自然災害
自然災害(しぜんさいがい、英: natural disaster)とは、危機的な自然現象(natural hazard, 例えば気象、火山噴火、地震、地すべり)によって、人命や人間の社会的活動に被害が生じる現象をいう。
日本の法令上では「自然災害」は「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」と定義されている(被災者生活再建支援法2条1号)。
単なる自然現象が、人的被害を伴う「自然災害」に発展したり、災害が拡大したりするには、現地の社会条件が大きな影響を及ぼす。
ディザスターとハザード
自然災害がなぜ起こるかについては、次の公式に帰結している。
- Disasters occur when hazards meet vulnerability.
- 「災害は、危機が脆弱性と出会うことで起こる」
社会のもつ脆弱性(災害に対する弱さ)は、防災計画がなかったり適切な危機管理がなされなかったりすることでさらに大きくなり、人的被害、経済的被害、環境に対する被害を大きくする。最終的な被害の大きさは、被害者を支援し災害拡大を抑えるための人員の数や、災害からの回復力の大きさに依存する。
「disaster」(「災害」)と 「hazard」(「危機」、「現象」)は意味が異なる。ユネスコの地球科学プログラムでは、「ナチュラル・ハザード」(Natural Hazard、自然現象)と「ナチュラル・ディザスター」(Natural Disaster, 自然災害)を次のように定義している。
- Natural hazards are naturally-occurring physical phenomena caused either by rapid or slow onset events having atmospheric, geologic and hydrologic origins on solar, global, regional, national and local scales. They include earthquakes, volcanic eruptions, landslides, tsunamis, floods and drought.
- 「ナチュラル・ハザード」とは、大気・地質学・水文学的原因で、太陽系規模・地球規模・地域規模・国家規模あるいは地方規模の範囲を、急速または緩慢に襲う事象により引き起こされる、自然に発生する物理的現象である。地震、火山噴火、地すべり、津波、洪水、干ばつが含まれる。
- Natural disasters are the consequences or effects of natural hazards. They represent a serious breakdown in sustainability and disruption of economic and social progress.
- 「ナチュラル・ディザスター」(自然災害)とは、ナチュラル・ハザードの結果または影響である。社会の持続可能性の崩壊と、経済的・社会的発展の混乱を意味する。
もし天変地異などの「自然現象」(ナチュラル・ハザード)が起こったとしても、その場所に脆弱性がなければ(例えば異変の起こった一帯にだれも住んでいない場合)、「自然災害」(ナチュラル・ディザスター)が起こることはない。
自然災害は、人為的な原因による災害(「人災」)に対して、天災とも呼ばれる。しかし実際に「天災」と呼ばれているものは、社会の脆弱性など人為的な原因により人的被害が拡大されている側面が大きいため、「天災」という呼び方は適切なものではない。地震は自然現象だが、脆い建物が崩れたり救援の手が届かなかったりすることによって地震災害は拡大する。自然現象である干ばつは、社会の不平等や政府の失策により、都市や軍隊には食物が確保される一方で農村の貧しい人々に食物が行き届かなくなることで、飢饉という災害へと拡大する。
自然現象
「ナチュラル・ハザード」(自然現象による危機)は、人間社会や環境に対して否定的な影響をもつ現象が起こる脅威を指す。ナチュラル・ハザードの多くは連続的に起こる。たとえば地震は津波を起こし、干ばつは飢餓や疾病を起こす。
また「ナチュラル・ハザード」という言葉は将来起きる可能性のある脅威(たとえば発生が予想される地震や、大雨が降った場合の洪水)を指す場合に使われるが、「ナチュラル・ディザスター」(自然災害)は過去に起こった、あるいはいま起こっている社会的出来事に関連付けて使われる。