高速輸送を目的としているため、直線的なルートで、最高設計速度505km/hの高速走行が可能な超電導磁気浮上式リニアモーターカー「超電導リニア」により建設される。首都圏 - 中京圏間の2027年の先行開業を目指しており、東京 - 名古屋間を最速で40分で結ぶ予定。東京都 - 大阪市の全線開業は2045年の予定で、東京 - 大阪間を最速67分で結ぶと試算されている。
誘致側・マスコミ報道などでは「リニア中央新幹線」や「中央リニア新幹線」、さらに「リニア中央エクスプレス」、「中央リニアエクスプレス」と呼ばれることもあるが、国による整備計画や建設・営業主体のJR東海は「中央新幹線」と称している。また、単に「中央リニア」「リニア」と略されることもある。
路線総延長 | 東京 - 大阪: 438 km* 東京 - 名古屋: 286 km |
電圧 | 33,000** V(交流) |
最大勾配 | 40**パーミル |
最小半径 | 8,000**m |
最高速度 | 505 km/h |
* 交通政策審議会答申[1]による「南アルプスルート」の数値。 ** JR東海の計画段階環境配慮書による、東京 - 名古屋間の数値。 |
概要
東京都 - 大阪市の間をほぼ直線で結んだ建設ルートが予定され、整備計画によると経由地は甲府市附近、赤石山脈中南部、名古屋市附近、奈良市附近とされており、東海道新幹線のバイパス路線としての性格を強く持つ。
また、本路線の基本計画が決定されるのとほぼ同時期に国鉄では東京 - 大阪間を1時間で結ぶリニアモーターカー(後の超電導リニア)の開発に着手している。当初、リニアモーターカーによる超高速新幹線として第二東海道新幹線が構想されていたが、中央新幹線の計画と統合され、このため中央新幹線はリニア方式で建設され、リニアモーターカーは中央新幹線で実用化されるものとしてセットで考えられてきた。リニア方式で全線開業すれば東京都と大阪市が最短1時間7分で結ばれ、東海道新幹線と比較して所要時間を大幅に短縮できると見込まれている。2014年 - 2015年に着工し、2027年にリニア方式で東京都 - 名古屋市の間で先行して営業運転を開始する構想がJR東海から発表されている。
日本経済がオイルショック後に低成長に転じたことなどから新幹線の建設は全体的に停滞したが、バブル期には東海道新幹線の輸送量が急伸し、近い将来に輸送力が逼迫すると考えられたことから中央新幹線が注目され、リニア方式での建設を前提として、JR東海による建設促進運動や沿線自治体による誘致運動が展開された。また、沿線各駅は東京や大阪へ1時間以内で到達できることから、首都機能移転議論のきっかけの一つにもなった。
また、東海道・山陽新幹線が兵庫県南部地震の被害で長期間不通になった経験から、東海地震の予想被災地域を通過する東海道新幹線の代替路線が必要であること、東海道新幹線自体の老朽化により長期運休を伴う改築工事の必要が生じる可能性があることも建設の理由として挙げられた。
路線データ(予定)
以下は、東京都 - 名古屋市間の概要である。
- 路線距離(実キロ):約286km
- 駅数:6(起終点駅含む)
- 複線区間:全線複線
- 電化区間:全線電化(交流33,000V)
- 走行方式:超電導磁気浮上方式
- 最高設計速度:505km/h
- 最小曲線半径:8,000m
- 最急勾配:40‰
- 車両基地:相模原市および中津川市の2か所に設置(後者には工場を含む)
設置予定駅
- 駅名はすべて仮称である。
- 接続路線はその駅で接続している路線(正式路線名)のみ記載する。
東京都ターミナル駅 (品川駅付近) | - | 0 | 東海道新幹線・東海道本線・山手線 京急本線 | 東京都 | 港区 | 地図 |
神奈川県駅 (橋本駅付近) | 横浜線・相模線 京王相模原線 | 神奈川県 | 相模原市 緑区 | 地図 | ||
山梨県駅 | 山梨県 | 甲府市 | 地図 | |||
長野県駅 | 長野県 | 飯田市 | 地図 | |||
岐阜県駅 (美乃坂本駅付近) | 中央本線 | 岐阜県 | 中津川市 | 地図 | ||
名古屋市ターミナル駅 (JRゲートタワー地下) | 286 | 東海道新幹線・東海道本線・中央本線・関西本線 あおなみ線・地下鉄東山線・地下鉄桜通線 名鉄名古屋本線(名鉄名古屋駅)、近鉄名古屋線(近鉄名古屋駅) | 愛知県 | 名古屋市 中村区 | 地図 |
検討されていたルート
首都圏から相模原市付近、山梨リニア実験線を経由し、名古屋に至るまでのルートとして下記の3案が検討されていた。
- Aルート:木曽谷ルート(山梨県甲府市付近から木曽谷を経て愛知県名古屋市へ至る大回りルート)
- Bルート:伊那谷ルート(山梨県甲府市付近から伊那谷を経て愛知県名古屋市へ至る迂回ルート)
- Cルート:南アルプスルート(山梨県甲府市付近から赤石山脈(南アルプス)を経て名古屋市付近へ至る直線ルート)
決定されたルート
2011年6月7日、JR東海は東京・名古屋間のルートおよび駅位置のその時点での計画を発表した。調査の結果、東京都は品川駅、神奈川県は相模原市緑区、山梨県は峡中地域、岐阜県は中津川市西部、愛知県は名古屋駅に駅が設置される予定だと発表された。別途選定するとされていた長野県は、2011年8月5日、高森町・飯田市北部に駅を設置する予定であることが発表された。
2013年9月にJR東海が公表した「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価準備書」によると、東京都港区と名古屋市にターミナル駅を置き、神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市に中間駅を置くという計画になっている。
名古屋以西のルート
名古屋以西のルートについては、基本計画(昭和48年11月15日運輸省告示第466号)の主要な経過地で「奈良市附近」とあるのみで、具体的なルートは記されていない。経由地付近の自治体では中間駅の検討、誘致運動が行われている(後述)。
天候・地形問題
新幹線は、東海道新幹線の関ヶ原付近で雪の影響を強く受けた経験から、後に積雪地帯に建設された区間では排雪や消雪に対応した軌道設備、車両構造を開発して解決した。中央新幹線は山間部に建設されるため、リニア方式での積雪対策技術が開発されている。国鉄時代には、北海道千歳地区にリニア軌道を模した高架構造物を設置して、軌道の隙間から雪が落ちる構造が試験された。また、山梨実験線では積雪時の走行や除雪、設備の耐久性なども研究対象になっており、中央新幹線に向けて技術実証を続けている。
また、赤石山脈など多くの山を通過するため地形問題のクリアも課題となっている。赤石山脈付近のルートの案は、長野県の木曽谷を南下する「木曽谷ルート」、同県の伊那谷を通る「伊那谷ルート」、赤石山脈を貫通する「南アルプスルート」の3つがあり(検討されていたルートを参照)、2008年時点には伊那谷ルートと南アルプスルートのいずれかにほぼ絞り込まれている。
長野県や諏訪地域、上伊那地域の自治体などは伊那谷ルートを支持しているが、JR東海は最短距離で建設できる南アルプスルートを考えており、糸魚川静岡構造線の大断層帯を長大トンネルで貫通することになるため、地質調査を行い、2008年10月に適切な施工法を選択すれば建設可能との調査結果をまとめた。
なお、2008年10月3日、同月4日付の中日新聞によるとCルート(南アルプスルート)が有力となっており、同月7日の朝日新聞によれば、JR東海は南アルプスルートで建設する方針を固め、2008年12月26日にはJR東海の葛西敬之会長が都内で会見を行って「実現可能なのは直線ルートだけ」と強調した。