Quantcast
Channel: 持続可能な開発(水・土・廃棄物)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2268

干ばつが招く地下水の枯渇

$
0
0

干ばつが招く地下水の枯渇

2014年08月21日
夕暮れ時のラスベガスを背景にした、アメリカ最大の人造ダム「ミード湖」。コロラド川流域では、10年間にミード湖2つ分に相当する水が失われた。
<br>



<br>




Photograph by Peter Essick / National Geographic
夕暮れ時のラスベガスを背景にした、アメリカ最大の人造ダム「ミード湖」。コロラド川流域では、10年間にミード湖2つ分に相当する水が失われた。

Photograph by Peter Essick / National Geographic
 干ばつによる水不足を補うため地下水に頼るアメリカで、将来のリスクが懸念されている。

 地表の湖や川、貯水池が干ばつで干上がった場合、帯水層からくみ上げて補うことができる地下水。アメリカ西部をはじめ世界の乾燥地帯では、今や再生困難と化した地下水源が持続不可能なペースで縮小している。

 目に見える脅威や困難に直面した場合、全力を尽くして生き残りを図るのが生存本能だ。水かさが急増する洪水や接近する危険な敵はもちろん、渋滞にはまる直前で高速道路の出口が見えたときも、迫り来る危機に気付いて対応する。

 一方、直接身に降りかからない脅威や、いつの間にか損なわれた自然環境は、われわれは見逃しがちだ。二酸化炭素が大気の化学構造を変化させ温暖化を招いていると言われても、なかなか理解できない人が今でも大勢いる。目に見えない危機、ほとんど視界に入らないリスクは、いつのまにか意識外に追いやられ、奮起して対応するまでに至らないケースが多い。消えゆく地下水もその好例と言えるだろう。

 帯水層はいわば地下の貯水池で、砂利や砂がスポンジのように地下水を貯留している。湧き水や井戸水になって初めて、資源としての水と認識されることになる。アメリカの水需要の半分はこの目に見えない、縮小を続ける水源によって満たされているという。しかもここ数年の干ばつを受けて、湖や川、貯水池などに代わる資源として依存度はさらに上昇している。地表の水が流れ込む浅い帯水層はさておき、深い帯水層には数千年前あるいは数百万年前、地質の変化によって閉じ込められた古代の水が蓄えられている。一度汲み上げてしまえば、再び満たされることはまずない。“化石”のような貴重な水が枯渇してから、自身の生活や作物を育てる場を再考してもすでに手遅れなのは明らかだ。

 カリフォルニア州では深刻な干ばつが4年近く続き、積雪や川、湖が枯渇している。そして、水不足を補うため、地下水の利用が急増している。アメリカ、スタンフォード大学の最新の報告によれば、カリフォルニア州では現在、水需要の60%近くを地下水で賄っているという。降雨量や降雪量が正常な時期に比べて40%という急増振りだ。

 地下水への依存に伴って水の価格も上昇。カリフォルニア州のセントラル・バレーでは、帯水層の水を目当てに新たなゴールドラッシュが起きている。井戸掘りの業者たちは働き詰めで、水不足の農場や家庭は1年以上待たなければならない。

 例年であれば、未舗装の地面に雨や川の水が浸透し、帯水層は自然に満たされる。しかし、干ばつに見舞われると、さらに速いペースで地下水がくみ上げられ、地下水面が下がる。セントラル・バレーの井戸はかつて150メートルも掘れば水に当たったが、今は300メートルでも足りない状況だ。そして、帯水層の枯渇に伴い、地盤沈下も始まっている。

 地下水源の縮小はセントラル・バレーだけの現象ではない。コロラド川流域やグレートプレーンズ南部の帯水層も深刻な状況に陥っている。複数の研究によれば、地下水の枯渇の約半分は灌漑が原因だという。農業は最も多くの水を使う産業で、全世界で利用できる淡水の60%以上が灌漑によって消費されている。

 7つの州に暮らす4000万人に水を供給しているコロラド川流域は、水資源が劇的に失われており、特に地下水の枯渇が目立つ。人工衛星で調査したカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)とNASAによると、2004年から2013年にかけて65立方キロが消失したという。コロラド川の流量の2年分を保持できるアメリカ最大の人造ダム湖、ミード湖の水の2倍に相当する量だ。その失われた水の最大75%を地下水が占めている。

 干ばつによって地下水が枯渇すれば、飲用水や農業用水を制限せざるを得ないため、いずれ社会不安を引き起こす恐れがある。数十年前、砂漠で小麦を栽培するために深い帯水層の水をくみ上げ始めたサウジアラビアでは、計画を白紙に戻したという。この不毛の地における地下水源の重要性に気付いた政府が、食料としての小麦は輸入に頼る決断を下したのだ。

 干ばつによって地表の水が枯渇している現在、地下水源の管理と保守が緊急の課題となっている。地下水は井戸があれば誰でも利用できる貴重な共有資源だ。渇水が日常化する将来を回避するためには、この縮みゆく防衛線を死守しなければならない。協調と連携の下に、今こそ生存本能を発揮するときだ。



「干ばつが招く地下水の枯渇」(拡大写真付きの記事)
2014年08月21日
 
 
Fred Pearce in India    for National Geographic News    December 25, 2012

 インドでは農家による地下水のくみ上げ、販売が全国的に拡大し、地下水の枯渇が深刻化している。しかし、これはインドだけの問題ではない。
 
 
 
 
May 22, 2014

 南カリフォルニアで、例年よりも早く5月上旬に、森林火災のシーズンが到来した。いつもならこの時期、カリフォルニアの空はひんやりとした灰色の雲で覆われているのだが、今年の春、空には本物の灰が舞い飛んでいる。カリフォルニア州の消防機関カル・ファイア(Cal Fire)の広報官が「Los Angeles Times」紙に語ったところによると、消防隊の火災出動件数は今年既に、いつもの2倍である1400件近くにのぼっている。5月16日の「New York Times」紙は、10年前に比べて今では西部の森林火災のシーズンが75日長くなっていると報じた。
 
 
 
April 9, 2012

 インド西部、グジャラート州の北部は半乾燥地帯で、干ばつに陥りやすい。年間降水量の大半は6~9月の雨期に集中している。しかし、ここ30年、多くの農場や牧場では乾期でさえも青々とした植物が茂っている。
食料生産で危機に陥る地下水資源


◆エネルギーを求める農家

 グジャラート州北部は地下水の枯渇と持続不可能な農業の極端な例として、学術研究の対象にもなっている。しかし、食料生産に必要な水をくみ上げるためエネルギー需要が上昇している地域はインドや中国、中東に多数存在する。専門家は、基本的にそれらの地域の農業は危機的な状況だと警告する。エネルギーと地下水が持続不可能な関係にあるためだ。

 イギリスのイースト・アングリア大学が3月に発表した研究によれば、中国では1950年以降、作物栽培を目的とした地下水の利用が10倍以上に増えているという。揚水システムの深さは平均70メートルに達する地域もあり、年間3000万トン以上の二酸化炭素(CO2)を排出すると推測している。ニュージーランド全域の年間CO2排出量とほぼ同等だ。安価なエネルギーとポンプ技術の普及によって、地下水のくみ上げが急激に拡大した結果と研究チームは考えている。

 影響は帯水層の枯渇と農業の破綻だけに留まらない。土壌の塩分濃度上昇とCO2排出の増加、さらに気候変動がその状況に追い打ちをかける。多くの場合、最も大きな打撃を受けるのは貧しい農家である。井戸を掘り、水をくみ上げる技術に大金を投じる余裕がないからだ。

 アメリカ、コロンビア大学地球研究所のコロンビア水センター(Columbia Water Center)で教授を務めるビジャイ・モディ(Vijay Modi)氏は次のように話す。「州の農民が自分で自分の首を絞めている。わかっていながら見て見ぬふりをしているのではないか。農家、電力、環境のすべてにプラスとなる方法を考えなければならない」。

 さまざまな課題はあるが、モディ氏は解決可能だと信じているという。

 グジャラート州などが直面しているのは、「水資源とエネルギーの連関(Water-energy nexus)」の問題だ。双方の相互依存関係を指す用語である。

 国際的な独立研究機関「ストックホルム環境研究所(SEI)」の上級研究員ホルガー・ホフ(Holger Hoff)氏は、2つの制約の解決を目指すべきだと述べる。つまり、資源利用の最適化と、システムの非効率性の排除だ。

 知識は豊富に存在するが、「実行に移すのは非常に難しい」とホフ氏は語る。エネルギーと水の両分野には長い歴史があり、縦割りの関係省庁が独自の手法にこだわるためだ。

 一方、世界の人口は急増し、資源の需要が伸び続けている。SEIの資料と国連食糧農業機関(FAO)のデータによれば、農業生産は2050年までに約70%、一次エネルギーは2035年までに50%増やす必要がある。増加した人口を賄えるだけの食料とエネルギーを生産しながら、水資源を守る方法の開発が期待されている。

Photograph by Anupam Nath, Associated Press
 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2268

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>