放射能汚染:野生動植物の調査開始 生殖能力に重点
東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質の生態系への被ばく影響を調べるため、環境省は同原発周辺で野生動植物のモニタリング調査に着手した。特に動物の生殖や植物の発芽などの能力に異常が生じていないかを検証する。今年度内に中間報告を出す方針。
国際放射線防護委員会(ICRP)は原発事故による生態系への影響を調べる際の「推奨動植物」について、シカ▽ラット▽マス▽ミツバチ▽カニ▽マツ--など12種を挙げている。環境省はこれを参考に、アカネズミ▽アカマツ▽イネ科の雑草キンエノコロ▽ムラサキガイ--を既に対象に選定し、最終的には十数種類を調べる。
調査地点は警戒区域内や隣接地域などで、比較のため線量が高い地点と低い地点から動植物を採取する。既にアカマツの種子やムラサキガイなどは陸上と海域の計25地点から採取を終えている。
動植物が体内に取り込んだ放射性セシウムの量を確認するほか、外見や染色体の異常の有無を調べる。植物は発芽実験で種子への影響を調べる。哺乳類や両生類は生殖能力への影響や、子の世代の状態などを確認する。
調査は福島県などの要請を受け、同省が財団法人自然環境研究センターや放射線医学総合研究所などと緊急に始めた。これとは別に、山階鳥類研究所がツバメの影響調査に着手している。
86年のチェルノブイリ原発事故では、周辺に生息するツバメで白血球の減少や脳の容積の縮小、個体数の減少などが報告され、26年たった今も影響が出ているという。一方で同原発周辺は人間の影響がなくなったため野生動植物が自由に繁殖しているが、生態系全体への影響は解明されていない。
このため環境省自然環境計画課は「福島での調査は過去に例のないものとなるが、関係機関と協力して科学的な知見を集めたい」と話す。
毎日新聞 2012年1月29日 20時33分(最終更新 1月29日 20時59分)
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