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国土強靱化の推進について

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国土強靱化の推進について

1 背景及び経緯

 2011年3月11日に発生した東日本大震災の教訓の一つとして、「防護」という発想によるインフラ整備中心の対策だけでは生命や財産、経済社会活動を守ることに限界があることが明らかとなった。
 
 このような大規模自然災害等から人命、社会経済の致命傷を回避するための強さと被害から迅速に回復するしなやかさを備えた国土、経済社会システムを構築し、想定外の災害等から守る考え方を国土強 靱 ( じん ) 化(ナショナル・レジリエンス)と呼んでいる。
 
 諸外国では、災害をもたらす外力からの「防護」にとどまらず、国や地域の経済社会に関わる分野を幅広く対象にして、経済社会のシステム全体の「抵抗力」、「回復力」を確保することを目的とした計画及び体制の整備が既に進められ、国家のリスクマネジメントの基本となっている。
 英国では大洪水、米国ではハリケーン・カトリーナを契機として、大規模自然災害に対する強靱化の取組が進められているほか、2013年1月に開催されたダボス会議(世界経済フォーラム)においても、強靱化が国家の重要な課題として取り上げられ、国際社会における関心事項の一つとなっている。
 
 政府においては、2013年3月から学識者や民間有識者から構成される「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」及び国土強靱化担当大臣が議長を務める「国土強靱化の推進に関する関係府省庁連絡会議」を開催し、国土強靱化の具体的な取組について検討を進めてきたところである。
 
 また、議員立法により「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」(以下「基本法」という。)が同年12月11日に公布、施行されたところである。
 図表1-1-8 脆弱性評価の結果と国土強靱化基本計画及びアクションプランとの関係
 
2 基本法の概要
基本法においては、
<1>迅速な避難及び人命の救助に資する体制の確保、女性、高齢者、子ども、障害者等の視点を重視した被災者への支援体制の整備、防災又は減災に関する専門的な知識又は技術を有する人材の育成及び確保、防災教育の推進、災害から得られた教訓及び知識を伝承する活動の推進、地域における防災対策の推進体制の強化等により、大規模自然災害等に際して、人命の保護が最大限に図られること、
 
 
<2>国家及び社会の重要な機能の代替性の確保、生活必需物資の安定供給の確保等により、大規模自然災害等が発生した場合においても当該機能が致命的な障害を受けず、維持され、我が国の政治、経済及び社会の活動が持続可能なものとなるようにすること、
 
 
<3>地震による建築物の倒壊等の被害に対する対策の推進、公共施設の老朽化への対応、大規模な地震災害、水害等の大規模自然災害等を防止し、又は軽減する効果が高く、何人も将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域づくりの推進、大規模自然災害等が発生した場合における社会秩序の維持等により、大規模自然災害等に起因する国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化に資すること、
 
 
<4>地域間の連携の強化、国土の利用の在り方の見直し等により、大規模自然災害等が発生した場合における当該大規模自然災害等からの迅速な復旧復興に資すること
 
 
 等の基本方針を示しているほか、施策の策定及び実施の方針として、既存社会資本の有効活用等による費用の縮減、施設等の効率的かつ効果的な維持管理、民間資金の積極的活用などが規定されている。
 
 
 また、基本法により、国土強靱化を推進するための組織として内閣総理大臣を本部長とする「国土強靱化推進本部」(以下「本部」という。)が設置され、図表1-1-5のとおり国土強靱化に係る国の他の計画等の指針となるべきものとして、「国土強靱化基本計画」(以下「基本計画」という。)を定めることが規定されている。基本計画については、指針を定めたうえで行われる 脆 ( ぜい ) 弱性評価の結果に基づいて本部においてその案を作成し、閣議により決定されることも規定されている。
 
 あわせて、国土強靱化に係る都道府県・市町村の他の計画等の指針となるべきものとして、都道府県、市町村は国土強靱化地域計画を定めることができるとされている。
 
図表1-1-5 分野別計画等の指針となる国土強靱化基本計画
 
 
3 国土強靱化の基本的な考え方
 
 国土強靱化に向けた取組を進めることは、人命を守るだけではなく、いかなる事態が発生しても機能不全に陥らない経済社会のシステムを確保すること等を通じて、我が国の競争力を向上させ、国際的な信頼の獲得をもたらすものである。このため、政府として、国土強靱化に向けた取組を府省庁横断的に進めるだけでなく地方公共団体や民間とも連携しながら総合的に推進する。東日本大震災の教訓を踏まえると、千年に一度というような低頻度で起こる大規模な災害への備えについて、狭い意味での「防災」の範囲を超えて、国土政策・産業政策も含めた総合的な対応を、いわば「国家百年の大計」の国づくりとして、千年の時をも見据えながら行っていくことが必要である。
 
このため、いかなる大規模災害等が発生しようとも、
 
1)人命の保護が最大限に図られること
 
2)国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること
 
3)国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化
 
4)迅速な復旧復興
 を基本目標として、「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた国土の強靱化を推進する。
 
 国土強靱化とは、いわば国のリスクマネジメントであり、
 
<1>強靱化が目指すべき目標を明確にした上で、主たるリスクを特定・分析
 
<2>リスクシナリオと影響を分析・評価した上で、目標に照らして脆弱性を特定
 
<3>脆弱性を分析・評価し、脆弱性を克服するための課題とリスクに対する対応方策を検討
 
<4>課題解決のために必要な政策の見直しを行うとともに、対応方策について、重点化、優先順位を付けて計画的に実施
 
<5>その結果を適正に評価し、全体の取組を見直し・改善
というPDCAサイクルを繰り返して見直すことにより、国全体の強靱化に取り組む。
 図表1-1-7 起きてはならない最悪の事態

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