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水銀に関する条約の制定に向けた政府間交渉委員会第5回会合

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平成25年1月22日

「水銀に関する条約の制定に向けた政府間交渉委員会第5回会合」の結果について(お知らせ)

 水銀に関する条約の制定に向けた議論のため、平成25年1月13日(日)からジュネーブ(スイス)において「水銀条約政府間交渉委員会第5回会合」(INC5)が開催され、1月19日(土)朝(現地時間)に条文案が合意されました。また、条約の名称が「水銀に関する水俣条約」(Minamata Convention on Mercury)に決定されました。
 併せて、本年10月9日(水)から11日(金)に条約の採択・署名のための外交会議を熊本市及び水俣市で開催することが正式に決定されました。

1.今般の会議の趣旨と経緯

 平成21年2月に開催された国連環境計画(UNEP)第25回管理理事会において、水銀が人の健康及び環境に及ぼすリスクを低減するため、国際的な水銀の管理に関して法的拘束力のある文書(条約)を制定すること、及びそのための政府間交渉委員会(INC)を設置して平成25年までのとりまとめを目指すことが合意されました。今回のINC第5回会合は、これまでの成果を踏まえ、条文の合意に向けた議論がなされることとなっていたものです。
 我が国は、水銀の汚染による健康被害や環境破壊を引き起こした水俣病の経験を踏まえ、世界各国における水銀汚染対策の強化を進めるべきとの立場から、積極的にINCにおける議論に参加してきました。

2.会議及び関連会合の概要

(1)会議の開催期間等

  • 開催期間:平成25年1月13日(日)~1月18日(金)
  • 開催場所:ジュネーブ(スイス)

(2)主な議題

  • 水銀に関する条約の条文案(議長テキスト)についての議論 等

(3)会議文書等

 議題、会議文書(議長テキストを含む)等は以下のウェブサイトから入手可能です。
 http://www.unep.org/hazardoussubstances/Mercury/Negotiations/INC5/INC5MeetingDocuments/tabid/3495/language/en-US/Default.aspx

(4)出席者

 会議には、約140カ国・地域の政府代表の他、事前に登録された国際機関、NGO等を含め約800名が出席しました。
 我が国からは、外務省、厚生労働省、経済産業省及び環境省(谷津地球環境審議官、早水環境保健部企画課長ほか)から構成される政府代表団及びNGO等が出席しました。

3. 議論の概要

 会合では、議長テキストに基づき議論が行われ、「水銀に関する水俣条約」の条文が取りまとめられました。我が国は、アジア太平洋地域グループのコーディネーターとして同地域の意見の取りまとめに努めたほか、規制対象となる水銀添加製品・製造プロセスのリスト(附属書)案をジャマイカ及びEUと共同提案するとともに、会議の終盤には議長主催のハイレベル会合に出席し、交渉の取りまとめに協力するなど、今次会合における議論の進展に貢献しました。また、条約の発効までの移行期間における資金支援について、ノルウェー、スイスと我が国が資金拠出を行う用意があることを表明し、各国より歓迎が表明されました。
 条約条文案合意後、我が国より条約の採択・署名のための外交会議及び関連会合を本年10月7日の週に熊本市及び水俣市で開催することを提案し、これを受けてINC議長より条約の名称を「水銀に関する水俣条約」(Minamata Convention on Mercury)とすることが提案され、全会一致で決定されました。

4.条文の概要(平成25年3月4日更新)

 条文の主な内容は以下のとおりです。なお、説明中の条文番号及び附属書番号は議長テキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.5/3)に従ったものであり、今後整理されます。

(1) 前文

  • 水銀のリスクに対する認識や国際的な水銀対策の推進の必要性、水銀対策を進める際の基本的な考え方について、包括的に盛り込まれた。
  • 水銀対策の重要な背景である水俣病の教訓として、特に水銀汚染によって引き起こされた人の健康及び環境への深刻な影響、水銀の適切な管理の確保の必要性及び同様の公害の再発防止が我が国の提案に沿って盛り込まれた。

(2) 目的(第1条)

  • 水銀及び水銀化合物の人為的な排出から人の健康及び環境を保護すること。

(3) 水銀供給の削減と国際貿易の削減(第3条)

  • 水銀の一次鉱出(水銀を鉱出することを一義的な目的とする鉱出活動)に関して、新規鉱山開発については条約発効後に禁止し、既存の鉱山からの鉱出については条約発効から15年以内に禁止。
  • 水銀の貿易(金属水銀の貿易に限定し、水銀化合物の貿易は対象外)について、水銀の輸出は、1)条約上で認められた用途、2)環境上適正な保管(第12条)に限って認める(水銀廃棄物の輸出は第13条とバーゼル条約に従う)。
  • 水銀の輸出に当たっては、輸入国(締約国・非締約国に限らず)の書面での事前同意が必要。ただし、輸入同意意思をあらかじめ事務局に登録した輸入国への輸出は、当該同意意思に基づいて輸出が可能。
  • 非締約国からの輸入については、輸出される水銀が1)新規の一次鉱山からのものでないこと、2)閉鎖した苛性ソーダ製造設備からのものでないことの証明を輸出国が発行しなければ許可されない。

(4) 製品への水銀使用の削減(第6条・8条)

  • 電池、スイッチ・リレー、一定含有量以上の一般照明用蛍光ランプ、石鹸、化粧品、殺虫剤、局所消毒剤、非電化の計測機器(血圧計、体温計、気圧計など)など附属書Cに掲げる水銀含有製品について、2020年までに、その製造、輸出、輸入を禁止する(ただし、一部の用途等を除く)。また、交換部品、研究用途、チメロサール含有ワクチンなどについては対象外とする。(年限については、国によって必要な場合、最大10年間まで延長可)
  • 歯科用アマルガムについて、使用等の削減のための措置を講ずる。
  • 締約国は、禁止された水銀含有製品を組立製品に組み込むことの抑制、水銀を利用した新規製品の製造と販売の抑制、そのような製品の情報の事務局への提案等の措置を講ずる。
  • 締約国会議(COP)は、発効後5年以内に附属書Cのレビューを実施する。

(5) 製造プロセスにおける水銀使用の削減(第7条・8条)

  • 苛性ソーダ製造プロセスでの水銀の使用を2025年までに、アセトアルデヒド製造プロセス*での水銀の使用を2018年までに禁止。(年限については、国によって必要な場合、最大10年間まで延長可)(*水俣病の原因となったプロセス)
  • 塩化ビニルモノマー、ポリウレタンなどの製造プロセスでの水銀の使用を削減するための措置を講ずる。
  • 上記対象プロセス(附属書Dに記載)の既存施設の特定の努力及び排出対策の実施、新規施設での水銀利用の禁止、新規のプロセスにおける水銀利用の抑制、プロセス提案等の措置を講ずる。
  • COPは、条約発効後5年以内に附属書Dのレビューを実施する。

(6) 小規模金採掘(第9条)

  • 小規模金採掘(ASGM)が実施されている締約国はその使用や環境中への放出を削減、可能であれば廃絶するための行動を行う。
  • 小規模金採掘が実施されている国は、事務局にその旨通報した上で、条約発効後3年以内、あるいは事務局への通報後3年以内に国家行動計画を策定・実施するとともに、3年ごとにレビューを実施する。

(7) 大気への排出(第10条)及び水・土壌への放出(第11条)

  • 大気への排出:石炭火力発電所、非鉄金属精錬施設等を対象に、排出削減対策を実施する。新設施設には、BAT(利用可能な最良の技術)/BEP(環境のための最良の慣行)を義務付ける。既存施設には、[1]排出管理目標,[2]排出限度値、[3]BAT/BEP,[4]水銀の排出管理に効果のある複数汚染物質管理戦略及び[5]代替的措置から1つ以上を選択し、実施する。
  • 水・土壌への放出:各国が放出削減の対象となる放出源を特定する。新規・既存施設とも、[1]放出限度値、[2]BAT/BEP、[3]水銀の放出管理に効果のある複数汚染物質管理戦略、[4]代替的措置から1つ以上を選択し、実施する。
  • 各国が自国内の排出・放出インベントリを作成する。
  • COPでBAT/BEP等に関するガイダンスを採択する。

(8) 水銀の環境上適正な一時保管・水銀廃棄物・汚染サイト(第12~14条)

  • 水銀・水銀化合物の一時保管は、COPで作成されるガイドライン等に従って、環境上適正に行う。
  • 水銀廃棄物は、バーゼル条約に基づくガイドラインを考慮し、またCOPが定める必須条件に基づいて、環境上適正に管理される。
  • 汚染サイトは、COPで策定されるガイダンスに基づいて管理される。締約国は汚染サイトの同定と評価のための戦略の構築に努める。

(9) 資金・技術支援(第15・16条)

  • 条約のもとで資金支援を行うための制度(資金メカニズム)を設置する。資金メカニズムには、[1]GEF(地球環境ファシリティ)信託基金及び[2]技術支援・能力強化を支えるための特定の国際的なプログラムが含まれる。
  • COPは、プログラムの優先順位、資金へのアクセスや利用に関する適格性基準、資金援助の対象となるカテゴリーのリスト等に関するガイダンスを作成するほか、定期的に資金の規模等を検証する。
  • 締約国は、協力して途上国、特に後発開発途上国や小島嶼開発途上国に対する能力強化、技術支援、技術移転を実施する。COPは、定期的に代替技術に関する情報収集、途上国におけるニーズの把握、技術移転の課題の特定を行う。

(10)情報交換、研究開発、健康面の対策等(第18条、19条、20条、20条bis)

  • 締約国は、水銀に関する様々な情報交換を促進する。
  • 締約国は、可能な範囲で、水銀に関する様々な情報提供、普及啓発、教育を促進する。
  • 締約国は、各国の事情や能力に応じて、大気排出等のインベントリ策定、人や環境中の水銀濃度に関するモデル予測やモニタリング、水銀が健康や環境に与える影響の評価等の実施・改善について協力に努める。
  • 締約国は、水銀による影響を受ける人々の必要な健康管理の促進等を行うことが奨励される。

(11)その他

  • 締約国は条約上の義務の実行のために、国内実施計画を策定し、実施することができる。(第21条)
  • 条約の補助機関として実施・遵守委員会を組織し、各国の実施の促進、遵守の管理等を行う。(第17条)
  • 条約は50カ国が批准してから90日後に発効する。(第32条)

5.今後のスケジュール

 今回合意された「水銀に関する水俣条約」は、本年2月にナイロビ(ケニア)開催される第27回UNEP管理理事会において報告された後、10月9日(水)~11日(金)に開催される外交会議において、採択・署名される予定です。
2013年2月18-22日第27回UNEP管理理事会に検討結果を報告(ナイロビ(ケニア))
2013年10月外交会議(条約の採択・署名)及び関連会合
・7日(月)及び8日(火):準備会合(熊本市)
・9日(水):外交会議開会セレモニー(現地視察を含む)(水俣市)
・10日(木)及び11日(金):外交会議(熊本市)
連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部企画課

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