【尖閣上陸】
中国当局が「急進派利用」 香港実業家、資金面で支援か
2012.8.16
【上海=河崎真澄、台北=吉村剛史】沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)に15日、活動家らを上陸させた香港の民間団体「保釣行動委員会」が資金面などで中国当局の影響下にあるとの見方が浮上している。
1996年設立の同委は以前、中国共産党と対立関係にある香港の急進的な民主派が主導。天安門事件(89年)の評価見直しや民主化運動弾圧への非難など過激な言動で知られ、共産党政権とは対立関係にあった。しかし現在は、香港の実業家で中国の国政助言機関である人民政治協商会議(政協)委員である親中派の劉夢熊氏がスポンサーとなっている。
日中関係筋は、「尖閣諸島の国有化方針など、日本側を牽制(けんせい)したい中国当局が急進派の活動家らを利用したようだ」と話している。
香港の海事当局は2006年以降、香港から尖閣に向かう抗議船を書類不備などの理由で阻止してきた。しかし今回、12日に出航した抗議船へは、停船を求めたものの、活動家らが操舵室に鍵をかけて抵抗するとあっさり撤収。公海に出ることを香港当局が事実上、認めた。その背後に中国当局の容認指示があった可能性が指摘されている。
中国外務省の秦剛報道官は15日、「中国人の安全が脅かされることのないよう日本側に要求する」などと述べ、表向きは中国当局と関係のない民間団体の自発的行動との立場を取った。
尖閣をめぐってはこれまで、中国と台湾がそれぞれ領有権を主張し始めた1971年以降で2回、不法上陸を許していた。96年7月、日本の政治団体が北小島に「灯台」を建てたことをきっかけに、中国、台湾や香港で大規模な抗議運動が発生し、同年10月に4人が上陸。2004年3月には7人が上陸した。
【用語解説】
入管難民法 正式名称は出入国管理及び難民認定法。「上陸許可を受けないで上陸する目的を有する外国人」の入国を禁止しており「入国」は領海への侵入も含まれる。3年以下の懲役や300万円以下の罰金などの罰則がある。