物質が循環する社会の構築に向けた取組~第3次循環型社会形成推進基本計画の策定~
(1)循環型社会形成に向けた取組の現状と課題
1の(1)でみたように、大量生産、大量消費、大量廃棄型の問題の根本的な解決を図るためには、これまでの社会のあり方や国民のライフスタイルを見直していく必要があります。
このような認識に立ち、平成12年には、廃棄物・リサイクル対策の基本法である循環型社会形成推進基本法が立法化されました。我が国では、この循環型社会形成推進基本法に基づき策定した循環型社会形成推進基本計画に基づき、関連する施策を政府一体となって推進しています。
この10年間の循環型社会づくりの進捗状況を簡単にまとめたのが図2-5-8です。
資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)は、一定量当たりの天然資源等投入量から生み出される実質国内総生産(実質GDP)を算出することによって、産業や人々の生活がいかに物を有効に使っているかを総合的に表す指標です。
循環利用率(=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量))は、経済社会に投入されるものの全体量のうち循環利用量(再使用・再生利用量)の占める割合を表す指標です。
最終処分量は、廃棄物の埋立量であり、廃棄物の最終処分場の確保という課題に直結した指標です。
これら3指標は、循環型社会形成推進基本計画における主要な目標指標となっています。近年、これらの指標はいずれも大きく改善しており、循環利用率と最終処分量は第2次循環型社会形成推進基本計画で定めた目標(循環利用率14~15%、最終処分量23百万トン)を達成しました。特に、国土の狭い我が国にとってその削減が長年の大きな課題であった最終処分量は、平成12年の56百万tから平成22年の19百万tへと大幅に削減されました。発生すると大きな社会問題となる不法投棄も大きく減少しました。
しかしながら、すべての取組が順風満帆に進んでいるわけではありません。資源生産性の分母となる天然資源等投入量の内訳を見ると、平成12年から22年にかけて、公共事業の減少等によって土石資源の投入量が11億tから5億tへと半減以下となっているのに対し、金属資源は横ばいになっています。資源生産性や循環利用率の向上は、この土石資源の減少が大きな要因となっています。他方で、節約やリサイクルをより進めていくべき枯渇性資源である金属資源の3Rに関する取組はいまだ不十分な状況にあります。
途上国の経済発展により、鉄スクラップ、古紙などの循環資源の輸出も急増しています。グローバルな観点でのリサイクルももちろん重要ですが、資源が少ない我が国にとっては、国内で循環資源を有効活用できず、貴重な資源が海外に流出してしまっているという側面も重視する必要があります。
上記のように、最終処分量は大幅に減少し、循環利用量も増加していますが、廃棄物の発生量は微減となっています。これは、リサイクル・中間処理・減容化の取組は大きく前進したものの、廃棄物自体の発生・排出の抑制はそれ程大きくは進んでいないことをあらわしています。
容器包装の分野では、ペットボトルのリサイクル量は増加していますが、ペットボトル自体の使用量も増加しています。他方で、一般的にワンワェイ容器よりも環境負荷が小さい繰り返し使えるリターナブルびんの使用量は大きく減少しています。
これらに加えて、東日本大震災で発生した大量の災害廃棄物の処理が大きな社会問題となり、大規模災害発生時においても円滑に廃棄物を処理できる体制を平素から築いておくことの重要性が改めて浮き彫りとなりました。特に、焼却灰や不燃残渣の最終処分先が大きな課題となりました。
最終処分量の減少に伴い自治体の最終処分場の残余年数は年々増加していますが、316もの市町村が最終処分場を有していないなど、むしろ最終処分場の確保が強く求められる状況です。また、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、安全・安心をしっかりと確保した上で循環資源の利用を行うことが今まで以上に求められるようになっています。
世界に目を向けると、20世紀はまさに発展の世紀でした。技術進歩と人口増加、経済成長を原動力に、世界全体でGDPが23倍に増大した一方で、資源の年間採取量は建設用鉱物が34倍、鉱石・鉱物が27倍、化石燃料が12倍、バイオマスが3.6倍となり、総物質採取量は約8倍となりました(出典:UNEP)。
このように拡大した物質消費は各国間で公平には分配されず、環境にもさまざまな影響を及ぼしてきました。今後、途上国を中心として一層の人口増加が見込まれる中で、より多くの人々の生活の豊かさを実現するためには、資源消費と比例関係にある経済成長を切り離し、人口一人当たりの環境負荷を低減させていく必要があります。
UNEPが設立した持続可能な資源管理に関する国際パネルは、先進国が現状の1人当たり資源消費量を維持し、途上国が先進国と同水準に消費量を高めた場合、2050年(平成62年)までに世界の年間資源採取量は現状の3倍になるとしています。
また、先進国が1人当たり資源消費量を半分に減らしたとしても、途上国が先進工業国と同水準に消費量を高めた場合、2050年(平成62年)までに世界の年間資源採取量は現状から40%増加するとしています。さらに、人口増加と経済開発に伴って、資源利用が急増し、それに対応する十分な量を確保できない天然資源が増えていること、近い将来に決定的に不足するおそれのある資源があること、それらの採掘される天然資源の品位低下がすでにあらわれていることを重視し、資源利用量や廃棄物を減らすことの重要性を指摘しています。
政府は、これらのさまざまな情勢変化に的確に対処し、社会を構成する各主体との連携の下で、国内外における循環型社会の形成を政府全体で一体的に実行していくため、平成25年5月に第三次循環型社会形成推進基本計画を新たに定めました。
以下では、第三次循環型社会形成推進基本計画の中で大きな政策課題とされている5つの分野
([1]2Rの推進、
[2]循環資源の高度利用と資源確保、
[3]低炭素社会、自然共生社会づくりとの統合的取組と地域循環圏の高度化、
[4]循環資源・バイオマス資源のエネルギー源への利用、
[5]国際的取組の推進)に焦点を当て、
それらの現況と取組の方向性について概観していきます。
(2)リサイクルだけではなく、2Rの取組がより進む社会経済システムの構築
循環型社会形成推進基本法では、廃棄物等について、
[1]リデュース(発生抑制)、
[2]リユース(再使用)、
[3]リサイクル(再生利用)、
[4]熱回収、
[5]適正処分
の順に従って、対策を進めることを原則としています。
廃棄物等は、いったん発生してしまえば、資源として循環的な利用を行う場合であっても少なからず環境への負荷を生じさせます。このため、優先順位の第一として、廃棄物等を発生させない(削減する)リデュースを定めています。
リユースは、いったん使用された製品、部品、容器等を再び使用することです。形状を維持したまま使用することから、一般的に資源の滅失が少なく、また、その過程から発生する廃棄物等の量も少なくなることから、リサイクルよりも対策の優先順位が高く位置付けられています(図2-5-9参照)。
しかし、リデュース・リユース(2R)は、リサイクルよりも優先順位が高いにもかかわらず、レジ袋の辞退率の向上や詰替製品の出荷率の向上などを除き、その取組が十分に進んでいるとは言えません。
廃棄物等の発生量のうちリサイクルされたものの割合(リサイクル率)は、平成2年から平成22年の20年間で約30%から約40%へと大きく上昇しましたが、廃棄物等の発生量は同じ期間で5億8,684万トンから5億6,709万トンへと3%しか削減できていません。
我が国では、年間約1,700万トン(平成22年度推計)の食品廃棄物が排出されていますが、このうち、食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は年間約500~800万トンにものぼると推計されています(平成23年度食品循環資源の再生利用等実態調査報告(平成22年度実績)等を基に農水省において試算)。これは、我が国における米の年間収穫量約800万トンにも匹敵する量です。食品ロスは事業所のほか家庭でも多く発生しており、国民一人当たりの家庭における食品ロス量は一年間で約15キログラムになると試算されています。
環境省・農林水産省では、平成24年4月から食品廃棄物の発生抑制の重要性が高い業種について、食品リサイクル法に基づく「発生抑制の目標値」を設定し、返品などの商習慣をフードチェーン全体で話し合うよう働きかけるなど食品ロスの削減の推進を図っています。そもそも食品ロスを発生させる要因の一つとして、消費者の過度な鮮度志向があるのではないかといわれており、消費者の意識改革もあわせて実施していく必要があることから、関係府省庁が連携して食品ロス削減に向けた取組を推進していくこととしています。
リユースの取組では、繰り返し使えるリターナブルびんの使用の減少傾向が続いています。昭和時代、毎朝飲む牛乳は牛乳びんで各家庭に配達され、飲み終わったびんは配達員によって回収され再び使用されていました。家で飲むお酒は一升瓶やビール瓶で、酒屋さんに空瓶を持って行くと5円をもらえメーカーが引き取った空瓶は再使用されていました。
今では、手軽に使える利便性から、牛乳は紙パックが、ビールはアルミ缶が、清酒はリターナブルびんではなく一度使ったら廃棄するワンワェイびんが、それぞれ主流になってきています。
環境省では、びんリユースシステムを構築するための地域の取組を実証事業として支援しています。平成24年度の実証事業は4地域で実施しましたが、そのうち奈良県では、県内で栽培されている日本茶銘柄「大和茶」の飲料容器としてリターナブルびんを用いる取組を行いました。この取組では、リユースの環境的意義を発信するため、びんのデザインのコンペティションを実施したり、市役所、県庁、旅館・ホテルと連携して販売・回収する仕組みを構築したりする工夫が行われています。
中古住宅ストックを最大限に活用することも大きな課題です。住宅流通市場に占める中古住宅のシェアを見ると、日本は13.5%、アメリカは90.3%、英国は85.8%、フランスは64.0%となっており、我が国では中古住宅を購入する人が欧米に比べ圧倒的に少ない状況にあります(日本:住宅・土地統計調査(平成20年)(総務省)、住宅着工統計(平成20年)(国土交通省)、アメリカ:「The 2011 Statistical Abstract」(データは平成21年)、英国:コミュニティ・地方政府省(平成21年)、フランス:運輸・設備・観光・海洋省(平成20年)。我が国では、住宅ストック数が平成20年時点で約5,760万戸となり、世帯数(約5,000万世帯)を上回り量的充足が進んでいることなどから、「住宅をつくっては壊す」社会から、「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」ストック循環型のシステムを構築していく必要があります。
中古住宅流通市場については、「新築の方が気持ちがいい」といった高い新築志向のほか、中古住宅の質に対する不安や中古住宅が適切に評価されないなどといった課題があります。とりわけ、日本では住宅の築年数が古くなれば価格が下がる傾向にありますが、英国では第2次世界大戦前に建てられた住宅が近年建てられた住宅と同等かそれ以上の価格で取引されており、築年数と価格に相関関係は見られません(表2-5-1参照)。これは、個々人の意識のほか、ヨーロッパでは、建物の外観が街の景観として、半ば公共のものとみなされる文化が根付いていることも強く影響していると考えられます。
近年は、リフォーム技術の高まりにより、内外装とも新築と同程度まで綺麗にすることも容易になっています(写真2-5-3参照)。リフォームは、資源の節減や廃棄物の削減といった環境面以外にも、費用が建て替えよりも一般的に安くなる、工事期間が短い、各種税金が軽減できる等のメリットもあります(表2-5-2)。
日本人は購入時には外見・内装等に神経質なものの、購入後のリフォームは「壊れたらする程度」なのが現状ですが、欧州では古い住宅にこそ価値を見いだしており、デザイン性や見た目をよくするために入居後に複数回のリフォームを実施するのが一般的です。我が国も、短い周期で建物を壊し新たな建物を建てるのではなく、古いものに価値を見いだし長く建物を使い続ける方向へと大きく転換させていく必要があるのではないでしょうか。
このように、2Rの取組について新たな動きが広がっていることも踏まえ、第3次循環型社会形成推進基本計画では、
[1]国民・事業者が行うべき具体的な2Rの取組を制度的に位置付ける検討、
[2]リユース品の性能保証など消費者が安心してリユース品を利用できるような環境整備、
[3]長期優良住宅認定制度の運用、認定長期優良住宅に対する税制上の特例措置の活用促進
などの施策が盛り込まれています。
3R行動の環境負荷削減効果を見える化!
3Rの取組を進めるためには、その行動の効果を「見える化」することが重要です。
このため、環境省では、食品トレーなし販売、マイボトルの使用、ペットボトルのリサイクルなど、25種類の3R行動による環境負荷削減効果を定量的・簡易に計算できる「3R行動見える化ツール」を開発しました。このツールは実施した行動の回数や回収した容器の重量等を入力するだけで利用できる簡単な計算ツールで、環境省のホームページから誰でも無料で利用することができます(URL:http://www.env.go.jp/recycle/circul/(別ウィンドウ))。
例えば、Lサイズのレジ袋を1枚削減すると、6.8gの廃棄物、製造する際に原料や燃料として使用した10mlの原油、製造・処分する過程で排出される31gの二酸化炭素を削減できるといったデータがツールに組み込まれています。このため、あるスーパーで1年間に50万枚のレジ袋を削減できたとすると、50万という数字を入力するだけで廃棄物3.4トン、原油5kl、二酸化炭素15.6tもの環境負荷を削減できたといった具体的効果がすぐにわかるようになっています。
3R行動見える化ツールは、店舗におけるペットボトル等の回収の効果の提示(店舗や消費者の取組効果のPR)、軽量容器製品などのプライベートブランド商品の販売促進、事業者の環境貢献のPR、事業者と消費者の共同的取組、地域の環境教育などさまざまなことに活用することが可能です。
3Rの取組は、利便性の低下を招いたり、分別や回収などの手間がかかるものが大半です。皆さんも、自分たちが何となく環境にやさしいだろうということで実践している(これから、実践しようとしている)エコ活動の環境への具体的な貢献効果が分かれば、取組のモチベーションが上がりませんか?
レジ袋がない食品小売店
日常生活で多量に消費され、わずかな使用時間でごみとして廃棄されてしまうことの多いものとして、レジ袋があります。例えば、家から徒歩10分の位置にあるスーパーで食品を購入する際にレジ袋をもらった場合、レジ袋としての利用時間は10分間に過ぎません。さらに、オフィスビルにコンビニやお弁当屋さんが入っている場合には、建物の中の移動に要する数分間の利用で捨てられてしまうレジ袋もたくさんあります。
レジ袋は枯渇性資源である石油製品を原料としており、ごみとして出された場合にはそれを処理する際にもエネルギーやコストがかかります。レジ袋を使わずに買い物をすれば、無駄なごみの削減、資源の節約、二酸化炭素の削減につながり、環境に貢献できるのです。
現在、レジ袋を削減するため、マイバッグ持参運動や、レジ袋の有料化などの取組が各地で行われていますが、さらに進んだ取組として、レジ袋をお店に置かず(有料での販売も行わない)マイバッグ持参率100%を維持し続けている生協があります。
甲府市にある市民生協やまなしちづか店では、店舗でのお知らせチラシ配布と声がけ、組合員から寄付されたレンタルバッグの無料レンタル、生協新規加入者へのオリジナルマイバッグプレゼントなどさまざまな普及啓発活動を行い、2008年から、レジ袋を原則お店に置かず、利用者にマイバッグの持参を呼びかける取組を継続して実施しています。
同店では、取組を始めた当初は、「お金を出すからどうかレジ袋を売って欲しい」という来店客も居たそうですが、取組の趣旨を説明することで納得したそうで、レジ袋を置かないことによる大きなトラブルや来店客の減少は確認されていません。
山梨県は自動車に乗って買い物をする人の割合が高いという事情もありますが、お店側と利用者が環境のことを考え、本気で取り組んだことにより実現した、素晴らしい成功事例と言えます。
(3)循環資源の高度利用と資源確保
現在、我が国の国内では、金属資源はほとんど採掘されておらず、ほぼ全量海外の鉱山に頼っています。金属資源は海外でも採掘することのできる場所は限られており、採掘できる生産量にも限りがあります。米国地質調査所は、現在確認されている全世界の鉱山の2010年(平成22年)時点での年間生産量で埋蔵量を割った可採年数は、鉄鉱66年、銅鉱40年、鉛鉱21年、亜鉛鉱21年になると試算しています。
また、これまでの間に採掘した資源の量(地上資源)と現時点で確認されている今後採掘可能な鉱山の埋蔵量(地下資源)を比較すると、すでに金や銀については、地下資源よりも地上資源の方が多くなっています(図2-5-10)。
鉱物資源の品位低下も進んでいます。品位とは、採掘される鉱石に含まれる金属資源の量であり、一般に採掘される鉱物資源の品位は、地表部分で採掘されるものよりも、深層部で採掘されるものの方が低い傾向にあります。
既存鉱山の採掘が進んだ結果、近年は、深層部で採掘するケースが増加しており、我が国に輸入される銅鉱石の品位は、平成13年の32.5%から、平成20年の29.0%に低下しています。鉱物資源の品位の低下は、生産コストの上昇を招くほか、精製に必要となるエネルギーや不純物の増加に伴う環境への影響も懸念されています。
金属資源の需要構造も近年、大きく変容しています。これまでそれほど多くの資源を消費してこなかった中国など途上国の経済発展により、世界的に需要量が増加しています。
こうした需給要因を背景に、近年、金属資源の価格は上昇しています(図2-5-11)。
UNEPが設立した持続可能な資源管理に関する国際パネルは、これまでの世界の経済成長は安価な資源に支えられてきたものの、近年の資源価格は逆に上昇しており、今後はより効率的に資源を利用するため、持続可能性を持ったシステム・技術の革新を速やかに成し遂げる必要があるとのレポートを出しています。
途上国の経済発展や人口増加が予想される中で、50年後、100年後といった長期的な視点で考えた場合、将来にわたって、現在のように大量の天然資源を使い続けることができる保障はないのです。
金属資源を採掘するための鉱山開発は、適切な環境配慮がなされない場合には、樹木の伐採による生態系の破壊や、掘削により発生した土石や重金属の不適切な処理による水質汚濁など、生活環境や生物多様性、自然環境にさまざまな影響を及ぼすおそれがあります。我々は、資源採掘国において、このように多くの環境負荷を与えているおそれがあることをしっかりと認識していく必要があります。
資源の採取・採掘に当たっては、最終的に使用される金属だけではなく、大量の鉱石・土砂等が掘り起こされています。そういった付随して発生する鉱石・土砂等の「隠れたフロー」を含めた、当該物質の採取・採掘に関与した物質の総量をあらわすのが、関与物質総量(TMR)です。プラチナや金などの希少金属は、例え製品中にはわずかしか使われていないとしても、採掘現場ではその何十万倍もの採掘資源を掘り起こしています(図2-5-12)。独立行政法人物質・材料研究機構の試算によると、1gの金属資源を採取するのに必要な関与物質総量は、鉄が約8gなのに対し、銅は約360g、銀は約4.8kg、プラチナは約520kg、金は約1.1tにもなります。
これまでは、こういったTMR係数の高い金属資源の用途は装飾用など限定的なものでしたが、近年、燃料電池や高性能モーターなどに使われるTMR係数の高いレアメタル(パラジウム、ネオジウム、ジスプロジウム等)の量が増えてきています。
鉄や銅といったベースメタルのリサイクルももちろん重要ですが、海外における環境負荷にも目を向け、TMR係数の高い金属資源のリサイクルも積極的に進めていく必要があります。
このように、世界的に資源確保の重要性が高まる中、我が国の国内に存在する使用済製品からの有用金属回収に注目が集まっています。
独立行政法人物質・材料研究機構では、地上資源として、我が国にどれだけの金属資源が存在するのか、推計する研究が行われています。その推計結果によれば、我が国に蓄積されている金属資源(地上資源)の量は、鉄12億トン、銅3,800万トン、金6,800トン、レアメタルであるタンタル4,400トン、リチウム15万トンとなっています(図2-5-13)。これを、世界全体の現埋蔵量に占める割合で考えると、鉄1.62%、銅8.06%、銀22.42%、金16.36%、タンタル10.41%、リチウム3.83%となります(図2-5-13)。この数値には、現在まだ使用中の製品など直ちに資源を回収することができないものも多く含まれていますが、総量として、我が国に眠っている地上資源は、海外の大鉱山に匹敵する大きなポテンシャルを有していると言えます。
我々は、これらの大量の埋蔵資源について、どの程度有効活用できているのでしょうか。
平成21年に再生利用されずに処分場に埋め立てられた金属系廃棄物の量は、一般廃棄物で約53万トン(発生量の約34%)、産業廃棄物で約23万トン(発生量の約3%)となっています。
このほか、使われないまま家庭で保管(退蔵)されている製品も相当数あり、使用済みとなった製品のうち退蔵されている製品の率(退蔵率)をみると、携帯電話(約5割)、ビデオ・DVDプレイヤー(約3割)、携帯音楽プレイヤー(約4割)といった小型電子機器が高いとの調査結果も出ています(環境省調べ)。
資源別に見ると、鉄、アルミニウムのように量が多く単一素材に区分しやすい金属資源は比較的リサイクルが進んでいますが、選別や精錬により分離することが必要となる、それ以外の金属資源の多くは埋立処分されてしまっています。
これらを踏まえ、政府は、いまだ不十分な状況にある使用済製品からの有用金属の回収を加速化させるため、小型家電を対象とした新たなリサイクル制度(使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律)を平成25年4月からスタートさせました。
この制度に基づく使用済小型電子機器等の回収方法は、ボックス回収、ステーション回収、ピックアップ回収等の中から地域の実情に応じて市町村が任意に選択します。市町村が回収した使用済小型電子機器等は、環境大臣及び経済産業大臣の認定を受けた事業者(認定事業者)等に引き渡され、有用金属の回収・リサイクルが行われます。安定的なリサイクルを行う観点から、認定事業者は、市町村から引取りを行うことを求められた際には、正当な理由がない限り、これに応じる義務があります。認定事業者が使用済小型電子機器等の収集・運搬を行おうとするときは、廃棄物処理法に基づく許可が不要となる特例も設けています。
環境省では、1年間で使用済みとなり廃棄等が行われる小型家電は65.1万トンであり、そのうち有用金属は、27.9万トン(金額換算すると844億円)になると推計しています。例えば、一般的に、携帯電話の本体(140g)には金が48mg(200円相当)程度含まれていますが、これは、鉱山で土砂52.8kgを採掘して得られる資源の量に匹敵します。現段階では、基板からの資源回収についてはさまざまな技術上の課題がありますが、仮に平成23年に我が国で排出された使用済携帯電話約4,000万台のすべてから金の回収ができたと仮定すると、重量にして約2t、金額換算にして約80億円分の金が資源として再利用できたことになります。
上記の状況を踏まえ、第3次循環型社会形成推進基本計画には、使用済製品に含まれる有用金属のさらなる利用促進を図り、資源確保と天然資源の消費の抑制に資するため、
[1]小型家電リサイクル制度の参加、回収率の向上に向けた地方公共団体への支援、
[2]原材料の表示、部品のユニット化等の製品設計段階の取組促進、
[3]新技術の研究・開発支援などの施策が盛り込まれています。
希少金属を含む使用済蓄電池を有効活用!
ハイブリッド車や電気自動車の普及に伴い、それらの蓄電池として使われているニッケル水素電池や、リチウムイオン電池が今後、使用済部品として大量に発生することが見込まれています。
ニッケル水素電池やリチウムイオン電池には、さまざまな希少金属が使われていますので、資源の有効活用の観点から再使用・再生利用を図っていくことが極めて重要となります。
今後の発生量の急激な増加を見据えた民間事業者による再使用・再生利用の取組はすでに始まっています。
トヨタ自動車株式会社は、ハイブリッド車用の使用済みニッケル水素電池をリユースした定置型蓄電システムをLED照明、高効率空調及びそれらを制御するエネルギーマネジメントシステムと併せ、自社系列の自動車販売店向けに提案しています。同社では、実証実験の結果、1店舗当たりのエネルギー使用量を従来型の店舗と比較して半減できることが確認されたと発表しています。
リサイクルの高度化も進んでいます。これまで、ニッケル水素電池のリサイクル時には主原料であるニッケルの抽出・リサイクルは行われていましたが、その他の希少金属のリサイクルはほとんど行われていませんでした。本田技研工業株式会社と日本重化学工業株式会社は、経済産業省の支援を得て、ハイブリッド車用のニッケル水素電池から、実用可能なレベルのレアアース抽出に世界で初めて成功しました。抽出したレアアースの純度は、鉱山で採掘され通常取引されるものと同等の99%以上という高品質を誇っており、そのままバッテリーの負極材に使用することが可能です。
我が国は、地下資源をほとんど持たない国ですが、希少金属などの貴重な地上資源を有効活用する分野では先頭を走り続けています。
リサイクル材を使用したおもちゃによる環境教育の発信
最近は、リサイクル材料を使用したさまざまな種類の商品を見かけるようになりましたが、「おもちゃ」についてはなかなかありませんでした。子供が口に含み得る商品であるからこそ、安全基準などのさまざまな観点から、「リサイクル材料を使用するのは不向き」と思われてきた分野だからです。そんな中で、平成24年7月、リサイクル材料を半分以上使用し"おもちゃ初"となるエコマークを取得した商品が店頭に並びました。
これは、おもちゃ会社の鉄道玩具のレールで、色も従来商品の青色から、環境をイメージした緑色に変更されています。
従来のレールは、ポリプロピレン(PP)というプラスチックを原材料に作られています。エコマークを取得したレールは、従来製品に使われるポリプロピレンに加え、透明フィルム包材(食品用等)の製造過程で発生した端材(ポリプロピレン)をリサイクル原材料として50%混ぜて作られています。これにより、製造から廃棄までに発生する二酸化炭素(CO2)を従来製品比で約1割削減できるといいます。
価格も従来製品と同じであることもあり、環境への意識の高まりからか、購入者からも好評を得ています。
違法ヤードにおける使用済自動車等の不正解体・不正輸出
我が国の自動車は、使用年数がまだ短い状態で中古市場に流通します。これらの中古自動車は経済発展の途上にある国にとっては大変魅力的な商品であり、我が国から、毎年約100万台の中古自動車が海外に輸出されています。
一般的に、途上国に中古自動車を輸出する際には、より多くの自動車を積載するため、コンテナに積み込んで輸出されています。コンテナの積載効率を上げることを目的に、部品を取り外して輸出することも広く行われています。使用済自動車の解体を業として行うためには、自動車リサイクル法に基づく解体業の許可が必要ですが、中には、許可無くエンジンなどの部品を取り外したり、車体を二つに切断したりするといった不正な行為を経て輸出されるケースも確認されています。
これらの不正解体行為の一部は、違法な解体ヤードで行われています。そこでは、周囲が鉄壁や樹木で囲まれ、外から何をやっているのか容易に窺い知れないケースが多くあります。さらに、盗難自動車を海外に輸出する目的で部品に解体したり、麻薬や銃器の取引を行ったりするなどさまざまな不法行為の温床となっている極めて悪質なヤードの存在も確認されています。
警察庁が把握している全国のヤードの数は、平成23年末現在で、約2,000か所にも上ります。ヤード把握数が多いのは、千葉県(約470か所)、埼玉県(約260か所)、愛知県(約180か所)、茨城県(約140か所)等であり、これらの県には、広い土地が安価で賃借できること、幹線道路があるなど輸出アクセスがよいこと、中古自動車のオークション会場が多いことといった特徴が見られます。
使用済自動車や解体自動車が不適正に輸出され、海外で不法投棄される行為が横行すれば、国内で使用済自動車に係る廃棄物の適正な処理と資源の有効活用を図るという、自動車リサイクル法の目的が没却されかねません。
このため、環境省では、違法な解体行為や不正輸出を厳しく取り締まっていく観点から、税関と協力して水際の監視措置を強化しており、千葉県などでは、行政庁と県警が連携し、違反者に対する指導や刑事処分を厳正に行っていく取組が進んでいます。
(4)低炭素社会、自然共生社会づくりとの統合的取組と地域循環圏の高度化
循環型社会づくり、低炭素社会づくり、自然共生社会づくりの取組は、いずれも社会経済システムやライフスタイルの見直しを必要とするものであり、地域レベル、全国レベルでこれら3つの社会づくりの取組を統合的に推進していくことが求められます。
例えば、3Rの取組が進めば、廃棄物の焼却量や埋立量が減少し、廃棄物部門由来の温室効果ガスの排出量も減りますし、バイオマス系循環資源等の原燃料への再資源化や廃棄物発電等への活用が進めば、化石燃料由来の温室効果ガスの排出が抑制されます。
また、化石系資源や鉱物資源の投入量の抑制は、資源採取に伴う生物の生息・生育環境の損失の防止につながりますし、自然界での再生可能なバイオマス系循環資源を活用することで、農地・森林の保全や里地里山の生態系の保全が図られます。
循環型社会の実現のためには、地域の特性・活力を活かし、それぞれの地域において循環型社会を形成していくことも欠かせません。
このため、循環型社会形成推進基本計画では、地域の特性や循環資源の性質に応じて、最適な規模の循環を形成する「地域循環圏」の形成を進めることを大きな課題としています。
地域循環圏の形成を進めていくためには、それぞれの地域の文化等の特性や地域に住む人と人とのつながりに着目し、その構築事例を積み重ねていく必要があります。
例えば、
[1]農山漁村地域で、生ごみの肥飼料化、バイオガス化や木材の有効利用を推進する、
[2]都市・近郊地域で、都市・近郊で排出される食品廃棄物等を農村地域で肥料として利用する都市農村連携やエコタウン、工業地域等との連携を進める、
[3]動脈産業地域で、セメント、鉄鋼等の基幹動脈産業の基盤やインフラをこれまで以上に活用し、循環資源を大量に抱え持つ大都市エリアと連携する、
[4]循環型産業地域で、リサイクル事業者の保有する技術等をより一層高度化させ、動脈産業地域との連動を図る
こと等により、それぞれの地域にあった循環システムを形成することが考えられます(図2-5-14)。
東日本大震災でも見直された地域のきずなと物質循環を連携させて、新しい地域のあり方を組み立てていくことも大きな課題です。環境省では、東北地方で日常的に発生する循環資源を最大限活用しつつ、循環型社会ビジネスによる復興を目指す取組を支援しています。
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県南三陸町は、平成23年11月に「南三陸震災復興計画」を策定し、再生可能エネルギーの導入、廃棄物の減量とリサイクル、産業廃棄物の適正処理などを推進しています。
環境省では、その一環として、同町で行われている生ごみ・し尿及び浄化槽汚泥を対象としたバイオガス化やその他可燃ごみを対象とした資源化の実証実験への支援を実施しました。
この事業は、今までは燃やすごみだったものを、[1]生ごみ、[2]容器包装プラスチック、[3]その他可燃物の3つに分別、回収し、生ごみはバイオガス化し、容器包装プラスチックとその他可燃物は再生製品や燃料等として再資源化を目指すものです(写真2-5-4)。また、バイオガス施設で発生した液肥は農業振興のために使用したり、電気や熱は産業振興や緊急時の防災拠点へのエネルギーとして利用したりすることにより、新たな産業や雇用を生み出すこともあわせて検討しています。
(5)循環資源・バイオマス資源のエネルギー源への利用
東日本大震災以降、各地の電力不足や原発に大きく依存してきたエネルギー・環境戦略の見直しを踏まえ、分散型電源であり、かつ、安定供給が見込める循環資源やバイオマス資源の熱回収や燃料化等によるエネルギー供給が果たす役割は、一層大きくなっています。
廃棄物発電は、ごみを焼却する時に発生する高温の排出ガスの持つ熱エネルギーをボイラーで回収し、蒸気を発生させてタービンを回して発電するものです。
原子力発電所は、遠隔地で発電して東京などの都市部に電力を送ります。これに対し、廃棄物発電やバイオマス発電の場合、基本的に廃棄物やバイオマスがあるその地域内で発電することになりますので、地産地消のエネルギー源となります。廃棄物発電の促進は、建設の際に周辺住民の理解を得るのに多大な努力を要するなど、これまで負のイメージで捉えられることの多かった廃棄物処理施設について、地域との共生や地域内でのエネルギー自給という新たな息吹をもたらす可能性も秘めています。
また、木材、生ごみ、バイオエタノールなどのバイオマス資源は、自然界で再生可能な資源であり、石油や石炭などの化石資源と比べて持続可能性が高いという大きな利点があります。
しかしながら、我が国では、コストや技術上の課題などからバイオマス資源のエネルギー供給源に占める割合は極めて低く、廃棄物の燃焼によって発生する熱量の4分の3程度が無駄に失われてしまっています。
図2-5-15は我が国における電源構成を示したものですが、バイオマス資源が占める割合は、全体のわずか0.3%に過ぎません。さらに、バイオマス発電のうち、廃棄物が90%以上を占めており、木材などその他のバイオマス資源が占める割合は数%となっているとの民間の調査結果も出ています(自然エネルギー政策プラットフォーム)。
我が国において、バイオマス資源のエネルギー利用が進んでいない大きな理由は、価格競争力が弱く、供給が不安定なことにあります。このため、関係者が連携して、コスト低減と安定供給等を実現するための技術開発、需要の創出、効率的な収集運搬体制の整備を行っていくことが、事業化の鍵となります。
廃棄物発電は、スケールメリットが重要であり、規模が大きいほど高効率となります。我が国は、欧米と比べて施設規模が小さく発電効率は低い状況にありますが、近年、廃棄物処理施設の更新時の施設の集約化や最新設備の導入等により発電効率は少しずつ上昇しています(図2-5-16)。
燃料となるごみの組成も重要です。プラスチックなどの石油製品は熱量を上げますが、生ごみなどに含まれる水分はごみの熱量を下げてしまいます。家庭でできる、生ごみの分別リサイクルや、水切りの徹底も廃棄物発電の効率化につながります。
ごみ焼却に伴う熱の有効利用策としては、発電以外に熱(蒸気)そのものを利用する方法があります。我が国では、主に温水プールや温浴施設として活用されていますが、施設外の地域冷暖房などより効果的・効率的な利用を推進していく必要があります。
循環資源・バイオマス資源のエネルギー源への利用は上記のように克服すべき課題が多いのが実情ですが、平成24年7月からは、電気事業者による再生エネルギー電気の調達に関する特別措置法に基づく再生可能エネルギー固定価格買取制度が始まっており、その対象となった廃棄物発電やバイオマス発電のより一層の導入促進が期待されています。
これらを踏まえ、第3次循環型社会形成推進基本計画には、地域の自主性と創意工夫を活かしながら循環資源・バイオマス資源のエネルギー源への利用を進めるため、[1]地方公共団体による高効率廃棄物発電施設の早期整備、[2]焼却施設や産業工程から発生する中低温熱の地域冷暖房などへの有効利用の促進、[3]生ごみ等からのメタン回収を高効率に行うバイオガス化などの施策が盛り込まれています。
(6)国際的取組の推進
現在、世界的な経済成長と人口増加に伴い、地球規模で廃棄物の発生量が増大しており、特にアジア地域は世界の廃棄物発生量全体の約4割を占めています。廃棄物の発生量は今後も増加することが見込まれ、2050年(平成62年)の世界全体の廃棄物発生量は、2010年(平成22年)の2倍以上となる見通しとなっています(図2-5-17)。
すでに、中国やインドなど、近年急速に工業化が進んでいる国々においては、日本が高度経済成長期に経験したような公害の問題や、廃棄物処理に関する問題が発生しています。国内経済の工業化がそれほど進んでいない発展途上国でも、河川や湖などへの生ごみの投棄が、環境汚染の要因となっています。
急速な経済成長が見込まれる発展途上国が深刻な公害問題や廃棄物問題を回避して循環型社会を達成するためには、一人当たりGDPが上昇しても廃棄物量は少ない持続可能な経済成長を促していくことが重要です。
このため、我が国はアジア各国を対象に、国家として3Rを推進するための戦略づくりの支援や政策対話を実施しています(図2-5-18)。例えば、マレーシアでは、食品廃棄物管理の国家戦略計画の策定を支援しています。現在、マレーシアにおいて廃棄物の約5割を占めている食品廃棄物は、ほぼすべてがそのまま埋立処分されており、その有効活用が長年の課題となっています。我が国では、マレーシアからの要請を受け、食品廃棄物のコンポスト(堆肥)利用に向けて、
[1]排出事業者と堆肥利用者のループをつなぐ役割を果たしている食品リサイクル法や、廃棄物の分別・収集体制など我が国の優れた法制度・知見を活かした政策策定、
[2]マレーシアの自治体等でのパイロットプロジェクト(実証事業)の実施等の支援を行っています。
多国間にまたがる取組としては、我が国の提唱により平成21年に設立されたアジア3R推進フォーラムにおいて、3Rに関するハイレベルの政策対話の促進、情報共有、関係者のネットワーク化等を行い、アジアにおける循環型社会づくりに取り組んでいます。平成25年には、ハノイ(ベトナム)において第4回会合を開催し、アジア太平洋地域における3Rの推進のための今後10年間の目標を定め、各目標の達成状況をモニターするための指標をまとめたハノイ3R宣言を採択するなど、合意形式を進めています。
また、廃棄物・リサイクル分野においては、日本の企業は先進的な技術とシステムを蓄積しており、これらの企業にとっては発展途上国への事業拡大は大きなビジネスチャンスとなります。環境省では、世界規模で環境負荷の低減を実現するとともに、我が国経済の活性化につなげるため、平成23年度から我が国循環産業の国際展開に向けた実現可能性調査(FS調査)への支援事業を行っています(図2-5-19)。
廃棄物の輸出入については、循環資源の国際的な移動が加速する中、依然として不法な輸出入も見られ、さらなる水際対策の強化が必要です。
電気電子機器には、金などの有用金属のほか、鉛やカドミウムなどの有害物質が含まれていますが、途上国では電子基板を鉄板に乗せハンダを溶かして部品を取ったり、電線の被膜を取り除くために野焼きに近いことを行ったりしていることが確認されており、環境汚染や作業員の健康被害を引き起こしているとの研究報告もなされています。
このため、循環資源については、[1]まず国内で適正に処理することを原則とした上で、[2]循環資源の性質に応じて、環境負荷の低減や資源の有効利用に資する場合には、国際的な移動の円滑化を図ることが重要となります。
上記のさまざまな状況を踏まえ、第3次循環型社会形成推進基本計画には、[1]二国間協力やアジア3R推進フォーラムなどを通じた、世界規模の3R推進に関する情報共有や合意形成の推進、[2]我が国循環産業の国際展開の推進、[3]有害廃棄物等の国際的な移動による環境汚染を防止するための水際対策の強化、[4]途上国では適正な処理が困難であるものの我が国では処理可能な国外廃棄物等の受け入れ、[5]環境汚染が生じないことを前提とした、石炭灰、高炉水砕スラグなどの輸出円滑化等の施策が盛り込まれています。
(7)まとめ
本節で見てきたように、循環型社会の形成に関する政策課題は、循環を量の側面から捉えて廃棄物の減量化に重きをおいてリサイクルなどの3R政策を推進していくというステージから、循環を質の面からも捉え、安心・安全を確保した上で、廃棄物等を貴重な資源やエネルギー源として一層有効活用して、枯渇が懸念される天然資源の消費を抑制するという新たなステージに進んでいます。
これらは国民一人ひとりのライフスタイルにも深く関係している問題であり、政府のみの取組では到底対応できるものではありません。国民、地方公共団体、NPO、事業者など我が国における、ありとあらゆる主体間で、循環型社会の形成の必要性と実践の環を共有し、小さなことでも各自ができる3R活動に果敢にチャレンジしていくことが求められます。
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