小鳥が丘団地土壌汚染問題の経緯と土壌汚染の実態
岡山市内の有害物質に汚染された旭油化工業の工場跡地において、十分な汚染除去が行われることなく約20 年前に住宅団地が開発、分譲された。市による上水道給水管の交換工事を契機に、土壌汚染・地下水汚染・悪臭・土壌ガス等による環境影響が顕在化し、住宅開発を行った両備に対する損害賠償請求訴訟が提起されている。本報告では、この問題の経緯および、土壌汚染の実態について報告する。
1.汚染の経緯
1-1 工場跡地の土壌汚染
(1)旭油化工業の工場における土壌の油汚染
岡山市内で廃油等による石鹸製造工場を操業していた旭油化工業(株)(以下「旭油化」と表記)は、昭和49 年11 月19 日廃棄物処理業の許可を取得し、産業廃棄物として廃油を集め処理を始めた。
その頃より工場からは黒煙が立ち上り周辺地域に悪臭がたちこめ、近くの沼川では油膜が張ったり、死んだ魚が浮き上がったりするなどの現象が見られた。
1-1 工場跡地の土壌汚染
(1)旭油化工業の工場における土壌の油汚染
岡山市内で廃油等による石鹸製造工場を操業していた旭油化工業(株)(以下「旭油化」と表記)は、昭和49 年11 月19 日廃棄物処理業の許可を取得し、産業廃棄物として廃油を集め処理を始めた。
その頃より工場からは黒煙が立ち上り周辺地域に悪臭がたちこめ、近くの沼川では油膜が張ったり、死んだ魚が浮き上がったりするなどの現象が見られた。
敷地内に設置された廃油貯蔵タンクは底が抜けた状態で地面に接し、廃油を土壌に染みこませるための装置となり、不法に廃油が土壌浸透処分されていたとみられている。
土壌の油の吸収が悪くなるとタンクは敷地内の別の場所へ移動されていた。また工場敷地内には腐敗した油脂を入れたドラム缶が散乱して放置され、油脂が敷地内の土地にこびりつき、恒常的に悪臭を発生させてい
た。廃棄物の一部は不法投棄の山であった豊島にも運ばれていた。
た。廃棄物の一部は不法投棄の山であった豊島にも運ばれていた。
1974年の空中写真
1980年の空中写真
(2)近隣住宅地への影響
この工場の北側隣接地は、両備バス(株) (両備バス(株)は現在、両備ホールディングス(株)に社名変更されている。以下「両備」と表記)が造成・販売した住宅団地(小鳥の森団地、37,000 ㎡)がある。ここに住宅を購入した住民から旭油化が産業廃棄物処理業を始めたことによる悪臭などの環境悪化の苦情が、両備や県・市などに苦情が寄せられた。ちなみに両備は、バス、タクシー、電車などの運搬・交通事業、住宅地造成・販売、住宅
建設・販売なども行う岡山県内有数の企業である。
両備は旭油化に対して改善を強く要求したが、一向に改善されることはなかった。一方、岡山県や岡山市の公害課が行政指導を繰り返したが、何ら対策が講じられなかった。
この工場の北側隣接地は、両備バス(株) (両備バス(株)は現在、両備ホールディングス(株)に社名変更されている。以下「両備」と表記)が造成・販売した住宅団地(小鳥の森団地、37,000 ㎡)がある。ここに住宅を購入した住民から旭油化が産業廃棄物処理業を始めたことによる悪臭などの環境悪化の苦情が、両備や県・市などに苦情が寄せられた。ちなみに両備は、バス、タクシー、電車などの運搬・交通事業、住宅地造成・販売、住宅
建設・販売なども行う岡山県内有数の企業である。
両備は旭油化に対して改善を強く要求したが、一向に改善されることはなかった。一方、岡山県や岡山市の公害課が行政指導を繰り返したが、何ら対策が講じられなかった。
(3)両備と旭油化の調停・工場の撤去
昭和57 年、両備は「小鳥の森団地」の販売者として、旭油化に悪臭を放つ汚泥とドラム缶の除去を求める調停を申し立て、同年7 月27 日、和解が成立した。和解の前提は旭油化が自力で汚染土等を撤去することが困難であるというものであり、和解の内容はおおむね次のとおりであった。
昭和57 年、両備は「小鳥の森団地」の販売者として、旭油化に悪臭を放つ汚泥とドラム缶の除去を求める調停を申し立て、同年7 月27 日、和解が成立した。和解の前提は旭油化が自力で汚染土等を撤去することが困難であるというものであり、和解の内容はおおむね次のとおりであった。
1) 旭油化は昭和57 年10 月31 日限り操業を停止し、同年12 月31 日までに本件土地上の全ての建物および地下工作物を撤去し、本件土地上のコンクリート、廃白土及びアスファルト、土地上の油脂付着物を除去して明け渡す。
2) 両備は、旭油化に対して建物除去費用、移転補償などとして6,690 万円を支払う。
3) 両備は、旭油化の工場跡地を一坪あたり6 万円、その地上建物を400 万円で購入する。
1-2 汚染地への宅地造成・販売
(1)両備による住宅団地造成・販売
旭油化の工場跡地を取得した両備は、昭和62,63 年ごろから宅地造成し平成元年頃から「小鳥が丘団地」として分譲を始め、岡山市郊外の落ち着いた緑豊かな住宅地を求めた住民が「小鳥が丘団地」の住宅地を両備から購入し移り住んだ。
(2)宅地土壌から有害物質検出の経緯
平成16 年7 月、岡山市はこの住宅地において上水道の鉛管給水管を、ポリエチレン管に取り替える作業に着手した。同年7 月29 日に上水管を露出させるため路面の掘削工事を始めたところ、掘削土は黒く汚染され、掘るに従って油分を多量に含んだ悪臭を放つ黒い汚泥状となり、その中に水道管が埋められていることが判明した。
化学反応の安定性が高いと言われる鉛管の給水管の一部が既に腐蝕して穴があいている箇所も発見された。
この時の市の調査によれば地下水と土壌から硫酸イオンが検出されたと報告されている。以前から、住民の中に水道水が油くさいと感じていた人がいたが、その原因は鉛管の穴から土壌の油分が混入していたのではないかと推察された。
(3)汚染の実態
住民らは岡山市や宅地販売者である両備に対して、この汚染の実態と原因究明を求めた。
両備は平成16 年7 月ごろから12 月にかけて土地履歴の調査、ボーリングによる土壌調査などを行い、第三者機関に対策検討を委ねるとして、千葉喬三(岡山大学学長)を座長とする「南古都Ⅱ環境対策検討委員会」を社内に設置した。
調査報告によれば、3 地点のボーリング調査で、環境基準値の約27 倍のトリクロロエチレン、約26 倍のベンゼン、6 倍のシス-1,2-ジクロロエチレン等が検出されている。
また地下約5 メートル付近では金属片やボロ切れなどが発見された7),8)。同年12 月に実施された電気探査の結果によれば、地盤が不安定で地盤沈下を起こしやすい状況となっており、広範囲の油分らしき汚染の拡大がみられた9)。以上の他にも汚染を示す調査結果がある。
さらに、平成19 年4 月9 日には、住民自らが敷地内の土壌調査を検査機関に依頼し実施したところ、表層土壌ガス調査では全ての調査位置においてベンゼンが検出されたこと、土壌溶出試験ではベンゼン、シアン化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物が土壌溶出基準を超えていたこと等々が明らかとなった。
さらに、平成19 年4 月9 日には、住民自らが敷地内の土壌調査を検査機関に依頼し実施したところ、表層土壌ガス調査では全ての調査位置においてベンゼンが検出されたこと、土壌溶出試験ではベンゼン、シアン化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物が土壌溶出基準を超えていたこと等々が明らかとなった。
1-3 訴訟へ
(1)宅地造成・販売者としての両備の対応
各種調査を通じて分かったことは、住宅団地内の表層土から発ガン性物質であるベンゼンが含まれるガスが発生して臭気が漂い、土壌の性状が不安定となっていて地盤沈下のおそれがあること等である。
(1)宅地造成・販売者としての両備の対応
各種調査を通じて分かったことは、住宅団地内の表層土から発ガン性物質であるベンゼンが含まれるガスが発生して臭気が漂い、土壌の性状が不安定となっていて地盤沈下のおそれがあること等である。
地盤からのガスの発生で住宅のガス漏れ警報器が作動することもあった。このことからも有害物質を含んだ地盤の安定しない宅地であり、人が安心して安全に暮らせる土地でないことがわかる。実態として石油くさい油臭が日常的に住宅地に漂う状況であり、健康影響が懸念されるばかりでなく、住民は精神的にもやすまらないという。
それにも関わらず両備が設置した委員会は、異臭等の不快感はあるものの健康への懸念は影響がただちに懸念されるものではないとの結論を出した。これを受けて両備は必要であれば委員会が提示した異臭等を軽減させるための対策工事には協力してもいいとの見解を出すにとどまり、宅地造成・販売したものとしての責任を認めず、安全な宅地であるとの基本姿勢には変わりはなかった。
それにも関わらず両備が設置した委員会は、異臭等の不快感はあるものの健康への懸念は影響がただちに懸念されるものではないとの結論を出した。これを受けて両備は必要であれば委員会が提示した異臭等を軽減させるための対策工事には協力してもいいとの見解を出すにとどまり、宅地造成・販売したものとしての責任を認めず、安全な宅地であるとの基本姿勢には変わりはなかった。
(2)損害賠償訴訟の提訴
両備から住宅を購入し居住している住民が、両備に対して土壌汚染による損害の賠償を求めて平成19 年8 月31 日に提訴した。当初、民事責任の追及の是非をめぐって住民間に意見の対立があったものの、別のグループもその後に訴訟提起することになった。
両備から住宅を購入し居住している住民が、両備に対して土壌汚染による損害の賠償を求めて平成19 年8 月31 日に提訴した。当初、民事責任の追及の是非をめぐって住民間に意見の対立があったものの、別のグループもその後に訴訟提起することになった。
そのため2 つのグループに分かれて訴訟提起されているが、実質的には同時並行的に審理が進行している。
二次訴訟で戦う住民たち
訴訟に際しては汚染の実態をどのように立証していくか、20 年前の造成について開発者の責任と損害論をどう構成するか法的に主張を整理することが課題となった。
両備は岡山大学と包括連携協力関係にあり、その大学の学長が調査員会の座長であったため、本来の意味での第三者にはなり得ない。独立行政法人となった国立大学のこうした形での企業との連携は、大学の果たすべき役割をゆがめている。
両備は岡山大学と包括連携協力関係にあり、その大学の学長が調査員会の座長であったため、本来の意味での第三者にはなり得ない。独立行政法人となった国立大学のこうした形での企業との連携は、大学の果たすべき役割をゆがめている。
岡山大学千葉学長と両備社長との金の為なら反社会的行為も含めた連携の握手