アイヌは、北海道・樺太・千島列島およびロシア・カムチャツカ半島南部にまたがる地域の先住民族である。母語はアイヌ語。19世紀列強の国々の領土拡張の際、多くの先住民族が当該国に編入されたが、アイヌもその一つであり、現在、日本とロシアに居住する。
1855年日露和親条約での国境線決定により、当時の国際法の下、それまで江戸幕府が異域(外国)とした北海道とその周辺地域において各々の領土が確定した以降は、日本人またはロシア人となり、現在、日本では、北海道地方の他に、首都圏等にも広く居住している。
Ainu, First People of Japan, The Original & First Japanese
アイヌは形質人類学的には縄文時代の日本列島人と近く、本州以南が弥生時代に入った後も縄文文化を保持した人々の末裔であると考えられている。
アイヌとはアイヌ自らの固有の言語であるアイヌ語で「人間」を意味する。アイヌの歴史は、考古学上の概念としてのアイヌ文化が成立した時に始まるが、後にアイヌと呼ばれるようになるエスニック・グループは、アイヌ文化が成立する遙か以前から存在していた点に注意が必要である。
またアイヌ文化には地域によって差異が存在していたことが知られている。間宮林蔵の『北夷分界余話』によると、樺太アイヌは犬橇やスキーを使用するなど、オホーツク文化からの影響を伺わせる文化要素を取り入れていた他、近世に入っても土器の製作、竪穴式住居の使用という、北海道では中世アイヌ文化に限られる文化要素を保持していた。鎧の形状も北海道アイヌとは異なり、胸甲と腰部の装甲が一体となった独特のものであった。