尖閣 政府の不作為、通用せず 「すべて遅すぎる」石原知事強調
「すべて遅すぎる。だけど、やらないよりやった方がいいので、とっととやってもらいたい」
東京都の石原慎太郎知事は11日の衆院決算行政監視委員会で、尖閣諸島の国有化についての意見を問われ、こう強調した。この言葉に尽きるのではないか。
1968(昭和43)年に尖閣諸島付近の海域で石油資源埋蔵の可能性が指摘され、71年に中国と台湾が突如、尖閣諸島の領有権を主張し始めてから政府はどんな対策をとってきたか。ひたすら「触らぬ神にたたりなし」に徹した不作為の40年余ではなかったか。
石原氏は東京都が尖閣諸島購入に充てる寄付金収入が11日現在で11億円を突破したことを明かし、こうも迫った。
「そういう国民の意思を何で歴代の政府は無視してきたのか!」
4月17日に石原氏が尖閣購入を表明してまだ2カ月もたたない。にもかかわらず、巨額の募金が集まったのは、国民がいかに尖閣諸島に対する政府のふがいない態度に業を煮やしていたかの証左だといえる。
委員会では、尖閣諸島が属する石垣市の中山義隆市長も「単に『実効支配している』『領土問題はない』と唱えても、調査活動や上陸、周辺での経済活動が行われていなければ国際的なPRにならない」と断じた。政府が石垣市による再三の上陸申請を却下し続けているからだ。
石原氏は「米国も頼りなくなってきた。いったい誰がこの島を守るのか。政府にやってもらいたい」とも述べた。
尖閣諸島は日本の施政下にあるから当然、有事の際には日米安全保障条約の適用対象となるが、複数の日米外交筋は「米軍は尖閣諸島が無人である限り、米兵の血を流してまでは守らない」との認識を示す。
中国共産党の機関紙「人民日報」は今年1月、尖閣諸島を「核心的利益」と表現した。この言葉は尖閣諸島を台湾やチベット、ウイグルと同列に並べ、どんな代償を払っても手放さないとする決意表明だ。
政府はこれまで、中国のトウ小平副首相が提唱した尖閣諸島の領有権「棚上げ論」について、日中間に領土問題は存在しないとの立場から「約束はない」「合意した事実はない」と否定してきた。ところが実際の対応は、自ら否定してきた「棚上げ論」に沿い続けてきたのではないか。
藤村修官房長官は11日午後の記者会見で尖閣諸島の国有化について問われ、「さまざまな検討を行っている」とだけ述べた。これでは国民にも対外的にも、何のメッセージも発信していないに等しい。
石原氏はこの日、尖閣購入計画を「個人的見解」(藤村氏)で批判した丹羽宇一郎駐中国大使についても更迭を求めた。「公の場での大使発言に個人的見解などありえない」(外務省幹部)にもかかわらず、野田政権は処分はせずに放置したままだ。
日本をめぐる国際環境が年々厳しさを増していることは誰も否定できない。棚上げ、先送り手法はもう通用しない。(