広島国際学院大グループ、安全な野菜栽培成功
広島国際学院大の佐々木健学長(64)(バイオ環境化学)らの研究グループが、東京電力福島第一原発事故で高濃度に汚染された福島県の土壌(1キロ・グラム当たり7万~8万ベクレル)から、細菌を使って放射性物質を6~7割除去し、国の規制値(同100ベクレル以下)の安全な野菜を栽培することに成功したと発表した。汚染土は除染して元に戻し、除染に伴う汚染物質は焼却により、大幅に体積を圧縮できるという。(松本裕平)
同グループは、放射性セシウムを吸着する能力を持つ光合成細菌を活用。汚染土に水と乳酸菌を加えて発酵させた中に、この細菌と粘着性のあるアルギン酸を混ぜてビーズ状にして沈めるか、細菌の培養液を混ぜるかして、放射性セシウムを除去する技術を開発した。
原発事故が起きた2011年から同県内でこの除染方法を実証実験。13年からは、除染した土壌で野菜を栽培し、効果を調べてきた。
今年3~5月に同県浪江町の農場で実験したところ、放射性セシウムを1キロ・グラム当たり7万3981ベクレル含んだ土壌を、61・1~73・3%除染。栽培への影響では、それぞれ1キロ・グラム当たり454ベクレル、324ベクレルだった小松菜とチンゲンサイの放射性セシウムの濃度は、この方法で除染すると、小松菜が「検出せず」~107ベクレルに、チンゲンサイが50~78ベクレルになり、初めて国の規制値を下回った。
放射性セシウムの除去費は、この細菌の培養費用など100平方メートル当たり3万~15万円。使ったビーズ状の細菌や培養液は、固形にして燃やせば体積が90%以上減り、保管スペースが少なくて済むという。
同県農業総合センターは「1万~2万ベクレルの土壌では、食用可能な野菜栽培は可能だったが、7万~8万ベクレルでは聞いたことがない」と実用化に期待する。
佐々木学長は24日、広島市安芸区の同大で記者会見。「高濃度に汚染された土で再び農業ができる可能性を示せた。効果を福島の人たちに伝え、早期実用化を目指したい」と話した。
◇資金援助が課題 成果アピールを
現在主流の除染方法は、放射性物質で汚染された表土をはぎ取って密封し、別の場所に移す方法。各地の保管場所がいっぱいで、どう新たに確保するかが問題になっている。
そこで今回の「バイオ除染」が期待されるが、実用化にはまだ課題が残る。佐々木学長によると、汚染土壌に細菌や植物などを使うバイオ除染は広く実用化された例がなく、国や企業、自治体の支援が受けづらいという。さらに、除染で出た汚染物質をどう安全に焼却するかが課題だと指摘する専門家もいる。
佐々木学長は「まず除染範囲を広げて成果を上げ、福島の人にアピールする。より高濃度の土壌に挑み、双葉、大熊両町など立ち入り禁止区域でも農業ができるようにしたい」と話す。
2014年07月26日Copyright © The Yomiuri Shimbun