相続順位
直系及び傍系(兄弟姉妹)の相続権(889条)
- 被相続人の子
- 被相続人の直系尊属
- 被相続人の兄弟姉妹
被相続人の配偶者は、上記の者と同順位で常に相続人となる。同順位同士との相続となるのであって、遺言による指定がない限り他順位間とで相続することはない。
相続欠格
故意に被相続人や他の相続人を死亡に至らせたり、遺言書を破棄・捏造するなど第891条に規定される重大な不正行為(相続欠格事由)を行った者は、その被相続人の相続において当然に相続人としての資格を失なう。これを相続欠格という。遺言状ではなく遺産を隠匿しただけでは、相続の権利は失わない。
詳細は「相続欠格」を参照
相続人の廃除
被相続人に対して虐待・侮辱あるいは著しい非行があった場合、被相続人は家庭裁判所に申し立てる事によって、その相続権を喪失させることができる(892条)。これを相続人の廃除という。相続人の廃除は遺言による申し立てによっても可能である(893条)。廃除された推定相続人は相続権を失う。
詳細は「相続廃除」を参照
指定相続分
被相続人は遺言で共同相続人の相続分を定め、または、相続分を定めることを第三者に委託することができる(902条1項本文)。このような方法によって定まった相続分を指定相続分という。ただし、被相続人や第三者は相続分の指定について遺留分に関する規定に違反することができない(902条1項但書)。被相続人が共同相続人のうちの一人もしくは数人の相続分のみを定め、または第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は法定相続分の規定によって定まることになる(902条2項)。
法定相続分
遺言による相続分の指定がない場合は法定相続分(900条)によることとなり、具体的には次の通りとなる。
順位 相続人 相続分(遺留分) 適用 法定 配偶者 他の親族 配偶者 他の親族 1 第1順位 有 子 1/2(1/4) 1/2(1/4) 2 第2順位 直系尊属 2/3(1/3) 1/3(1/6) 3 第3順位 兄弟姉妹 3/4(1/2) 1/4(無) 4 無 全部(1/2) - 5 第1順位 無 子 - 全部(1/2) 6 第2順位 直系尊属 - 全部(1/3) 7 第3順位 兄弟姉妹 - 全部(無)
- ※他の親族の該当者が複数存在する場合は相続分の中から均等分にする。
- ※非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の二分の一とする(900条4号但書)。
- ※直系尊属の場合、生存する最近親のみの相続となる。
- ※最高裁判所は2003年(平成15年)3月31日に、婚外子(非嫡出子)の相続分について、憲法14条1項に違反するものでないとの判決を示したが、その中で「本件規定が、明らかに違憲であるとまではいえないが、極めて違憲の疑いの濃いものである……相続分を同等にする方向での法改正が立法府により可及的速やかになされることを強く期待するものである。」という補足意見が付されている。
- 遺産分割
- 共同相続の場合において、相続分に応じて遺産を分割し、各相続人の単独財産にすること。
- 遺産の分割の協議又は審判等(907条)
- 遺言による分割の方法の指定(908条)
- 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
- 遺産の分割の効力(909条)
- 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
- 相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権(910条)
判例では、遺産分割により不動産の権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後に権利を取得した第三者に対し、対抗することができない。 - ※非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の二分の一とする(900条4号但書)。
- 相続の承認・放棄をすべき期間(熟慮期間)
相続の承認や放棄は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内にしなければならない(915条1項本文)。
- 相続の承認の内容
- 相続人が被相続人の権利義務の承継を受諾することを相続の承認といい、権利義務の承継を受諾する範囲により単純承認と限定承認に分けられる。
- 単純承認は相続により相続人が被相続人の権利義務を無限に承継するものである(920条以下)。なお、相続人が921条に規定される事由(法定単純承認事由)を行ったときは単純承認したものとみなされる。
- 限定承認は相続によって得た財産の限度で被相続人の債務および遺贈を弁済することとするものである(922条以下)。共同相続の場合には限定承認は共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる(923条)。
- 詳細は「単純承認」および「限定承認」を参照
- 相続放棄の内容
- 相続を放棄した場合には、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなされることになる(939条)。相続放棄は相続財産が債務超過である可能性が高い場合や、一部の相続人に相続財産を集中させたい場合などに行われる。相続を放棄する場合には被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述しなければならない(940条)。放棄したことにより、放棄者の子へといった代襲相続は生じない。(贈与税の回避防止のため)
- 詳細は「相続放棄」を参照
- 相続の承認および放棄の撤回および取消し
相続人が相続の承認または放棄をしたときは、以後は915条の期間内であっても撤回できない(919条1項)。ただし、民法総則および親族編に定められる取消原因があれば919条3項に定められる一定期間に取消しをすることはできる(919条2項・3項)。この場合に限定承認または相続の放棄の取消しをしようとする者は家庭裁判所に申述しなければならない(919条4項)。相続税の対象から、非課税財産を控除する財産の範囲相続税の対象となった財産から、借入などの債務、葬儀費用を控除し、さらに次に挙げる非課税財産を控除することが出来る。墓地、仏壇、祭具などの祭祀用財産国・地方公共団体、特定の公益法人に寄附した財産生命保険金のうち、法定相続人の数 × 5百万円に相当する額死亡退職金のうち、法定相続人の数 × 5百万円に相当する額相続税の計相続税の課税価格の計算以下が、課税価格の計算方式である[14]。遺産の総額 -非課税財産 -債務および葬式費用 +相続開始前3年以内の贈与財産 =相続税の課税価格(千円未満切捨)相続税の総額の計算及び各人ごとの相続税の計算相続税の課税価格の合計 -相続税の基礎控除(5,000万円 + 1,000万円 ×法定相続人の数)=相続税の課税遺産総額 - 相続人が被相続人の権利義務の承継を受諾することを相続の承認といい、権利義務の承継を受諾する範囲により単純承認と限定承認に分けられる。
遺産分割協議書の書式
遺産分割協議書は相続人全員で作成します。決められた書式はありませんが、誰がどの財産を取得したのか名義書換機関にも分かるようにしなければいけません。その上で、数ページに渡るものは割印を押し、自署し実印を押します。作成部数は、最低でも名義変更用(使回し)と控えの2部です。
名義変更の際には、この遺産分割協議書に印鑑証明書と相続証明(戸籍謄本等)を添付します。
名義変更の際には、この遺産分割協議書に印鑑証明書と相続証明(戸籍謄本等)を添付します。
期限
遺産分割協議書の作成に期限はありません。しかし、相続税の申告をする人は、申告期限(相続開始後10ヶ月)までに分割をしないと税制上の恩典が受けられません。
遺産分割協議書の雛形
遺産分割協議書
被相続人・○○太郎(平成21年9月10日死亡)の相続人・○○花子、○○一郎及び○○次郎は、分割協議の結果、次の通り被相続人の遺産を分割取得し、債務を承継することに合意した。
1.相続人・○○花子は、以下に記載する遺産を取得する。
(1)土 地
1.所 在 世田谷区世田谷○丁目
地 番 ○○番○○
地 目 宅 地
地 積 123.45平米
(2)建 物
1.所 在 世田谷区世田谷○丁目○○番地○○
家屋番号 ○○番○○
種 類 居 宅
構 造 木造スレート瓦葺2階建
床 面 積 1階 ○○.○○平米 2階 ○○.○○平米
(3)有価証券
1.出 資 金 ××農業協同組合 ××支店 #123456 100口
2.株 式 株式会社×× 10,000株
(4)現金1,000,000円
(5)預貯金
1.××銀行 ××支店 普通預金 #1111111 2,000,000円
(6)家庭用財産
世田谷区世田谷○丁目○○番○○所在の建物内の家財一式
(7)その他の財産
1.電話加入権 #03-5298-×××× 1回線
2.前払保険料 日本郵政公社 #00-00-0000000
3.所得税還付金 ××税務署
2.以下の遺産を相続人・○○花子が100分の45、相続人・○○一郎が100分の37、相続人・○○次郎が100分の18の割合でそれぞれ共有取得する。
上記土地の別添図面(135.78平米)の持分の1/2の内、○○花子は37.89平米、○○一郎、○○次郎はそれぞれ15.00平米を取得する。尚、この地積は現況地積であり、分筆の際の隣地立会等により地積が変わった場合には、関係所有者間で協議して決めた地積とする。
4.相続人・○○花子は、上記1ないし3に記載以外の被相続人の全ての遺産を取得する。
5.相続人・○○花子は、被相続人の債務全てを承継する。
6.被相続人の葬式費用については、相続人・○○花子が2分の1、相続人・○○一郎、○○次郎がそれぞれ4分の1の割合で負担する。
7.相続人・○○花子は、前項までの遺産分割の代償として、相続人・○○一郎、○○次郎に対して、それぞれ3,000,000円の現金を支払う。
以上の通り、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証明するために本書を作成し、次に各自署名押印する。
平成○○年○○月○○日
相続人 住所 ○○○○○○○○
氏名 ○○ 花子 印
相続人 住所 ○○○○○○○○
氏名 ○○ 一郎 印
遺産分割協議書の雛形を添付しました。必要なところを使って下さい。
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