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水俣に中国からの水銀が飛来している!!水俣湾水環境中に存在する水銀の動態とその影響に関する研究

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[研究課題名と研究概要]
(1)八代海における海洋生態系群集構造と水銀動態-水俣湾・八代海の底生生物相解明および食物網を
通した魚類の水銀蓄積機構の研究-
森 敬介

1) 水俣湾及び八代海の海域の生物相調査。 平成
23 年10 月、水俣湾内、袋湾、茂道、七つ瀬を含
む海域の23 地点において、底生生物(底魚も含
む)の採集を行った。

2) 沿岸域(磯、干潟)の底生生物調査。継続中の水
俣湾の潮間帯モニタリング調査が岩礁及び転石
地が対象のため、袋湾の干潟域の予備調査を行
った。

3) 分子生物学的手法を用いた魚類の食性分析。今
年度は、55 個体の魚の胃内容を分析した。胃袋
及び胃内容を分別した試料は、藤村室長により、
DNA 分析を実施した。

4) 標本類の分類・同定・測定。今年度は野外調査中
心で、分析したものより採集したサンプル量が多く
なった。

5) 蓄積している水俣湾モニタリングの生物標本・底
泥標本の水銀分析。平成23 年2 月、3 月に実施
した8 回目の岩礁及び転石潮間帯の生物モニタリ
ング調査では、湾内2 ヶ所、湾外2 ヶ所で潮位別
に256 個の定量調査を実施した。
 

8) 水俣湾の底質の音響探査による高精度解析とモニタリングロ
ボットによる底質の調査を実施した。
 

(2)水俣湾水環境中に存在する水銀の動態とその影響に関する研究(基盤研究)
松山明人
1) 水俣湾定期観測を継続実施し、新たな
測定項目としてR-Hg(反応性水銀)、酸化還元電
位測定を追加した。
 

2) 海微生物群集解析手法の
確立及び、水俣湾海水に関する微生物学的特性
について検討を実施した。結果として、富栄養化
の進んだ霞ヶ浦等と比較して、水俣湾の微生物相
は少ないという結果が得られた。
 

4) 水俣湾・親水護岸周辺5 ヶ所に、水質モニタリング
採水ポイントを新規に設け、昨年7 月よりほぼ毎月
1 回大潮、下げ潮最強時に水質モニタリングを予
備的に開始した。今年度の傾向として、全体的に
8 月から9 月にかけて溶存態総水銀濃度が上昇
ていた。
 

(3)大気中水銀の輸送及び沈着現象、並びに化学反応に関する研究
丸本幸治

水俣市におい
て平成23 年1 月より大気中のガス状金属水銀とガス
状二価水銀化合物、粒子状水銀を1 ヶ月に6 日間の
頻度で観測した。それぞれの年平均濃度は1.9±0.4
ng m-3、3.3±3.6 pg m-3、8.7±6.7 pg m-3 であり、ガス
状二価水銀化合物濃度は春季と秋季に高く、粒子状
水銀濃度は冬季から春季に高い
ことがわかった。

観測期間中には
黄砂現象があり、このときには両地点ともに粒子状水
銀濃度が高かった
。また、粒子状物質のイオン成分の
データや福岡市役所の大気汚染物質常時監視デー
タ(そらまめ君)及び、福岡気象台の気象観測データ
を利用して解析を行い、国内外の水銀放出源の影響
について考察した。
 
(4)自然要因による水銀放出量に関する研究
丸本幸治
、海水中
DGMの生成には光(日射)が重要なファクターとなっ
ていることがわかった。
上記の分析条件のもと、瀬戸内海東部12 地点に
おいて表層海水中DGM の観測を平成23 年6 月に
行った。その結果、DGM濃度は27~87 pg/Lであり、
平均濃度は61±19 pg/L であった。また、本研究で得
られた海水中DGM 濃度、大気中ガス状水銀濃度、
風速等のデータから既存の大気-海洋間のガス交
換モデルを用いて、海表面から放出される水銀のフ
ラックスを計算した。

(1)八代海における海洋生態系群集構造と水銀動態とその影響
―水俣湾・八代海の底生生物相解明および食物網を通じた魚類の水銀蓄積機構の研究―
 
食物網を通じた水銀濃縮はよく知られている現象で
あるが、実際の経路が判明しているものは、カサゴの例のみである。水俣湾における他の魚
種の生物濃縮を考える場合に、どのような餌生物が存
在しているかは、最も重要な基礎データであるが、水俣
湾・八代海において様々な生息地を含んだ定量的な
底生生物相調査は存在しない。

1.水俣湾における食物網を通した魚類の水銀蓄積機構及びその基礎となる底生生物相の解明
水俣湾における魚類の水銀蓄積機構については、カ
サゴ以外の種類については、食性や食物網は殆どわ
かっていない。干潟や潮下帯の砂泥地、藻場等これま
で調査が行われなかった場所を主要な餌場とする種類
として、ヒラメ、カレイ、ウシノシタ、エイ、ハゼ類等の底
魚類がいる。

近い環境の有明海では平成17-19年に全生物を対
象とした本格的な生物相調査が行われ(森が代表)、数
多くの新種を含む初記録が得られている。
 
2.水俣湾から八代海への水銀拡散調査
水俣湾の仕切り網撤去による海水流動性の変化によ
り水俣湾から周辺域への水銀拡散状況が変化した事
が予想される。八代海全域にて、底質及び主要底生生
物の水銀レベル調査を行い、拡散の状況を明らかにす
る。
イメージ 2
 
3.水俣湾の定期モニタリング調査、
 
 
 
 
 
水俣湾・海洋微生物の群集解析
 本研究の目的は時系列的及び深度毎に水俣湾海水における微生物群集を解析し、その群集の変化と溶存態MeHg 濃度の変化との関係と比較することにより、 MeHg 生成への微生物の関与を探ることにある。
 今年度は、上述を鑑み、水俣湾海水中の水銀有機化反応に関わる微生物の本格検討を開始する前のDGGE 実験手法検討等、予備検討を主に行った。結果として、予備的に実施したDGGE 解析から以下のことがわかった。
1. 水俣海水中の微生物数(16S rDNA のPCR の結果から)富栄養化が進む霞ヶ浦の湖水と比較すると、微生物数は少なくDNA 量が少ない。
 

2. 16S rDNA のPCR 及びDGGE での検討
①微生物数(DNA 量)が少ないので、DGGE におけるPCR 産物のバンドが薄い。上記を解決するため、実験手法改良を行った。即ち・海水サンプルろ過量;50 ml(50 倍濃縮)を100 ml(100 倍濃縮) とした。PCR反応の回数;25 cycles から30 cycles へ変更、その他、PCR 反応の妨害物質のトラップ剤(牛血清アルブミン)の添加を不要とした。
 また変性剤の濃度;35~55% を25~50%とし、PCR 産物のアプライ量を10 L から20 L へ増量した。以上を行い、DGGE 解析の精度を向上させた。
 
 
親水護岸水質モニタリングの予備検討
 水銀に関するモニタリングは溶存態総水銀のみで、採水と同時に水質センサーを用いて、現場で水温やDO 等の項目も測定した。
 溶存態総水銀の分析手法は公定法ではなく、ジチゾン法(赤木法)を基に行った。結果として昨年10 月時点のB を除くポイントは、他季節と比較して水銀濃度が高くなっていた。
 水俣湾全体の溶存態総水銀濃度の年平均値(0.40ng/l)に比較すると数倍程度高かった。た
 水俣市では大気中のガス状Hg(0)とガス状Hg(II)、Hg(p)を1 ヶ月に6 日間の頻度で観測した。観測は平成23 年1 月から開始し、現在も継続している。
 なお、平成23 年2 月のみは連続観測を2 回実施し、延べ12 日間の観測データを得た。観測では、ガス状Hg(0)とガス状Hg(II)の捕集管を半日毎に交換し、Hg(p)捕集用フィルターを1 日毎に交換した。
 また、Hg(p)については、サイクロンを用いて粒径2.5 μm 以下の粒子状物質のみを捕集して水銀を分析した。図3 に平成23 年1 月から12 月までのガス状Hg(0)、ガス状Hg(II)、Hg(p)の月平均濃度の変動を示した。ガス状Hg(0)、ガス状Hg(II)、Hg(p)の年平均濃度はそれぞれ1.9±0.4 ng m-3、3.3±3.6 pg m-3、8.7±6.7 pgm-3 であった。ガス状Hg(0)の平均濃度は晩冬から春季にかけてやや高い傾向が見られた。一方、ガス状Hg(II)濃度は春季と秋季に高く、夏季に低かった。また、Hg(p)濃度は冬季に高く、ガス状Hg(II)と同様に夏季に低かった。
 

 図4 にガス状Hg(II)とHg(p)濃度が比較的高かった平成23 年10 月12 日から19 日までの観測結果を示した。この期間中には10 月14 日から15 日にかけて降水現象が見られた。また、地上風向は期間を通して概ね北から東の風であった。
 
 風速も降水時以外は日中に大きく、夜間に低い日内変動が見られたが、日間変動は殆どなかった。図より、ガス状Hg(0)濃度は殆ど変動せず、日中と夜間の差もなかった。一方、ガス状Hg(II)濃度は日中に高く、夜間に低い日内変動を示した。
 しかしながら、15 日の降水時には日中のガス状Hg(II)濃度の上昇が抑制された。降水時におけるガス状Hg(II)濃度の低下は夏季に多く見られた。
 降水量の多い夏季は大気中ガス状Hg(II)がより効率的に雨滴に取り込まれるため、大気中濃度が低くなると考え
られる。これまでの研究によって、日本における降水中水銀の大部分は大気中ガス状Hg(II)由来であることが指摘されており4)、本研究で得られた結果はこれと矛盾しない。
 一方、Hg(p)濃度の変動を見ると、12 日から15 日までと比べて16 日以降に濃度が2.0~2.5 倍高かった。16 日前後で地上の風向風速に変化はなかったため、地上の放出源の影響を受けた可能性は低い。そこで、12 日から19 日までの上空の空気塊の履歴を後方流跡線解析により調べた(図5)。その結果、12 日から15日にかけては空気塊が日本列島付近もしくは太平洋を経由して水俣市上空に到達していた。
 イメージ 1
 一方、16 日以降は空気塊がアジア大陸を経由して水俣市上空に到達していたことがわかった。そのため、16 日以降のHg(p)濃度の上昇はアジア大陸由来物質の影響によるものと推察される
 晩秋から冬季、春季にかけては大陸由来の気団が日本列島に到達する頻度が多いことから、冬季から春季におけるHg(p)濃度の増大要因の一つとしてアジア大陸で放出された水銀の影響が考えられる。

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