【2020年の世界と日本】
櫻井よしこ氏に聞く(上)「中華思想に凝り固まった中国が動きを活発化」
東京で五輪が開催される2020(平成32)年には、日本と世界はどうなっているだろうか-。産経新聞の長期連載「2020年」に合わせ、ジャーナリストの櫻井よしこ氏に聞いた。
--東京五輪が開催される2020年。世界はどうなっていると思いますか
「世界は様変わりしていると思いますよ。その特徴として戦後の日本の体制を支えてきた価値観がおよそ全て根幹から覆されていると思います。具体的にアメリカが内向きになっているということです。但し、これは必ずしもアメリカの衰退ではありません。
よく『アメリカが衰退している』といわれますが、アメリカは十分に力を持っています。2020年のアメリカは、シェールガス革命でエネルギーの需給をほぼ達成できる見通しがついており、世界最大のエネルギー産出国としてエネルギー輸出国になっています。おそらく世界最大の軍事大国でもあり続けているでしょうし、世界最大の教育大国でもあるでしょう。
大学にしても、若い世代の知的頭脳人口の流入にしても、技術水準においても、アメリカを凌駕(りょうが)する国はまだ生まれてはいないと思います。彼らが掲げる建国以来の民主主義に取って代わる価値観も生まれてはいないと思います」
「でも、アメリカの人種構成は、いわゆるホワイト・アングロサクソン・プロテスタントが徐々に少数派になって、ヒスパニック、中国系、韓国系や、アフリカ系の人たちが比率として多数を占めるというふうに変化しています。するとアメリカの価値観も変わっていくことでしょう。
プロテスタント、キリスト教の一神教と彼らの価値観、『自主独立』『自由』『民主主義』といったものをアメリカは今まで一生懸命に守ろうとしてきて、外に対してもそうした価値観を広げてきました。そのことが「価値観の押しつけ」とも受けとめられてきましたが、良きにつけ悪しきにつけそのようなことがなくなっていくと思います」
「他の先進諸国、ヨーロッパもオーストラリアもみんなそうですけれども、そうした国々の支援を得て、日本は『海洋国家連合』というような協力関係を作り上げていくべきです。アメリカも海洋国家ですね。アメリカ、出来うるならば朝鮮半島、日本、台湾、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中東の国々などと価値観を基準にして連携をしていくことが大事です。連携をするときに日本が大事にしてきた日本なりの人間に対する優しさとか、環境に対する配慮の深さとか、生真面目なまでに法律を守るという順法精神、日本本来のすごく良い価値観をさまざまなところに基軸として置き、その日本の価値観を具現化するような政策を推進することが大事だと思いますよね。日本が体現してきた価値観は、中国と、全ての面において正反対です。だから中国と日本はこれだけ違う、全く違いますよと示していけばいいと思います」
--他国に「中国と日本のどちらがよいか」と提示ができるくらいまで国力を高めていく必要があるということですね
「そうです。いろんな国の意見を聞くと、中国は怖い。何かというとわーっとお金を使っていじめるし、軍事を見せつけて恫喝する。中国の前ではみんな物を言えないんですよ。で日本の前では、『あれをしてくれ』『これをしてくれ』と。それ日本にとって、すごくいいことだと思う。どの国も中国を恐れはするけれども尊敬はしない。反発はするけれど愛しはしない。私は日本は愛される国だと思いますから、そのことを大事にしたらいいと思いますよね。日本は確かに諸外国から愛されているし、尊敬されている国なのです」
=(下)に続く