№2096 土壌汚染と売買
土壌汚染にかかわる条項は大切
平成15年,土壌汚染対策法が施行されて以来,不動産取引業界での土壌汚染に対する関心は高い。工場跡地の売買では土壌検査が当たり前になっているし,不動産鑑定に当たっても土壌汚染の実態を考慮するようになっている。
不動産売買契約書を締結するに当たっても,工場跡地などの売買では土壌汚染に対する対応条項は必須だ。たとえば,豊洲市場の売買でも東京ガス側は土壌汚染に責任を持たない条項をつけておいたおかげで大変助かっている。
商品の欠陥のことを「瑕疵」(かし)という言い方をします
実際,買った土地に汚染物質があった場合にはどのように処理されるであろうか。
土壌汚染のために土地の値段がが下がってしまう,土地購入の目的が達成できないというような場合,私たちは,汚染部分を「瑕疵」(かし)という言葉で表現する。つまり,欠陥ですね。この「瑕疵」をめぐる法律問題を瑕疵担保責任という難しい言葉で表現する。
契約の目的は何かと関連します
土壌汚染問題ではそもそも本当に欠陥と呼んで良いかが問題となる。
たとえば,土地購入時には有害物質に指定されていなかったが,その後,指定されたために土地の価値が著しく下がったという事例がある。最高裁はフッ素の事例について,契約時フッ素は規制対象になっていなかったことを理由に,売買契約には欠陥はないとしている(H22.6.1判タ1248号106頁)。
しかし,別に環境省が指定しようがしまいが有害なものは有害で土地の欠陥になりうる場合もあるように思う。揮発性が高く,人の健康に害を与えるような物質が混じっていれば,宅地として利用することは難しくなる。
一方で,有害物質があったとしても,購入時の土地利用の目的を達することができるのであれば,それは欠陥とはいいがたい場合もある。
ガソリンスタンドの事例
東京地裁の事例であるが,工場跡地をガソリンスタンド用地として購入した。購入ところ,10年以上経てから,検査が行われたところトリクロロエチレンなどの有害物質が検出された。土地購入者は損害賠償請求したのであるが,判決は有害物質があったとしてもガソリンスタンドの営業に影響を与えるレベルではないとして,原告の請求を棄却した(H24.5.30判タ1406号290頁)。
これは土壌汚染をはじめとした土地の瑕疵の場合,売買契約との目的に関連して瑕疵となったりならなくなったりすることがあることを示している。もし,東京地裁の事例が,住宅地として利用する目的である場合には違った結論になった可能性もある。
実際,たとえば住宅地を購入してみたものの,地中に建築廃材が埋まっていた,というような事例の場合,家が建てられる土地であればよしとされる余地があるし,地盤改良に多額の費用がかかる事例であれば,欠陥とされる余地もある。
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