「国際法とは相いれない」、中国軍に質問集中 強硬姿勢に強い懸念 アジア安保会議
2014.6.1 16:31[アジア・オセアニア]
シンガポールで1日開かれたアジア安全保障会議では、各国の有識者らから中国人民解放軍の王冠中副総参謀長に質問が集中し、東・南シナ海で強硬姿勢を強めている中国に対して各国が強い懸念や関心を抱いていることが浮き彫りになった。
約1時間45分にわたった分科会では王氏とロシアのアントノフ国防次官の2人が演説。これを受け質問した19人のうち14人が王氏を指名して、東・南シナ海でのトラブルなどについて見解を問いただした。
このうちインドの出席者は、中国が南シナ海の大半を自国領と主張して地図上に独自に引いた「九段線」と呼ばれる9本の境界線について「海の上に線を引き自国領と言うのは国際法とは相いれない」と批判した。
王氏は「南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島や西沙(英語名パラセル)諸島は2千年以上前に中国が発見し管轄下に置いた」などと述べるだけで、法律上の根拠は「時間がない」として示さなかった。(共同)
関連ニュース
2014.6.1 00:35(1/3ページ)[日中関係]
安倍晋三首相や小野寺五典(いつのり)防衛相、ヘーゲル米国防長官は31日、シンガポールで開かれているアジア安全保障会議の場で、中国による覇権的な海洋進出や挑発行動を強く批判した。中国側も反論し、アジア太平洋での日米対中国の対立の図式が一層鮮明となった。
「ルール守らず」
中国は南シナ海における強引な海洋進出で、ベトナムやフィリピンとの緊張を増幅させている。東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国では、対中感情が悪化している。
安倍晋三首相は31日、シンガポールの首相府でリー・シェンロン首相と会談。中国による南シナ海での石油掘削活動を念頭に、「境界未画定海域において一方的な開発は進めるべきではない」と指摘すると、リー首相は「全ての当事者に抑制した対応を求めたい」と同調した。
会議では、マレーシアやインドネシアの参加者も南シナ海での中国の行動に懸念を表明した。
2014.5.31 23:32
米通信社ブルームバーグは31日、ベトナムのグエン・タン・ズン首相が、南シナ海で石油掘削作業を進めている中国に対し、法的措置を取る準備をしていると言明したと報じた。
ブルームバーグによるとズン氏は30日にハノイの首相府で同社と会見。「われわれは法的措置の準備をし、用意ができている」とした上で「この措置を取る最も適切なタイミングを検討している」と述べた。国連海洋法条約に基づき、仲裁裁判所に仲裁請求したフィリピンの例に倣う可能性がある。ズン氏はまた、世界の海上貿易の3分の2は南シナ海を通過すると指摘し、戦闘が発生するような事態になれば「世界経済全体に計り知れない損害を及ぼす。誰もが敗者となる」と強調した。
南シナ海問題での米国の役割については「平和と安定に向け、具体的で効果的な貢献を期待している」と語った。(共同)
南シナ海における中国とベトナムの衝突について、中国アジア情勢に詳しい元フランス外交官、チェン・ヨ・ズン氏から寄せられた分析を紹介する。(SANKEI EXPRESS)
貪欲な巨大国有企業
8カ月前、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)に対して和平攻勢を仕掛け、とりわけベトナムとは領土紛争を一時棚上げして経済協力を進める合意がなされたばかりだった。ところが、このような事態になったのは、さまざまな背景がある。
衝突の直接原因は、中国国有企業による係争海域での一方的石油掘削の強行だった。両国合意に反してまで強行したのは、国の方針をも左右できる巨大国有企業の貪欲さと力がなせる技であろう。これを政府が制御できなかったのは、自国を維持するために必要かつ最重要とみなす「核心利益」の乱発がある。
「核心利益」の乱発はすでに中国国内でも問題視されている。統一した管理もなく、誰かがある案件を「国の核心利益」としていったん公言してしまうと政府は事後承認をせざるを得ない。「台湾」「チベット」「ウイグル」「尖閣」に続いて、「南シナ海」までもが「核心利益」となった今、中国政府はそれを守る義務に縛られ、現実的政策を取れなくなってしまっている。
2014.5.24 11:00(1/3ページ)
南シナ海での中国とベトナムの衝突から間もなく3週間。問題の海洋石油会社は「作業を8月15日まで続ける」と居座り、ベトナムも海軍力の圧倒的な差にもかかわらず引き下がらない。
事態の長期化が、結局は中国の無法行為を既成事実にする公算は大きい。そして振り返れば、これこそが中国の目指すところであることも分かる。
中国が米軍のベトナム撤退の間隙(かんげき)を縫い、当時の南ベトナムが支配するパラセル(西沙)諸島をめぐり交戦、占領したのは1974年のこと。88年にはスプラトリー(南沙)諸島をめぐる戦いに再び勝利し、92年には領海法を制定、南シナ海と東シナ海の島嶼(とうしょ)を一方的に領土にした。95年、またも米軍撤退を待っていたかのようにフィリピンが実効支配する南沙諸島ミスチーフ環礁を奪取した。
つまり、この40年、中国は南シナ海で交戦→占領→領土化を着々と進めてきたことになる。実効支配に挑戦し、軍事力を含むあらゆる手段を駆使して現状を変更し、その後は国際社会の非難も承知の上で実績作りに励んだ。
尖閣諸島を持つ日本には警告であるとともにこれ以上の教訓もあるまい。