食品偽装リスクを平時に認識していた企業に学ぶ不正リスク管理
食材の虚偽表示問題について、消費者庁は企業の内部統制システムの整備を強化する方向性で景表法改正を検討していると報じられています(たとえば毎日新聞ニュースはこちらです)。メニュー表示のチェック部門の設置や表示に関する責任者の設置など、社内の監視体制の強化が義務つけられる可能性があるようです。
食品偽装問題が景表法の改正問題にまで発展する事態にまで至ったわけですが、私自身もあるホテルのメニュー偽装問題のアドバイザーとして関わった印象からしますと、実際のところ経営者がメニュー偽装という不祥事リスクの存在を認識していなかったように感じます。百貨店にせよ、外食にせよ、産地偽装のように他人の営業努力にフリーライドすることの問題は理解していたと思いますが、そこに至らない程度の不一致は「許された演出」と認識していたところも多かったのではないでしょうか。
とくに社内調査の結果として、メニューと食材の不一致が存在したことが判明した企業のうち、どれだけの企業が不一致を公表したのでしょうか。おそらく外食チェーンを含め、公表せずにこっそりとメニューを変えただけの企業も多かったのではないかと推測します。
もちろんメニュー偽装は消費者、顧客の方々に対する裏切り行為であることは当然です。どこの企業でも、社内でもメニュー偽装が判明した時点で、すぐにメニューを改定し、今後は同様のことが起きないように再発防止策を検討しています。しかし、果たして「食材とメニューに不一致が生じるリスク」というものを、平時に(今回の問題が大きく報じられる前に)どれだけの企業が重大リスクとして認識していたかと言えば、あまり危機意識を持っていた企業は少なかったのではないでしょうか。
食材原価をできるだけ低くして、一方できるだけ美味しそうなメニューを表示して顧客に喜んでもらうことについてはどこの企業でも同じ意識で競争しています。問題は、食材とメニューの不一致について判断する場合、「許される演出」と「許されない偽装」の境界線は極めてあいまいであり、また人によって判断が変わりうるということです。
したがって、景表法を改正して、上からの規制で食品偽装を規制したとしても(そもそも境界線があいまいなわけですから)同じ問題は残るわけで、法令違反の有無よりも、顧客の信頼を裏切る行為か否かが問題となった今回の事件と同様、今後も食品偽装不祥事は間違いなく発生します。
もし従来から経営者がメニュー偽装が大きな不正リスクであるということを認識していたのであれば、今回の不祥事は起こしていないはずです。なぜなら、この「境界線があいまい」ということのリスクを知っていて、常に現場に警告を発していたからです。警告を発していれば、ときどきは偽装の疑いがある判断にブレたとしても、誰かの指示でまた正常なラインにまでブレが戻ってきます。
しかし不正リスクの重大性を認識していない組織では、現場はできるだけ原価を抑えること、顧客に喜ばれるメニューを表示することがミッションですから、歯止めがなければこのブレが次第に偽装の色が濃いゾーンにまで傾いてしまい、社内の常識・社外の非常識の様相を呈してきます。気が付いた時には、社内から内部告発がなされていた・・・ということで問題が発覚します。
大阪の名門のホテルが「社内調査で不一致が判明したが、公表の必要があるとは思ってもいなかった」と正直に会見で述べておられましたが、これは正直な感想かと思います。今回の食品偽装問題では、企業の有事対応に焦点があたることが多かったのですが、では平時からどうすればよかったのか・・・ということを改めて考えると、意外に未然防止がむずかしいことがわかります。
おそらく誰か個人のミスに起因する不祥事ではなく、組織の構造的な欠陥に起因する不祥事だからです。顧客から信頼を失ってしまうような不祥事とは、いったいどのような場面なのか、平時から不正リスクを洗い出して評価することの重要性を痛感します。とくに誰かの法令違反やミスではなく、どのような行為が企業風土を映し出す鏡になってしまうのか、ということに思いを巡らすことが大切だと思います。
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