特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法平成15年6月18日法律第98号は、平成9年の廃棄物処理法改正前(平成10年6月以前)に不法投棄(不適正処分)が開始された産業廃棄物について、都道府県等が自ら行う対策費用に対して、国庫補助および地方債の起債特例などの特別措置による財政支援を行うための枠組みを規定する特別措置法。2003年度から10年間の時限法(時限立法)である。
なお、平成9年廃棄物処理法改正法の施行以降に行われた産業廃棄物の不適正処分については、同改正法で規定された産業界からの出えんによる原状回復基金により、都道府県又は保健所設置市が行う原状回復の支援を行うこととなっている。
目的
第一条 特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を計画的かつ着実に推進するため、環境大臣が策定する基本方針等について定めるとともに、都道府県等が実施する特定支障除去等事業に関する特別の措置を講じ、もって国民の健康の保護及び生活環境の保全を図ることを目的とする。
制定の背景
「豊島不法投棄事案(香川県)」や「青森・岩手県境産廃不法投棄事案」の大規模な不法投棄問題の対策について早期解決を行うために制定された。
構成
- 第一条 (目的)
- 第二条 (定義)
- 第三条 (基本方針)
- 第四条 (実施計画)
- 第五条 (国庫補助等)
- 第六条 (起債の特例)
- 附 則
概要
以下の事項が定められている。
- 環境大臣は、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を平成24年度までの間に、計画的かつ着実に推進するための基本的な方針(基本方針)を定める
- 都道府県等は、基本方針に即して、その区域内における特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の実施に関する計画(実施計画)を定めることができる
- 国は、産業廃棄物適正処理推進センターが、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を行う都道府県等に対し資金の出えんを行う場合には、予算の範囲内において、その業務に係る基金に充てる資金を補助することができる
- 特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を行うに当たり都道府県等が必要とする経費について、地方債をもってその財源とすることができる
また以下の事項を基本方針としている。
- 「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の推進に関する基本的な方向」として、過去に不適正処分が行われた産業廃棄物(特定産業廃棄物)に起因する生活環境の保全上の支障を、2003年度から10年の期間内に計画的かつ着実に問題の解決に取り組むこと等を定めている。
- 「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の内容に関する事項」として、特定産業廃棄物の種類及び量、最も合理的に支障の除去を実施することができる処理方法の選択、事業に要する費用及び出えん額等の考え方、特定産業廃棄物の処分を行った者等に対して行う措置の内容等について定めている。
- 「その他特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の推進に際し配慮すべき重要事項」として、周辺の生活環境モニタリングの実施、都道府県等相互の協力及び連絡調整等を定めている。
対策(支障の除去)の計画
産業廃棄物の不適正処分についての対策は、第一に、不適正処分の行為者や関与者等に適切に負担させることにある。加えて、不法投棄によって発生している生活環境保全上の支障の実態を把握し、その内容に応じて、都道府県等が実施する支障除去等の対策を計画することとしている。
- 不適正処分の行為者、および不法投棄するまでの間に適正な処理を行わなかった者に対して、廃棄物処理法に基づく措置命令を発出して支障の除去等の措置を行わせる。
- 都道府県等は、不法投棄された特定産業廃棄物の実態(廃棄物(種別・量・範囲等)、周辺への影響(地下水質・臭気・粉塵等))を把握する調査を行い、その結果、支障の除去等を行う必要があると判断した場合には、まず廃棄物処理法に基づく措置命令を発出する。これらの手続きによってもなお支障の除去等が完了しない場合に、産廃特措法に基づく実施計画を策定し、特定支障除去等事業を実施する。
- 不法投棄された廃棄物が有害廃棄物(廃棄物処理法に規定する特別管理産業廃棄物又はこれに相当するもの)に該当する場合、それは生活環境に係る被害を生ずるおそれがある廃棄物となる。
- 調査方法は、不法投棄現場をメッシュ(方眼)状に区切り、ボーリング調査等により、そのメッシュ区画ごとの廃棄物の性状調査を行う。有害廃棄物が含まれている区画の事業費については1/2を国庫補助対象とし、有害廃棄物がない区画の事業費については1/3を国庫補助対象とする。
支障除去等事業に対する国庫補助等
都道府県等が「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等についての実施計画(実施計画)」に基づき支障除去等の事業を実施する場合、廃棄物処理法に定める適正処理推進センターを通じて国庫補助を受けることができる。
国庫補助以外で都道府県等が負担する経費について、地方財政法の特例として、地方債をその財源とすることができる。
なお、地方債の起債に関して、その起債充当比率や元利償還金にかかる交付税措置等については、総務省が措置する。特定支障除去等の事業について、地方負担額に対する充当率は70~75%で、その元利償還金の50%について交付税措置が行われる。
法の適用事例
都道府県に対し、国は適正処理推進センターを通じて資金を出えんする等の財政支援を行っている。以下の日付は、実施計画に対する環境大臣の同意時期。
- 豊島不法投棄事案(香川県)H15.12.09
- 青森・岩手県境不法投棄事案(青森県)H16.01.21
- 青森・岩手県境不法投棄事案(岩手県)H16.01.21
- 山梨県須玉町事案(山梨県) H16.08.30
- 秋田県能代市事案(秋田県)H17.01.21
- 三重県桑名市事案(三重県)H17.3.31
- 新潟県上越市事案(新潟県)H17.4.14
- 福井県敦賀市事案(福井県)H18.3.23