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平成25年6月22日環境科学物質へのばく露と子供のこころの健康・・・・・ ダイオキシン摂取が引き起こす行動柔軟性と集団行動の異常

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止めよう!ダイオキシン汚染関西ネット 結成18周年集会


開催日時: 2013/06/22 14:00
タイムゾーン: Asia/Tokyo
「止めよう!ダイオキシン汚染関西ネット」 結成18周年集会

妊娠中にダイオキシンを食べさせる、脳の発達に悪影響
水飲み競争から離脱 水飲み場が変わったらウロウロ
ハツカネズミ実験 人間の子供の脳の発達障害に似ている

講師 遠山千春さん(東京大学医学部)

「環境科学物質へのばく露と子供のこころの健康・・・・・ ダイオキシン摂取が引き起こす行動柔軟性と集団行動の異常」


日時 平成25年6月22日(土曜)14:00~16:30
場所 市民交流センターひがしよどがわ
主催 止めよう!ダイオキシン汚染・関西ネットワーク
問合せ
TEL(夜)/FAX 06-6336-4154 山崎方
メール dioxin.kansai   @gmail.com
http://dioxin-kansainet.blogspot.jp/
 
 
 
 
 
 
イメージ 1


 東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門の遠藤俊裕大学院
生、掛山正心助教、遠山千春教授は、環境化学物質が脳発達に与える影響を動物実験により明
らかにしました。ダイオキシンは、環境・食品中に広く存在している残留性有機汚染物質
(POPs)の一種です。
 ダイオキシンの母胎への取り込みが、生まれてきた子どもの脳発達に影
響を及ぼすことが示唆されていますが、そのメカニズムは十分解明されていません。同部門を
中心とした研究グループは、マウスを集団で飼育しながら行動観察を行う新規の行動試験技術
を開発しました。その結果、微量のダイオキシンを投与された母マウスから生まれたマウスで
は、成熟後において状況変化への適応が遅くかつ社会的競争状況で活動レベルが低下すること
が分かりました。
 さらに、こうした行動異常の背景として、高次の脳機能をつかさどる前頭前
皮質と扁桃体において脳の神経活動のアンバランスが生じていることを突き止めました。
今回の結果は、そのままヒトには適用できませんが、母体・母乳から体内に取り込んだ微
量の化学物質が、子どもの「こころの健康」の発達に影響を及ぼす可能性を示唆しており、今
後より詳しく検討していく必要性があります。

 以上の成果は、環境省・環境技術開発等推進費により 2007 年に研究がスタートし、その後
文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム(以下、脳プロ)の一環として本研究が進められ、
今日の報告に至りました。また曝露実験の一部は厚生労働科学研究費補助金の助成を受けて、
免疫組織化学解析の一部は文部科学省科学研究費補助金、科学技術振興機構・戦略的創造研究
推進事業(CREST)の助成を受けて行われました。この成果は「PLOS ONE」 2012 年 12 月 12 日
オンライン版に掲載されました。


4.発表内容 
【研究の背景】
 近年、自閉症患者の増加、学校生活や社会への不適応行動の増加など、子どもの「こころ
の健康」の問題が教育・医療現場等において頻繁に取り上げられています。このような問題を
引き起こす原因のひとつとして、発達期に環境化学物質を体内に取り込んだことに伴う影響が
示唆されています。今回の研究で取り上げたダイオキシンは、環境・食品中に広く存在してお
り、国際的に環境対策が合意されている残留性有機汚染物質(POPs)の一種です。ダイオキシン
の母胎への取り込みが、生まれてきた子どもの学習・記憶に影響を及ぼすことが疫学研究によ
り示唆されていますが、その実態は解明されていません。
 環境化学物質と「こころの健康」の問題の関連性は、現在ダイオキシンに限らず、ほとん
どの物質について明らかになっていません。その主たる原因は、モデル動物を使ってヒトの
「こころの健康」の問題に直結するような脳機能を評価するための技術が確立していないこと
にありました。

【研究成果の概要】
 東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門の遠藤俊裕大学院
生、掛山正心助教、遠山千春教授らは、ヒトの高次脳機能に相当する認知機能と社会性機能を
調べることができる独自の行動試験技術を開発しました。次に、同研究科神経生化学専攻分野
及び生物統計学専攻分野の研究室との共同研究により、ごく微量のダイオキシンを投与した母
マウスから生まれたマウス(以下、ダイオキシン曝露マウスと記す)について、体内にダイオ
キシンがほとんど無い状態のときに、この行動試験技術を用いて高次脳機能を調べました。

 この試験では、試験装置の四つの水飲み場のうち二か所を正解とし、ここを往復する行動習慣を
マウスに習得させることができます。その後、正解の場所を変更して状況変化への適応力を評
価する「逆転課題」を繰り返し行いました。その結果、ダイオキシン曝露マウスは、行動習慣
の習得はできるものの「逆転課題」の状況変化に対する適応性が低いこと、つまり行動柔軟性
(注2)が低下していることが明らかになりました(図1)。
 また、これらのマウスは、報酬(飲水)獲得のための反応を繰り返す、不必要な「反復行動」も見られました。この反復行動
は、報酬(飲水)が得られた正解の場所において特に多く観察されたことから、欲求の抑制が
できない時に生じるような行動パターンの異常だと考えられます。

 こうした行動柔軟性の低下、不要な反復行動は、高次脳機能の中でも「実行機能」という、
目的達成のための適切な手段を選び自己をコントロールして適切な行動をとる脳機能システム
が破綻していることに起因すると考えられます。「実行機能」の異常は、様々な精神疾患にお
いても観察されます。

 さらに本研究では、マウス社会性行動の指標も新たに開発しました。今回の行動試験では、
試験装置 1 台あたり 12 匹のマウスを集団生活させ、行動パターン解析を行いました。1 日の
うち数分間だけ大勢で水飲み場を奪い合う社会的競争状況を作ったところ、ダイオキシン曝露
マウスは、この社会的競争状況においてのみ活動レベルが低下していました。(図2)。この
ような症状は、報酬に対する欲求よりも、他者との接触に伴うストレスを避けているためと考
えることができ、自閉症スペクトラム障害や不安障害を有する人における他者との接触を避け
る傾向と似ている可能性があります。


 次に、神経活動の指標である Arc の脳における発現の分布を免疫組織化学手法(注3)によ
り調べました。ダイオキシンを摂取した母親から生まれ、行動異常が観察されたマウスでは、
Arc の量は、前頭前皮質において減少し扁桃体では増加していました。すなわち、これらのマ
ウスでは前頭前皮質の神経活動の低下と、扁桃体の神経活動の亢進があることが判明しました。
前頭前皮質は、行動柔軟性や社会性行動といった認知機能をコントロールし、また扁桃体は恐
怖や不安といった情動反応をつかさどる脳領域として知られており、これら二領域は神経線維
により密接に連絡しています。ヒトの臨床的研究でも、強迫性障害や不安障害、心的外傷後ス
トレス障害(PTSD)、統合失調症患者などで、「前頭前皮質と扁桃体の機能的協調性の破た
ん」が報告されてきました。自閉症スペクトラム障害を有する人において前頭前皮質の活動不
全と扁桃体の活動亢進があることも最近報告されています(同研究科 精神医学専攻分野 山末
英典准教授らによる「脳プロ」での成果報告)。

 今回明らかになったダイオキシン曝露によるマウスの脳と行動の異常に関する知見は、微
量の環境化学物質の体内への取り込みが子どもの「こころの健康」を害することを示す初めて
の科学的根拠であり、化学物質が自閉症症状など発達障害の発症や重症化の要因となる可能性
を強く示唆するものです。

【社会的意義と今後の展望など】
・ダイオキシン健康影響に関して:マウスを用いた実験研究として、これまで毒性影響が確
認されていた曝露量よりもはるかに低い量での影響報告であること、科学的根拠に乏し
かった脳と行動への影響に関する知見は、ダイオキシンはじめ環境化学物質の健康リス
ク評価や対策において、国際的に役立つ成果です。

・化学物質と子どもの「こころの健康」の問題との関連性に関して:社会の懸念が高まる一
方で科学的根拠に乏しかったこの問題に関して実験的証拠を提示したことは、学術的意
義が高いと同時に、地道な研究活動の積み重ねが社会貢献に向かって大きく一歩を踏み
出したという点で、大きな成果だと言えます。今後この問題に関する科学的議論が活性
化することが期待されます。

・開発したマウス行動解析技術に関して:本研究によって確立されたマウスの行動試験技術
は、環境化学物質の健康リスク評価、遺伝・環境要因による発達障害・精神疾患モデル
マウスを用いた疾患研究、ならびに創薬・治療法の検証のために応用可能なものです。

5.発表雑誌 
雑誌名: 「PLOS ONE」(12月12日オンライン版)
論文タイトル: Executive Function Deficits and Social-Behavioral Abnormality in Mice 
Exposed to a Low Dose of Dioxin In Utero and via Lactation
著 者: 遠藤俊裕、掛山正心、上村夕香里、島旭、奥野浩行、尾藤晴彦、遠山千春

【参照 URL】
PLOS ONE ホームページ:
 http://www.plosone.org/home.action






東京大学(東大)は12月13日、微量のダイオキシンを投与した母マウスから生まれたマウスを用い、独自開発の行動試験を行った結果、仔マウスが成長後に、脳の柔軟性の低下と集団行動の異常が生じること、そしてその背景に脳活動のアンバランスがあることを解明したと発表した。
同成果は同大大学院医学系研究科の遠藤俊裕 博士課程3年、同大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門の掛山正心 助教、同大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門の遠山千春 教授らによるもの。詳細はオープンアクセスの査読つきの科学雑誌「PLoS ONE」に掲載された。
近年、自閉症患者の増加、学校生活や社会への不適応行動の増加など、子どもの「こころの健康」の問題が教育・医療現場などにおける問題となっているが、その原因の1つとして、発達期に環境化学物質を体内に取り込んだことに伴う影響が示唆されるようになってきた。
ダイオキシンは、環境・食品中に広く存在しており、国際的に環境対策が合意されている残留性有機汚染物質(POPs)の一種。ダイオキシンの母胎への取り込みが、生まれてきた子どもの学習・記憶に影響を及ぼすことが疫学研究により示唆されているが、そのメカニズムは十分に解明されているとは言えない状況であった。
また、環境化学物質と「こころの健康」の問題の関連性は、ダイオキシンに限らず、ほとんどの物質について明らかになっていまいのが現状だが、その主たる原因は、モデル動物を使ってヒトの「こころの健康」の問題に直結するような脳機能を評価するための技術が確立していないことにあった。
そこで研究チームは、ヒトの高次脳機能に相当する認知機能と社会性機能を調べることができる独自の行動試験技術を開発し、同大の研究科神経生化学専攻分野および生物統計学専攻分野の研究室との共同研究により、ごく微量のダイオキシンを投与した母マウスから生まれたマウス(ダイオキシン曝露マウス)について、体内にダイオキシンがほとんど無い状態のときに、この行動試験技術を用いて高次脳機能の調査を行った。

行動柔軟性の説明図の説明図


社会的競争状況での活動レベル低下


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