中国脅威論
概要
過去数十年単位で見た軍事費の伸び率の高さや不透明性、共産主義国家としての報道・言論規制、他国への侵略、抑圧的な人権政策、偏向した愛国・歴史教育、輸出の拡大による貿易摩擦、甚大な環境破壊、資源の囲い込み等から今後中国が周辺諸国の又は地球規模での脅威となっていくとする見方で、この論説は、日本・台湾・韓国・米国・オーストラリア・ロシア・ベトナム・インドなどで展開されている。また米中冷戦とともに言及されることがある。
軍事面
21年連続2桁増で急増する軍事費、軍事費の内訳の不透明性、兵器や人員の実態の不透明性、核戦力の充実、日本の沖ノ鳥島における排他的経済水域の否定、数々の示威行為(人工衛星破壊・アメリカ海軍原子力空母至近での潜水艦浮上・日本の領海侵犯・排他的経済水域での無断調査・台湾近海でのミサイル演習)により、中国脅威論が展開されている。2006年のアメリカ国防総省の年次報告書では、軍事費の増大などを背景に「周辺諸国への潜在的な脅威になっている」と述べている。
経済面
「世界の工場」と呼ばれる中国は廉価な製品の輸出によって他国の現地産業を圧迫している。この輸出攻勢の背景には外資の誘致による工場の乱立や安い人件費の他に、中国当局が固定相場制によって人民元が輸出に有利になるよう誘導している背景があり、人民元の変動相場制への転換圧力にもなっている(人民元改革も参照)。中国は10億を超える人口を抱えていること、エネルギー効率が悪いことから石油等地下資源の確保に積極的なため、新たな脅威論の要因となっている。2005年には米国大手石油会社・ユノカルの中国企業中国海洋石油総公司による買収騒動は合衆国上院が法案を出すほどの事態に発展した。
移民問題
中国からの移民は世界各国で摩擦を生んでいる。古くから東南アジア諸国などでは華僑が国の政治・経済に大きな影響力を有しており、近年では欧米や日本への移民の急増により、各地でチャイナタウンが形成されるなど、存在感を増している。政治や経済への影響力の増大や、工作活動や、マフィアの増加などが懸念され、侵略的移民であるとの指摘も有る。
サイバー攻撃
ニューヨーク・タイムズは、ダライ・ラマ14世のコンピューターなど、103か国の政府や個人のコンピューターが、主に中国からのサイバー攻撃を受けていたと報じた[1]。またF-35戦闘機の機密情報にアクセスしようというサイバー攻撃があったことを、アメリカ空軍が発表している[2]。これらの攻撃について、中国政府が直接関与しているという証拠が提示されたことはないが、中国政府が関与している可能性が高いと関係者などによって指摘されている。
急増し続ける軍事支出
- 識者を中心に軍事的脅威が唱えられている。中国の軍事費は1989年度から21年連続2桁増という勢いで増加しており、その予算の内訳が明確に示されたことはない。また装備の取得・開発費や戦略ロケット部隊や人民武装警察の予算は軍事予算に含まれておらず、実態は公表されている予算の3倍の額になるという指摘もなされており、2005年8兆円(同年ロシア6.5兆円)2006年10兆円、2007年14兆円と見込まれており、これに従うならば軍事支出では世界2位で、国際関係上、旧ソ連が占めていた地位に近づきつつある。
- 2008年3月4日、姜恩柱報道官は、中国の2008年度(1―12月)国防予算は前年度実績比17.6%増の4177億元(約6兆600億円)に上ることを明らかにした。上記の通り研究開発費などを含む実際の軍事費はさらに大きいとみられるが、公表額においてもフランスを上回り、米国、イギリスに次ぐ世界3位の軍事費になった公算が大きい。
近代化する核戦力
中国は核弾頭搭載可能な中距離弾道ミサイルDF-21とDF-3を25基以上日本に照準を合わせているとされる。更に2010-2015年にはオホーツク海から米本土を核攻撃できる潜水艦発射弾道ミサイルを搭載した晋型原子力潜水艦を5隻就役させる予定であり、2007-2015年には、固体燃料移動式DF-31大陸間弾道ミサイルを配備する予定である。
軍事態勢
中国の軍事力は、人民解放軍、人民武装警察部隊18と民兵19から構成されており、中央軍事委員会の指導および指揮を受けるものとされている20。人民解放軍は、陸・海・空軍と第二砲兵(戦略ミサイル部隊)からなり、中国共産党が創建、指導する人民軍隊とされている。
(図表I-2-3-2 参照)
(1)核戦力およびミサイル戦力
中国は、核戦力および弾道ミサイル戦力について、50年代半ばごろから独自の開発努力を続けており、抑止力の確保、通常戦力の補完および国際社会における発言力の確保を企図しているものとみられている。
中国は、大陸間弾道ミサイル(ICBM:Intercontinental Ballistic Missile)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM;Submarine-Launched Ballistic Missile)、中距離弾道ミサイル(IRBM/MRBM:Intermediate-Range Ballistic Missile/Medium-Range Ballistic Missile)、短距離弾道ミサイル(SRBM:Short-Range Ballistic Missile)という各種類・各射程の弾道ミサイルを保有している。
わが国を含むアジア太平洋地域を射程に収めるIRBM/MRBMについては、従来から、液体燃料推進方式のDF-3およびDF-4が配備されているほか、TELに搭載され移動して運用されるDF-21も配備されており、これらのミサイルは、核を搭載することが可能である。
中国の軍事力は、人民解放軍、人民武装警察部隊18と民兵19から構成されており、中央軍事委員会の指導および指揮を受けるものとされている20。人民解放軍は、陸・海・空軍と第二砲兵(戦略ミサイル部隊)からなり、中国共産党が創建、指導する人民軍隊とされている。
(図表I-2-3-2 参照)
(1)核戦力およびミサイル戦力
中国は、核戦力および弾道ミサイル戦力について、50年代半ばごろから独自の開発努力を続けており、抑止力の確保、通常戦力の補完および国際社会における発言力の確保を企図しているものとみられている。
中国は、大陸間弾道ミサイル(ICBM:Intercontinental Ballistic Missile)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM;Submarine-Launched Ballistic Missile)、中距離弾道ミサイル(IRBM/MRBM:Intermediate-Range Ballistic Missile/Medium-Range Ballistic Missile)、短距離弾道ミサイル(SRBM:Short-Range Ballistic Missile)という各種類・各射程の弾道ミサイルを保有している。
これらの弾道ミサイル戦力は、液体燃料推進型については固体燃料推進型への更新による残存性および即応性の向上が行われている21ほか、射程の延伸、命中精度の向上や多弾頭化などの性能向上の努力が行われているとみられている。
戦略核戦力であるICBMについては、これまでその主力は固定式の液体燃料推進方式のミサイルであったが、中国は、固体燃料推進方式で、発射台付き車両(TEL:Transporter-Erector-Launcher)に搭載される移動型の新型ICBMであるDF-31およびその射程延伸型であるDF-31Aを開発し、既に配備が開始されたとみられている。
また、SLBMについては、現在射程約8,000kmとみられている新型SLBMであるJL-2の開発およびこれを搭載するためのジン級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN:Ballistic Missile Submarine Nuclear-Powered)の建造が行われているとみられている。DF-31およびDF-31Aの配備に加えて、JL-2が実用化に至れば、中国の戦略核戦力は大幅に向上するものと考えられる。
わが国を含むアジア太平洋地域を射程に収めるIRBM/MRBMについては、従来から、液体燃料推進方式のDF-3およびDF-4が配備されているほか、TELに搭載され移動して運用されるDF-21も配備されており、これらのミサイルは、核を搭載することが可能である。
中国はDF-21を基にした命中精度の高い通常弾頭の弾道ミサイルを保有しており、空母などの洋上の艦艇を攻撃するための通常弾頭の対艦攻撃弾道ミサイル(ASBM:Anti-Ship Ballistic Missile)も開発中であるとみられている22。中国は射程1,500km以上の巡航ミサイルであるDH-10を保有しており、弾道ミサイル戦力を補完し、わが国を含むアジア太平洋地域を射程に収める戦力となる可能性がある。
また、IRBM/MRBMのほかに、核兵器や巡航ミサイルを搭載可能なH-6(Tu-16)中距離爆撃機も百数十機保有している。SRBMについては、DF-15およびDF-11を多数保有し、台湾正面に配備しているとみられている23。
一方、中国は10(同22)年1月に、ミッドコースにおけるミサイル迎撃技術の実験を実施したと発表しており、中国による弾道ミサイル防衛の今後の動向が注目される24。
(図表I-2-3-3 参照)
一方、中国は10(同22)年1月に、ミッドコースにおけるミサイル迎撃技術の実験を実施したと発表しており、中国による弾道ミサイル防衛の今後の動向が注目される24。
(図表I-2-3-3 参照)
わが国近海などにおける活動
(1)わが国近海などにおける活動の状況
近年、中国は、海洋における活動を活発化させており、わが国の近海においては、何らかの訓練と思われる活動や情報収集活動を行っていると考えられる中国の海軍艦艇や、わが国の排他的経済水域での海洋調査とみられる活動を行う中国の政府船舶が視認されている38。
(1)わが国近海などにおける活動の状況
近年、中国は、海洋における活動を活発化させており、わが国の近海においては、何らかの訓練と思われる活動や情報収集活動を行っていると考えられる中国の海軍艦艇や、わが国の排他的経済水域での海洋調査とみられる活動を行う中国の政府船舶が視認されている38。
中国海軍の艦艇部隊による太平洋への進出も確認されており39、たとえば、08(同20)年10月には、中国のソブレメンヌイ級駆逐艦など4隻の艦艇が津軽海峡を通過40した後、太平洋を南下してわが国を周回する航行を行ったほか、同年11月には、最新鋭のルージョウ級駆逐艦など4隻の艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に進出する航行を行った。09(同21)年6月には、ルージョウ級駆逐艦など5隻の艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過して沖ノ鳥島北東の海域に進出し、訓練とみられる活動を行った。10年(同22)年3月には、ルージョウ級駆逐艦など6隻の艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に進出する航行を行い、これらの艦艇はその後、南シナ海に進出したと伝えられている41。さらに、同年4月にも、キロ級潜水艦やソブレメンヌイ級駆逐艦など10隻の艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過して沖ノ鳥島西方の海域に進出し、訓練とみられる活動を行った42が、その際、これらの艦艇を監視中の海自護衛艦に対して中国の艦載ヘリコプターが近接飛行する事案が複数回発生している43。
東風21(DF-21〕地対地ミサイル、長さ10.7m、直径1.4m、重さ14トン、射程1800km、250ktの核弾頭登載、2段式固体燃料、道路移動型発射方式、http://www.darkgovernment.com/news/chinese-df-21-ballistic-missile-css-5/
写真は
移動コンテナ兼発射筒に収納されたDF-31ミサイル中国は、旧ソ連時代に液体燃料ミサイル、などの技術供与を受け、独自に改良された核ミサイルを配備している
東風31(DF-31)大陸間弾道弾、長さ13m、直径2.25m、重さ42トン、1メガトンの核弾頭を1万2000km先の目標に打ち込める固体燃料式道路移動発射核ミサイルです
関連項目
- チャイナリスク 中国人民解放軍 中国人民解放軍海軍
- 第一列島線-中国沿岸部から西太平洋地域への進出戦略
- 中国人民解放軍第二砲兵部隊-核兵器を含む戦略ミサイル部門
- 台湾問題
- 反分裂国家法-台湾への武力侵攻について国内法的での正当性を与える
- 台湾独立運動 台湾正名運動 泛緑連盟
- チベット問題 チベット動乱 2008年のチベット動乱
- 中華思想 親中派 反中 パクス・シニカ 米中冷戦 新冷戦
- 前原誠司 中国脅威論を唱える人物の一人。
- 中国が前原誠司氏を恐れる理由
前原氏は民主党代表だった〇六年十二月八日、米国での講演で「中国は経済発展を背景に軍事力の増強、近代化を進めている。これは現実的脅威だ」と述べ、その後中国脅威論を党の見解とするよう指示したことがある。
同月二十二日には麻生太郎外相も記者会見で「隣国で十億の民を持ち、原爆を持ち、軍事費が十七年間、毎年二桁伸び、内容も不透明と言うのなら、どんなことになるか。かなり脅威になりつつある。そういう意識がある」との見方を示した。
- 朱成虎 - 中国人民解放軍 空軍少将・中国人民解放軍国防大学防務学院院長。