熟年カップルの幸せ、様々な形でアシスト
2014年07月30日 08時05分
細木恵美子さん 66歳 婚礼プロデュース会社代表
「背中の部分をひもで調節できるタイプだと安心できるんだけど」
7月上旬、金沢市の貸衣装店。45歳で婚礼業界に飛び込んだブライダルプランナー細木恵美子さん(66)は、中高年向けのドレス選びに細心の注意を払っていた。ファスナーよりひもの方が、年配女性の体形に合わせやすい。「しわや体のラインを気にする人が多いので気配りは欠かせない」と表情は真剣そのものだ。
熟年世代の結婚式を専門に演出する婚礼プロデュース会社「 結 ( ゆい ) 」を今年3月、同市で設立した。50歳以上で再婚、結婚する人の数は1990年から2010年までの20年間で倍増している。「熟年カップルが幸せになる手助けをしたい」と決断した。
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富山大を卒業後、病院や企業の事務職を経験。1973年に結婚し、会社員の夫とともに娘2人を育て上げた。両親の介護が一段落したのは45歳の頃。「もう一度働きたい」とハローワークへ行くと、結婚式場の受付の求人があった。20代の頃から婚礼に関する仕事に憧れていた。迷わず応募すると、採用が決まった。
以降、20年間で担当したカップルは1500組以上。近年は熟年カップルが増え、「どこに相談に行けばいいか分からなかった」といった声に直面してきた。若い世代向けの演出が年配のカップルに合わないことも感じており、需要はあると確信、貯蓄を元手に独立に踏み切った。
対象を50歳以上に限定したため、「商売として成り立たない」という周囲の声もあったが、「ノウハウを蓄積することで特定のニーズの受け皿になれる」と前向きだ。熟年カップルには、若いスタッフに抵抗があったり、衣装選びで首や腕のしわを気にしたりする人も多い。「同世代なら悩みも分かる」と考え、カメラマンや美容師などは50歳以上のベテランに依頼している。
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開業間もないこともあって予約は今のところわずかだが、来春の北陸新幹線金沢開業に期待を寄せる。全国チェーンホテルと提携し、会報誌で宿泊と婚礼がセットになったプランを紹介。「金沢への旅行のついでに式もどうぞ」とPRする。
長年連れ添った夫婦が感謝を伝え合う「バウ・リニューアル」と呼ばれる欧米式の「2度目の結婚式」も広めていきたいという。自身も、子供が独り立ちし、夫婦の絆を確かめ合う機会がほしいと思っている。
「熟年カップルの人生の集大成に向けた一歩をしっかりサポートしたい」と話す。(金沢支局 三歩一 ( さんぶいち ) 真希)
厚生労働省の人口動態統計によると、50歳以上で結婚する人が増加傾向にある。2012年は1950年に比べ再婚者数が約5倍の3万2642人、初婚が約7倍の6390人。団塊の世代が中高年世代となった1970年代後半~90年代に急増しており、それ以降も高い水準を維持している。 一方、結婚に踏み切れない人も少なくない。NPO法人「結婚生活カウンセリング協会」(横浜市)の大塚くにこ代表理事によると、「子供が快く思わない」「親の介護を考えると気がひける」「夫婦で生活できるほどのお金がない」などが大きな理由だ。大塚代表理事は「中高年の多くは生活習慣が確立している。同じ価値観で穏やかに過ごせる相手選びが大事」と話す。 |
2014年07月30日 08時05分