汚染水の放射性物質除去、金沢大教授が処理剤開発
金沢大の太田富久教授(65)が、高濃度汚染水から放射性物質を除去できる可能性が高い粉末状の処理剤を開発した。
東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故を巡り、フランスの原子力大手アレバ社などが汚染水処理を進める中、太田教授は、汚染水処理業務への参入に意欲を見せている。
開発したのは、ゼオライトなどの天然鉱物と化学物質を混合した粉末だ。イオン反応などを利用し、水に溶けたセシウムやストロンチウム、ヨウ素などを吸着して沈殿させる性質を持つ。
実験では、放射性のないセシウムやヨウ素などをほぼ100%除去できた。放射性セシウムや放射性ヨウ素でも、化学的な性質は同じなので、同様の結果が得られるという。
太田教授は、原発で働く作業員や放射性物質を恐れる地元住民の姿をテレビで見た。「彼らの将来にわたる健康リスクを少しでも減らしたい。自分の持つ技術を役立てられないか」と思い立ち、すぐに開発に取りかかった。
専門は、天然の植物や微生物、鉱物生薬といった薬品素材の研究。6年ほど前からは、金沢大の敷地造成工事のため、有害汚染の処理を専門とする企業と共同で、水質・土壌汚染の処理剤の開発も行ってきた。このとき、水中の重金属類を取り除く技術を確立していたため、今回は1か月ほどで完成させることができた。
処理剤は、1時間に1000トンの汚染水の処理が可能で、汚染水に含まれる放射性物質の種類や割合、濃度に合わせて処理方法を変えられる点が特徴だ。太田教授は「考え方は、患者によって、配合を変える薬の処方と一緒です」と語る。
国や東電には処理剤を開発したことを報告しており、被災地からの関心は高い。福島県のある自治体からは、放射性物質で汚染された土壌の除染を依頼された。
また、東京都議からは、下水処理施設から出た汚泥に残る放射性物質を処理出来ないか相談を受け、現在、研究を進めている。
太田教授は「除染の技術は確立されている。汚染された土壌や水を1日も早くきれいにし、被曝(ひばく)におびえる現地の人たちを助けたい」と話している。
(2011年7月8日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20110708-OYT8T00668.htm