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Channel: 持続可能な開発(水・土・廃棄物)
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日本から世界への発信 ~SATOYAMAイニシアティブ~

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日本から世界への発信 ~SATOYAMAイニシアティブ~
 人々の暮らしや生物多様性を守るためには、原生的な自然環境だけでなく、農業や林業などの人の営みを通じて形成・維持されてきた二次的な自然環境の保全も重要です。こうした自然環境にはそれに適応した多様な生物が生息・生育しており、生物多様性の保全上重要な役割を果たしています。これらの生物は、都市化、産業化、地域の人口構成の急激な変化等により、世界の多くの地域で危機に瀕しています。
 我が国においても、里地里山の管理や再活性化は、過疎化や地域に基盤を有する一次産業の衰退が進む中で長年取り組んできている課題です。人と自然との共生というビジョンを実現していくためにも、我が国は二次的な自然環境における生物多様性の保全とその持続可能な利用の両立を目指す「SATOYAMAイニシアティブ」を国連大学とともに主唱し、諸外国や関係機関と問題意識を共有しつつ、世界規模で検討し、取組を進めています。
 SATOYAMAイニシアティブを推進していくために、COP10期間中の2010年(平成22年)10月19日に発足した「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(以下、「IPSI」という)」は、2012年(平成24年)3月13日から14日に開催されたIPSIの第2回定例会合において、9カ国の政府機関を含む51団体から16カ国の政府機関を含む117団体に増加しました。
 IPSIでは、SATOYAMAイニシアティブの理念(図4-4-5)に基づいた具体的な取組を進めていくために、定例会合のような参加団体間の情報共有だけでなく、協力活動の促進を行っています。2012年(平成24年)3月現在、IPSIの協力活動は22件になります。

図4-4-5 SATOYAMAイニシアティブの概念構造

 例えば、協力活動の一つとして、我が国、生物多様性条約事務局、国連開発計画(UNDP)、国連大学(UNU)との間で、「SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム」(Community Development and Knowledge Management for the Satoyama Initiative、略称:COMDEKS)を平成23年6月24日に立ち上げました(図4-4-6)。途上国を対象に、地域コミュニティによる社会生態学的生産ランドスケープの維持・再構築のための現地活動を支援するとともに、その現地活動の成果に関する知見を集約・発信していきます。当プログラムは、SATOYAMAイニシアティブの理念に基づいた現地活動への支援を地球規模で展開する最初のプログラムであり、危機的な状況にある世界各地の二次的な自然環境の維持・再構築を通じ、生物多様性の保全とその持続可能な利用、さらに、そこに暮らす人々の生活の向上に貢献できると考えています。


図4-4-6 SATOYAMAイニシアティブ推進プログラム(CDMDEKS)のしくみ

 また、地球環境ファシリティ(GEF)事務局と我が国の間では、2011年(平成23年)12月にSATOYAMAイニシアティブに関する協力覚書の署名を行い、GEF第5フェーズの生物多様性戦略の下、SATOYAMAイニシアティブに関連した中規模や大規模を含むプロジェクトに対する支援の促進、連携活動の機会の探求等を実施することとしました。(写真4-4-2

写真4-4-2 GEFとのSATOYAMAイニシアティブに関する協力覚書の署名式

 さらに、平成23年3月11日に発生した東日本大震災で被災した東北沿岸地域における、里山、里地、里海の連環を通じた地域再生の可能性について議論し、地域の方々による復興に向けた取組に寄与することを目的とするシンポジウム「東日本大震災復興支援シンポジウム-里海・里地・里山の復興をめざして-」を同年8月5日に開催しました(写真4-4-3)。

写真4-4-3 東日本大震災復興支援シンポジウム─里海・里地・里山の復興をめざして─

 また、第4章第3節で紹介した家庭用プリンターの使用済みインクカートリッジの共同回収活動「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」を実施している国内のプリンターメーカー6社は、IPSIが実施している東日本大震災復興支援活動と自然共生社会構築活動への支援を始めています。
 このようなIPSIのメンバーの拡大及び協力活動の活発化に伴い、SATOYAMAイニシアティブの一層の推進が期待されます。我が国は、東日本大震災で被災した東北沿岸地域の里山、里地、里海の復興を含め、二次的な自然環境の保全及び持続可能な利用に関して、IPSIを通じて世界の知恵を結集し議論するとともに、2012年(平成24年)に開催される国連持続可能な開発会議(リオ+20)、第5回世界自然保護会議(IUCN-WCC)、COP11の場を通じて世界に発信していきたいと考えています。



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