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東北経済復興と地球温暖化

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東北経済復興と地球温暖化

東日本大震災と日本の成長戦略

2012/01/04
小谷勝彦 [国際環境経済研究所副理事長]
 
 東日本大震災では、私が所属する総合建材メーカーも津波で被災し、現在も電力が復旧しないなか、工場の復興に向け懸命に努力している。
 今回の大震災および福島原発事故は、我々、産業界にいる者にとって、従来、経験的にわかりきっていると考えてきた常識を見直すことになったと思う。それは、臨海工業地帯の防災対策と電力の安定供給である。
 
 日本の工業地帯は戦後の高度成長期に、原材料の輸入と製品輸出の利便性から臨海に配置されてきた。しかし、そのほとんどが台風などの高潮対策はあっても、大津波対策は十分とはいえなかった。結果として、今回の東日本大震災は、岩手から茨城にかけての臨海工業地域に大被害をもたらした。
 歴史を振り返ると、東北は明治29年(1896年)の三陸大津波、昭和8年(1933年)、そして昭和35年(1960年)のチリ地震による津波などにより大きな被害を受けてきた。
 つまり、今後の東北復興を考えると、単に旧に復するのではなく、何十年後かに再び大津波がやってくることを前提にした「防災に強い東北復興プラン」が不可欠なのである。
 
 例えば、中国の工業開発区は法人税の減免や輸入関税の免除など、多くの魅力的な優遇策を提示し日本企業を盛んに誘致している。国際競争のなかで戦う企業が日本で生産を続けるためには、「東北復興防災モデル特別区」のようなものをつくり、復興資金の重点投入と、縦割りでがんじがらめになった規制を緩和した骨太の対策が望まれる。政府の対応次第では、日本企業が海外移転してしまい、我が国の成長前提が大きな影響を受けることになる。
 
 もう一つは電力の安定供給である。今回、福島第一原子力発電所に加えて常陸那珂火力発電所などの石炭火力発電所も大きな被害を受け、東京電力の供給能力が需要を大幅に下回ったことから、「計画停電」が実施された。東京電力は休止中の発電所の稼働や他電力からの電力融通等により供給能力の拡大を図っているが、各業界とも、企業は関東地方における夏場の「電力需要抑制」を免れない。休日配置、操業形態の見直し、東西間における生産振り回し等の需要サイドの対応に加えて、バックアップ電源の確保など供給面でも対応に追われている。
 産業界は従来から、電力は安定供給されるものだという前提で産業活動を行ってきた。中国広東省における計画停電や、インドにおける電力の不安定とは、我が国は無縁だと信じてきたのだ。
 
 
 しかし、今回の停電は、この前提を揺るがした。産業活動以外でも、家庭用のガス風呂や給水ポンプの電源も停電になると使えない。携帯電話も充電ができなくなると使えない。こういった状態に対する自衛手段として乾電池式の充電器が売れたが、それとて限界がある。
 電力の安定供給、すなわち「エネルギーセキュリティー」が強く認識されるようになった。


 
 

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