サムスン大泣き、トヨタ笑う 円安ウォン高加速で韓国経済に致命傷
2014.9.9 22:25 iza.ne.jp
為替の円安が再加速していることで、韓国経済へのショックが「懸念」から「現実」の段階に入ってきた。
約6年ぶりの円安ウォン高水準となって日本の製造業が競争力を取り戻す一方、韓国の輸出は伸び悩み、主要企業の業績や株価が低迷している。
韓国当局による為替介入でウォン安に誘導するという手も、米国ににらまれてもはや使いづらい。韓国経済はさらなる沈滞に向かうしかないのか。
円とウォンのレートは8月上旬時点で1円=10ウォンを上回っていたのが、9月に入ると9・6~9・7ウォン台と、わずか1カ月足らずで約4%のウォン高が進んだ。
アベノミクス相場がスタートした2012年11月以降では、ウォンは約4割も上昇したことになる。
安いウォンで輸出を伸ばしてきた韓国メーカーには大きな痛手だ。韓国最大の企業、サムスン電子の株価は今年8月以降、右肩下がりが続き、2年ぶりの安値水準で低迷している。
現代(ヒュンダイ)自動車も年初来安値を更新した。いずれも今後の業績悪化懸念が投資家の不安感を誘っている。
日本の輸出産業にとっては円安は追い風だ。たとえばトヨタ自動車は対ドルで1円円安が進むと、年間の営業利益を400億円押し上げる。
トヨタの想定レートは1ドル=100円のため、105円台が続いたとすると、年間2000億円の増益要因だ。
このところドル高基調が続いたため、ウォンも対ドルではやや落ち着いているが、対円でのウォン高の悪影響はより深刻になる。
日本とは自動車や電機、鉄鋼、造船など競合する業態が多く、為替の円安ウォン高が進めば、東証株価指数(TOPIX)が上昇するという相関関係が成り立つという分析もあるほどだ。
韓国銀行(中央銀行)の統計によると、今年1~6月の商品の輸出額は、ドル建てでは3・7%増加したにもかかわらず、ウォン建てでは2・3%減少した。
これまでも円安ウォン高で韓国経済は塗炭の苦しみを味わってきた。1985年の「プラザ合意」後の円高進行が止まった89年、前年まで2ケタの伸びだった韓国の成長率は6%台にまで鈍化した。
90年代後半には1円=7ウォン台までウォン高が進んで輸出競争力を失い、97年には過去最大の経常赤字を記録、98年に通貨危機を迎えて韓国経済は国際通貨基金(IMF)の管理下に入るという事実上の国家破綻に見舞われた。
3度目のウォン高局面である2004~07年には、それまで成長を続けていたサムスンの業績が頭打ちとなった。
その後、同社が再び急成長し、日本の家電メーカーのシェアを奪っていったのは、08年以降の急速な円高ウォン安の進行と軌を一にしている。
そして現在、ウォン高とともにサムスンの業績が沈んでいるのをみると、サムスンの原動力が通貨安だったことがよくわかる。
対円のウォン高が一段と深刻なのは部品メーカーなど中小の製造業者だ。韓国の中小企業中央会によると、中小企業の製造業の損益分岐点は1円=10・59ウォンとされ、すでに採算ラインを大きく割り込んでいる。
朝鮮日報は、機械部品業界関係者の話として、
「最近は海外のバイヤーが日本企業の値下げを理由に挙げ、部品メーカーを中心に韓国企業に納品価格の引き下げを要求するケースが増えている」
とも報じている。
韓国当局も頭を抱えている。ロイター通信は、韓国の企画財政省高官が3日、会合で特に対円でのウォン高に対して
「景気回復にとって為替市場の安定は非常に重要だ」
と懸念を示したと報じている。
これまで陰に陽に市場でウォンを売って安値に誘導する為替介入を行ってきた韓国当局だが、もはやその手も露骨には使いづらい。
米財務省や国際通貨基金(IMF)から
「為替介入でウォン安を誘導しながら、その事実を公表していない」
と名指しでクギを刺されているためだ。
『韓国経済崖っぷち』(アイバス出版)の著書がある週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏はこう指摘する。
「日本企業はリーマン・ショック後の超円高で苦しんだ間、研究開発にカネをかけて攻めの経営を貫いてきた。そうした努力の成果が花開いている。
いま韓国企業は、かつての日本企業と同じ状況に陥っている。
韓国当局も過去の歴史問題をほじくり返す時間があれば、日本企業のふるまいを真剣に学ぶべきだろう」