肥満リスク:高脂肪食と遺伝子欠損で 京大教授ら発表
特定の遺伝子が損なわれると、脂肪のとりすぎによる肥満リスクが高まることを京都大の辻本豪三教授(ゲノム創薬科学)らが突き止めた。遺伝的に太りやすい人の診断や、肥満予防薬の開発につながるという。20日付の英国の科学誌ネイチャー電子版に発表した。
「GPR120」という遺伝子が、食べ物に含まれる脂肪酸を感知して、インスリン分泌を促したり、食欲を抑えたりする働きに関係することが既に知られている。
研究グループはこの遺伝子を壊したマウスと通常のマウスそれぞれ数十匹ずつに低脂肪(13%)と、高脂肪(60%)の2種類の餌を与え、16週間飼育して比較した。
低脂肪食のマウスの体重は共に平均約30グラムでほとんど差はなかった。高脂肪食の通常マウスは同約40グラムだったが、遺伝子欠損マウスは同約44.4グラム。特に肝臓の重量は欠損マウスの方が約70%も重く、中性脂肪の多い脂肪肝だった。血糖値も高く、インスリンを投与してもほとんど効き目がなかった。
さらにフランスの研究所が持つ欧州人約1万4600人の遺伝情報を肥満度別に解析。肥満グループの2.4%にGPR120の変異(機能低下)があったが、非肥満グループでは変異は1.3%。この遺伝子の変異が肥満リスクを高めることが明らかになった。
辻本教授は「西洋型の高脂肪の食生活と遺伝子の機能低下が重なると、肥満や糖尿病のリスクが高まる。さらにメカニズムを解明し、病的肥満の診断や予防に役立てたい」と話している。
毎日新聞 2012年2月20日 3時00分