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[転載]朝鮮総督府の窮民救済土木事業(昭和7年)

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久しぶりに京城日報の朝鮮総督府の広報を読んで見ます。地方自治の体制整備と不況による窮民救済のための土木事業が語られています。収奪などではなく、日本内地でやることと同じことをやっているのが分かります。
 なお、元データは神戸大学附属図書館が電子化されたものですが、例によってそれをさらに私が、読みやすいようにテキトーに現代文ふうに一部書き換えました。
 
 
 
窮民事業の趣旨達成に努力  計画をめぐらせて邁進
(朝鮮総督府)内務局長 牛島省三
 
新聞記事文庫社会事情(6-116)
京城日報 1932.1.1(昭和7)
 
地方自治の発達は官民の和衷協同と公民教育の向上を必要とする。内外ともに多事であった昭和6年を送り、鶏声暁を報じて乾坤一擲ここに朝鮮赴任後初めての新春を迎え、麗しい旭光に浴して清新の気自ら湧くの感がする。
 畏くも、昨秋皇大神宮から朝鮮神宮ほか五神社に撤下御神宝を御下付になり、今回新たに朝鮮内の主要都邑所在の神社に対して相当広範囲にわたって御下付になる運びとなったのであるが、時あたかもこの新春を期して伝達されることとなったのは、偶然とは言いながら何かの瑞兆とも言えよう。重ね重ね光栄とすべきである。謹みて按ずるに、帝国の至尊至貴にまします皇大神宮の撤下御紳宝を一般神社に対して御下付になったことは、古来かつてその例なく、御下付の範囲も外地の一部の神社に限られたのであって、朝鮮における神社として無上の光栄であり、また、当該神社の沿革史上著しい由緒を形づくることはもちろん、一般の崇敬者に対し敬神崇祖の念を喚起する上に偉大な反響をもたらしたのであった。今回第二校の追加御下付の機会において一層敬神の念を喚起し、いよいよもって国体観念の基調を強固にしたいと思う。特に思想界の現状に鑑み、その感を深くするものである。
 
 朝鮮統治史上に一新紀元を期すべき改正地方制度も実施後一年めの試練を経た。この画期的な改正制度実施後の運用については内外等しくその成り行きを注目しつつあったのであるが、たまたま実施後間もなくその任に当たることとなった私もまた、日夜、所期の成績を挙げるよう念じたのであった。
第一次の府邑会議員、村協議会員及び学校評議会員の選挙執行の状況によってその一端を見れば、一般的には改正制度を歓迎し、府・郡・邑・面とも何らの事故なく、選挙は最も厳粛にかつ円満に行われ、無効投票などは極めて少なく、また選挙の際往々にして起る思想的策動などはいささかも之を認めず、運動者及び有権者もまた一般に選挙取締規則を遵守し、少数の犯法行為を除くほか支障なく終了した。そして、府会及び邑会は成立後いずれも初会議を開き、会議規則の制定、事務検閲、出納検査委員等を選定し、府会においては副議長を選挙するなど陣容は既に整い、非常に緊張の気に満ちて予期以上の成績を収め、民心もまたこれによって一新の兆しを見せたのであった。
 
かつて内地における市町村制施行の当時においては、制度の運営上相当の困難をたどったのであったが、今回の朝鮮の制度改正に当たって予期の成績を収め得たことは、一つは著しく進んで来た文化の環境が然らしめた関係も多分にあるに違いないが、要するに官民一致の協力によるものと信じ、深く敬意を表するものである。
 
しかしながら、今次の改正制度は完全なる自治制度への一段階であって、地方行政は未来永劫である。この際、任に当たる者が一歩その運用を過れば各般の施策に影響し、地方の発展を阻害するなどその弊害の及ぶところは測るべからざるものがある。一方、直接これに参与する地方民諸氏の制度活用のいかんは、これまた地方行政の成否に重大なる結果を及ぼすものであると考える。また、一般民衆の自冶行政に対する理解の有無も大いに関係があることも見逃がしてはならない。
 
つまり、地方行政の振興は使い古された言葉ではあるが、一に官民一致の和衷協力と公民教育の普及徹底にあると叫びたいのである。一般財界の不況の深刻化とともに総督府の特別会計並びに各公共団体自体も歳入が激減して各事業費が削減されるのやむなきに至った。中もで特に土木事業は相当の減額を見たのみならず、年度中途において予算の節約と繰り延べを実行し、著しく実行予算が減少したので既定計画の工事進捗に非常な支障を来たしたのである。その対策として極力施工法の合理化、工事材料品及び機械器具の経済的調達、労力の利導等に最善の工夫をこらしたのであった。
 
 しかしながら、一方では、たびたび上司によって声明発表されたいわゆる窮民救済事業としての土木工事は、その趣旨である財界不況によって困窮に瀕した地方民を救済するという社会政策的見地から継続費として1950万円が充てられ、結局、昭和6年度の土木事業はその量においてかえって増額されているのである。この事業の実施による賃金分配によって地方民の生活は次第に潤いを見せ、民間購買力もやや増進し、商況も活気を呈し、また納税成績にも影響を及ぼした地方も見受けられるのであった。特に、賭博犯や浮浪者の警察事件が減少した事実があると言うに至っては、まことに本事業の有意義さを物語っているものと思う。本事業によって得た賃金の一部は必ずこれを貯畜させることとして奨励に努めた結果、その間相当の困難に逢ったが次第に理解されるようになって、今や貯蓄額も相当の額に上っている状態である。来る昭和7年度においても本年度同様一般土木事業費は相当の削減を見ることとなるが、窮民救済事業だけは縮小されることなく既定通り進捗されるのであるから、この点我々は大いに意を強くして事業の趣旨達成に努力すべきである。
 
以上の如く窮民救済事業によってあまねく地方民の救済に努め、以て当面の急を補っているのであるが、一方、従来から実施されている一般的社会事業すなわち施薬救済、罹災救助、窺民救助、行旅病人救護及び孤貧児養育等の救貧事業は主として恩賜金を以て経営され、中でも欧洲大戦以来公設市場、公設住宅、公益質屋、小資貸付、職業紹介、人事相談、共同宿泊、簡易食堂、共同浴場等などの防貧事業の企画経営が漸次増加しつつあるから、今後もこの方面の設備なり機関なりが相当発達すると思うが、私はさらに一歩進んで、現代の世相に鑑み、精神的方面すなわち思想の善導、青少年の指導、民風の作興、生活改善等についても先に述べた公民教育と相まってその拡充に力を注ぎ、もって共存共栄の実跡を挙げたいと思う。
 
以上は私の所管事務に関しての所感と希望の一端を述べたのであるが、我々は今まさに満州の荒野で酷寒と戦う将士の労苦を偲び、せめて内に在るものは各々その業務に精進し、明治大帝の御製、
 
国のため いよいよ励め ちよろづ(千万)
民も心を ひとつにして

を拝誦し、各位とともにこの元旦に当たり、大いに計画を巡らせて邁進したいと思う。
 
 
元のデータ作成:2009.4 神戸大学附属図書館
 

転載元: 日韓近代史資料集


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