中国の耕地、日本全国の5倍が「汚染物質基準以上」・
2014-06-06
中国では「食の安全」が足元から崩れつつある。土壌汚染だ。耕作地2328万1000ヘクタール余りで、カドミウム、ニッケル、銅、ヒ素、水銀、鉛、DDT、芳香族炭化水素などの汚染物質の含有量が国の基準を超えていることが分かった。
同面積は2012年における日本の耕地面積合計、454万9000ヘクタールの約5.1倍だ。
土壌汚染の改善で効果を出すのには、ごく大雑把な見積もりで10兆元程度はかかるという。中国の国家予算では、2011-15年の5年間で300億元しか投じられない。単純計算して、改善には1667年が必要ということになる。
中国政府の環境保護部や国土資源局などが2005年から13年までの約8年間をかけてまとめた「全国土壌汚染状況調査公報」によると、香港や澳門(マカオ)を除く全国各地で630万平方キロメートルの土地の汚染状況を調べたところ、基準以上の汚染物質が検出された面積は調査地域の16.1%に相当する、約101万平方キロメートルだった。
日本の国土面積の3倍近い広さだ。 汚染の程度は「軽微」が11.2%、「軽度」が2.3%、「中度」が1.5%、「重度」が1.1%だった。 農業関連では、全耕作地面積の1億2000万ヘクタール19.4%に相当する、2328万1164ヘクタールで基準を上回る汚染物質が検出された。統計局(日本)によると、平成24年(1912年)における日本の耕地面積合計は454万9000ヘクタールだった。
中国では日本の田畑、果樹園、牧草地などすべての耕作地の約5.1%で基準以上の汚染物質が存在することになる(耕作地の総面積については、やや異なる数字もある)。 汚染の程度は「軽微」が13.7%、「軽度」が2.8%、「中度」が1.8%、「重度」が1.1%だった。うち、「中度」と「重度」の2.9%(約348ヘクタール)は「もはや農業生産には不向き」とされる。収穫物から基準以上の汚染物質が検出されることが常態化し、流通させることができなくなるからだ。
「全国土壌汚染状況調査公報」で測定の対象になった汚染物質は、無機物ではカドミウム、水銀、ヒ素、銅、鉛、クロム、亜鉛、ニッケルの6種、有機物では農薬に使われるジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、ベンゼンヘキサクロライド(BHC)、多くの場合石油製品に由来する多環芳香族炭化水素(PAH)の3種を調べた。 中国青年報は6日付で改めて、「全国土壌汚染状況調査公報」などにもとづき、土地汚染の現状を警告する記事を掲載。中国ではすべての耕作地が汚染問題で「ぎりぎりの水準」に追い込まれていると評した。 南京農業大学の潘根興教授の調査によると、中国の市場に出回っている米の約10%が、基準を上回るカドミウムを含んでいることが分かった。カドミウム米を食べ続けると、腎臓などに障害が出る可能性があり、しかもカドミウム米の食用をやめても、症状は出続けるという。
土壌汚染の最大の原因は鉱工業だ。しかも、廃棄物の扱いがずさんだったり、法令違反の事例が多いことが、汚染に拍車をかけてきた。農業分野でも農薬や化学肥料の大量使用が土壌の汚染を招いている。中国の耕地面積は全世界の10%に満たないが、全世界で化学肥料の約3分の1が中国で使用されていると言われる。 政府調べによると、中国における化学肥料の有効使用率は35%という。中央政府・環境保護部生態司の荘国泰司長も、無駄になる65%の化学肥料について「汚染物質として環境中のとどまることになる」と憂慮を示した。中国では農薬の有効使用率はさらに低く、30%程度と見積もられている。
中央政府も土壌汚染の深刻さを認識している。荘司長長によると、汚染状態の改善には膨大な資金がかかることが問題あり、「何兆元、何十兆元の資金を投入して、やっと成果を出すことができる(1兆元は約16兆円)」という。中国政府が2011年12月に発表した環境保護についての計画によると、第12期5カ年計画期間の2011-2015年に土壌汚染の改善のための中央財政の予算額は300億元(4912億円)だった。
********** ◆解説◆ 中央政府・環境保護部による土壌汚染の調査は、かなり大規模なものと評価することができるが、土壌汚染の全容を解明したとは言えない。農薬についてもごく一部の物質だけが対象だ。無機物についても対象になったのは重金属8種だけで、例えばレアアース採掘の副産物として発生するトリウムの問題には触れられていない。
トリウムは放射性物質で、中国のレアアース産地では深刻なトリウム汚染が発生しているとされる。中国が世界最大のレアアース産地になったのは、米国など他の資源埋蔵国では環境問題への配慮から、トリウムの処理に膨大な費用をかけたのに対し、中国は「垂れ流し状態」で生産したのでコスト安になり、価格競争で他の国を圧倒したからという事情がある。
中国では1990年代の改革開放の本格化以来、あらゆる産業で「とにかく安く作り、多く売る」ことで利益を出してきた。そのツケを払わねばならなくなったと言える。 中国では政府要人までもが環境問題について「中国で生産することにより先進国の企業は巨大な利益を上げた。したがって、環境問題の改善のために先進国側も応分の負担をすべきだ」と主張することがある。
しかし、外国資本を含め、企業活動を認めたのは中国自身だったはずだ。中国の政府関係者が好む言い方を使うならば、「中国は、神聖不可分の自国領土内に対する主権を行使して、企業活動を許してきた。争う余地のない主権を行使して、環境問題を野放しにしてきた」ということになる。
国内外を含め、多くの人の健康に直接かかわる事情を考えれば、環境問題で他国の支援を乞うのはよいだろう。他国が環境問題で中国を支援することには、たしかに意味がある。しかし、事態をここまで悪化させた責任は、あくまでも「主権国家たる中国」ということになる。
さらに言えば、中国は環境問題をないがしろにした改革開放を本格化させてからの「歴史を痛切に、真剣に反省する」必要がある。反省がなければ、再び「同じ道」を歩む恐れがある。他国としては、環境問題で中国を支援する意味に疑問がでてくる。
また、「自国における環境破壊の歴史を鑑(かがみ)とし、教訓とすることがなければ」、環境問題で影響が増大しつつある周辺国の「人民の感情を、いちじるしく傷つける」ことになるだろう。 環境問題について、中国政府の危機感がどこまであるか。疑問が残る。環境保護部生態司の荘国泰司長が口にした「何兆元、何十兆元」という数字は、「それだけ費やせば大丈夫」という金額でなく「やっと成果が出せる」数字だ。しかも、中国政府が組んだ予算はいかにも小さい。
仮に土壌の汚染問題の改善に10兆元の費用が必要とするならば、300億元の金額は0.3%に相当する。金額の尺度を変えて例えれば、「どうしても買う必要がある品物の値段が1000円。しかし、3円しか準備していない」ということになる。 別の言い方をすれば、仮にこれ以上土壌汚染が進行しないとしても、現在の予算で汚染問題について「やっと成果をだす」ためには、1667年が必要なことになる。ちなみに、中国の2014年の中央国防予算は8082億元だった。環境保護の予算と国防費を単純に比較する無理を承知で言えば、両分野には「国民の命が失われることを防ぐ」とういう面で共通の性格があるはずだ。 中国の環境問題は、中国人が古来から最も忌み嫌うという、「断子絶孫(ドゥアンヅ・ヂュエスン=子孫が絶え果てる)」という事態を招きかねない状態だ。
華東理工大学と同済大学、清華大学の所属機関が共同で作成し、このほど発表した研究報告によると、中国各地の川や湖などの地表水を調べたところ、抗生物質やホルモン剤など医薬成分158種が検出された。主たる汚染源についてはさまざまな考えがあるが、淡水における養殖漁業における大量使用を指摘する声がある。多種にわたる薬物の人体などへの影響については科学的にも解明されていない。中国は「環境汚染のツケ」を抱え込み、ためつつある。中国新聞社が報じた。
報告によると、検出された薬物のうち抗生物質は68種、非抗生物質類は90種だった。検出例の上位10位まではいずれも抗生物質だった。珠江(流域は広東省)、黄浦江(流域は上海市)では、検出率が100%の抗生物質もあった。先進国における検出濃度が水1リットル当たり20ナノグラムであるのに対し、1グラム当たり数百ナノグラムが検出されるなど、「けた違いの汚染状態」を示す抗生物質もあった。
中国の川や湖で抗生物質汚染が進んでいる原因のひとつとしては、同国が「世界最悪の乱用大国」であることが挙げられる。西側国家では、抗生物質の生産量は薬品類の30%程度だが、中国の場合には70%に達するとされる。
また、中国では魚やカニ、エビなどの淡水養殖漁業が盛んだが、速く成長させたり病気を予防しようとして、大量の抗生物質やホルモンを養殖池に投下する。
各種薬品の汚染源としては、汚水処理場、牧畜業、製薬会社や医療機関、農業などが考えられるが、「ホルモンと抗生物質については水産養殖業が主な汚染源」とみなす専門家がいる。 抗生物質などを大量に摂取しつづければ、健康への影響が懸念されることになる。しかし、多種にわたる薬物の人体などへの複合的な影響については科学的にも解明されていない。中国は「環境汚染のツケ」を抱え込み、ためつつある。将来にわたって影響を受けるのは中国だけでなく、周辺国ひいては地球全体ということになる。
2014-04-28
江蘇省で25日に放送されたテレビとインターネットの生放送番組でハプニングが起こった。同省淮安市市政府各部門の責任者、担当者が住民の訴えを聞く番組だったが、登場した住民女性がステージの上で市環境保護局局長らに向かって跪(ひざまず)いて川の汚染問題の解決を訴えた。会場には女性が住む清浦区の史衛東常務副区長もいたが、問題の川について「そういう川があったのは、よく知らなかったんですけど」などと発言したので、インターネットでは、ビェン局長の発言について、あまりにも無責任などとする批判が殺到した。
女性は男女の司会者に呼び出され、客席からステージ上に登った。女性の出演そのものはハプニングではなく、番組の進行で予定されていたと考えられる。女性はマイクを渡される前からかなり興奮しており、泣きながら市内を流れる柴米河の汚染のひどさを訴えた。
女性は司会者に黒く濁った水の入ったペットボトルを渡した。柴米河の水という。女性が泣きながら訴え続けているので、司会者は「落ち着いてくださいね。この問題は必ず解決しますから」などとなだめた。 男性司会者がペットボトルのふたを開けて臭いを嗅いだ。「非常に臭いです」と言って、ステージに設けられた席に座る同市環境保護局のビェン愛武局長らに手渡した。司会者が「この女性は泣いて訴えました。関係部門には真に解決してもらえるはずです」と言い、女性に改めて「何かほかに、訴えることはありますか」と尋ねた。女性はビェン局長に向かっていきなり跪いて、問題の解決を哀願した。
司会者がすぐに女性を立ち上がらせたが、女性は再び涙を流し、「毎日、臭うんです」、「私自身のためではありません。私は歳もとりましたから死んでも構いません。でも、子どもがいるんです。こんな土地で成長せねばならないんです」、「だれも、こうやって局長に訴える勇気はありません。だから、私が来ました」などと訴えた。 司会者が「この問題は必ず解決しますから」などと女性をなだめたが、女性は顔を覆って泣いた。司会者は会場にいた清浦区の史常務副区長に、「今、女性がステージで泣いて訴えました。あなたにも、お感じになったことが多いでしょう」と発言を求めた。
史常務副区長は、「このような活動に参加したことは、私にとって極めて深刻な教育でした」と発言。さらに「われわれの清浦区に、このような川があったと言うことは……」と言いかけたところで、司会者が「あなたは、この川のことを知っていましたか」とさえぎって問いかけると、史常務副区長は「よく知りませんでした」と答えた。 史常務副区長は続けて、国家の生態保護区の近くにこのような川があったことは、まことに残念、残念なことです」と述べ、改善を約束した。
史常務副区長は「汚染源への対策が必要」、「とにかく汚染源が問題であり」などと繰り返すと、今度は女性司会者が割って入って「さきほどの女性の代わりにうかがいます。庶民にとっていつごろ改善が、目に見える改善がなされるのでしょう」と質問。
史常務副区長は「今言えることは、とにかく早くです。それだけです」と回答。男性司会者は「ふつうなら私は、『とにかく早く』では納得できないのですが、今回は、これ以上(具体的な約束)は無理なようですね。なぜなら、あなたは今のところ、状況をご存知ないのですから」と述べた。
司会者は史常務副区長に対して「河川の環境問題は、建物を撤去するようにはいかな。取り壊せば済むということではありません。時間が必要です」、「先ほどの女性に今度出演していただく機会があれば、今度は笑顔を見せてもらえるようにしてください」と史常務副区長にに注文をつけて、別の話題に移った。
簡易ブログの微博(ウエイボー、中国版ツイッター)でも、同番組の話題が取り上げられた。寄せられた書き込みの多くは「こんな区長(常務副区長)がいるなんて、震えがきた」、「こんな無責任な指導者はクビにしろ」など、史常務副区長への批判だ。 「柴米河の問題ではうらやましいよ。跪いて訴える市民がいるんだからな。汚染問題で淮安はいつも、全国一になるからね。まだなんとかしなきゃいけないことは、多いんだよ」といった書き込みもある。
環境問題が深刻な中国では、汚水処理場の建設にも力が入れられている。しかし多くの汚水処理場が、処理済の水が環境基準を満たしておらず、事実上の「水汚染源」になっているという。中国新聞社が報じた。
中国では2013年末までに、全国で651カ所の汚水処理場が建設された。都市の99.1%に汚水処理場が設けられたことになるという。県レベルの行政区域を含めれば、これまでに累計3513カ所の汚水処理場が建設された。
しかし一方では、汚水処理場から排出される水が環境基準を満たしていなかったケースが続出している。 安徽省環境保護庁は3月、淮南首創水務有限責任公司が運営する八公山污水処理上を、環境基準を満たしていないとして「重要な監視対象」とみなして改善を求め続けることにした。
同処理場は2008年8月に完成したが、当局の検査と許可を得ずに“汚水処理”をしていた。同処理場は消毒施設も稼働させておらず、放出している水に含まれるアンモニア態窒素は基準の1.4倍以上、人や動物の便に由来する大腸菌は24倍以上だった。
江蘇省では2013年、環境保護庁が汚染水垂れ流しで環境に深刻な影響を与えているとして実名を公表した「重点監督」の対象56社のうち、汚水処理場が全体の7割以上を占める40社だった。
安徽省住房和城郷建設庁(住居と都市建設庁)都市建設処調査研究員の張敬玉氏は、「現在の汚染処理場で問題が出ているのは主に大腸菌と浮遊物」と説明、生物化学的酸素要求量、リン総量、窒素総量では、「合格している場合が比較的多い」という。 張氏によると、現在適用されている排水の基準は2006年に制定されたもので、それ以前に建設された汚水処理場が、能力面で06年基準を想定していなかったことも、排出基準を満たせない汚水処理場が多い一因という。
中国では多くの地方政府が、汚水処理事業を企業に委託している。業界内からは、「汚水処理事業では大きな利益を上げられず、企業として存続が困難。基準が変更になっても、新たな設備のための投資ができないことも、「基準違反」が多発している原因という。一部の汚水処理場は、公式の基準を引き下げた“自主基準”を制定して総合しているという。
合肥工業大学資源と環境工程学院(安徽省)の汪家権教授は、「本来は環境保護施設である汚水処理場で、放出する水が基準を満たさない事例は、各地にあまねく存在する」、「環境保護施設が汚染源になっている」と、危機感を示した。(編集担当:如月隼人)
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