1891年濃尾地震を受けて設置された震災予防調査会がまとめた地震記録から関東地方の地震の周期性を見出し、「50年以内に東京で大地震が発生する」という趣旨の雑誌寄稿を1905年に行った。これは社会問題化したがやがて批判へと変わり、地震への警鐘は一時的なものとなってしまった。
 その後1921年、1922年とM7級の地震が発生するなど南関東で中規模地震が多発する中、1923年にM7.9の関東地震が発生し甚大な被害をもたらした。戦後、河角廣が発表した「南関東大地震69年周説」は1978年 - 2004年の間に南関東で再び大地震が発生するというもので再び大きく取り上げられたが、これは鎌倉における古地震の記録をもとにしたもので地震の震源域や規模が明確ではなく、関東地震の周期性も解明されたことから後に否定された。
 
 
 

地震名震央深さ規模被害
寛永小田原地震1633年相模湾西部(小田原市沖)不明7.0死者150名、負傷者多数
元禄関東地震1703年野島崎23km[注 3]8.1-8.4死者1万余名、負傷者多数
天明小田原地震1782年神奈川県西部不明7.0死者、負傷者あり
嘉永小田原地震1853年神奈川県西部不明6.7死者100名、負傷者多数
安政江戸地震1855年東京湾周辺不明、諸説有6.9-7.4死者7444名-1万名、負傷者多数
(新島・神津島近海の地震)1890年新島・神津島近海30km以浅6.8負傷者1名
(山梨県東部の地震)1891年山梨県東部30km以浅6.5負傷者1名
明治東京地震1894年東京湾付近(荒川河口付近)80km程度7.0死者31名、負傷者197名
(東京湾付近の地震)1894年東京湾付近(中央防波堤付近)80km以深

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2268

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>